『スター・ウォーズ』『ジュラシック・パーク』を支えたTippett Studio、バークレー拠点を閉鎖

2026年9月2日 00:24

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記事提供元:Tech Times

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『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』などの視覚効果で知られるTippett Studioが、米カリフォルニア州バークレーの長年の制作施設を閉鎖した。2026年8月28日から30日まで、映画で使われた模型や制作機材などを販売する清算セールが行われ、物理的な模型とデジタル技術を結びつけてきた工房の歴史に一区切りがついた。

閉鎖されたのはバークレーの施設であり、Tippett Studioそのものが事業を終了したわけではない。同社によると、トロント拠点では長編映画の制作が進んでおり、映画やテレビ、エンターテインメント分野のVFX・アニメーション業務を継続している。

■バークレーの工房で制作物と機材を販売

清算セールは西バークレーのグレイソン通り914番地にある約6200平方フィートの施設で開催された。会場には模型、プロトタイプ、撮影機材、ストップモーション用機材、工作機械、設計資料、ポスターなど、スタジオが長年の制作活動で蓄積してきた品々が並んだ。

販売品には、映画『スター・ウォーズ』のデジャリックと呼ばれるホログラム式チェスの場面に関連する模型、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のAT-ATを基にしたアーティストプルーフ、フィル・ティペットが長年制作を続けたストップモーション映画『マッドゴッド』の模型や資料などが含まれていた。

ティペットは、受賞した2体のオスカー像については手元に残した。『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』と『ジュラシック・パーク』で得たもので、自身の歩みの中でも特に重要な節目だったと語っている。

■ゴー・モーションが加えた動きの質感

フィル・ティペットは1970年代半ば、アニメーターのジョン・バーグとともに、後のインダストリアル・ライト&マジック(ILM)で『スター・ウォーズ』のデジャリック場面を制作した。『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』ではアニメーション部門を率い、AT-ATやトーントーンの動きを手がけた。

当時のストップモーションでは、模型の姿勢を少しずつ変え、静止させた状態で1コマずつ撮影する。動く物体を通常のカメラで撮影した場合に生じるモーションブラーが写りにくいため、速い動きでは輪郭が各フレームにくっきりと残り、独特のコマ送り感が現れることがある。

ティペットとILMが発展させたゴー・モーションは、露光中にも模型を制御して動かし、フィルム上にモーションブラーを取り込む手法だった。『帝国の逆襲』ではAT-ATやトーントーンの一部の場面に使われ、模型に速度感や重量感を与えた。より複雑な装置を導入した『ドラゴンスレイヤー』では、コンピューター制御された機構でドラゴンの模型を動かし、ティペットは同作でアカデミー視覚効果賞にノミネートされた。

その後、ティペットは『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』でクリーチャー制作を率い、特別業績賞を受賞した。1984年には自宅ガレージを拠点にTippett Studioを設立し、ゴー・モーションによる恐竜を描いた短編『Prehistoric Beast』を制作した。

スタジオは『ロボコップ』のED-209をはじめ、ストップモーション、模型、クリーチャー造形、デジタルVFXへと業務を広げていった。映画制作がデジタルへ移行するなかでも、物体の形や関節、重さを意識して動きを組み立てるアニメーターの知識は、同社の中心的な強みであり続けた。

■DIDが模型の操作をCGIへつないだ

その知識をデジタル制作に結びつけた代表的な装置が、『ジュラシック・パーク』のために開発されたDinosaur Input Device(DID)である。同作では当初、ゴー・モーションによる恐竜のアニメーションが検討されていたが、ILMによるCGIテストを経て、全身が映る恐竜の多くをコンピューターで描く方針へ移行した。

CGIへ切り替わっても、恐竜の姿勢や歩き方を設計するアニメーターの役割は残った。捕食動物が足を踏み出す際の重心移動、頭部と胴体の連動、尾を含めた全身のバランスなどは、単に関節を動かせば自然に見えるものではない。模型を使って動きを積み重ねてきたティペットのチームは、この部分で制作に加わった。

DIDは、恐竜を模した関節式の骨格模型にセンサーを組み込んだ入力装置である。アニメーターが模型の姿勢をフレームごとに調整すると、各関節の角度がコンピューターに取り込まれ、CGIモデルを動かすためのデータとして利用された。

この仕組みにより、アニメーターはストップモーションに近い感覚で物理的な模型を操作しながら、デジタルキャラクターの動きを設計できた。人の身体動作を記録するモーションキャプチャーとは異なり、対象となるクリーチャーの骨格に対応した模型そのものを入力インターフェースにする点が特徴だった。

DIDは、アナログからデジタルへの単純な置き換えではなく、模型を手で動かしてきたアニメーターの技能を新しい制作環境へ移す橋渡しとなった。クレイグ・ヘイズ、ブライアン・ネップ、リック・セイヤー、トーマス・ウィリアムズは、この装置の開発によって米映画芸術科学アカデミーの技術貢献賞を受けた。ティペット自身も『ジュラシック・パーク』で2度目のオスカーを受賞した。

■ゴー・モーションからデジタル制作へ

ゴー・モーションには、模型を露光中に正確に動かすための制御機構や堅牢な骨格、カメラとの同期が必要だった。模型の材質や動かす部位によって適用しにくい場合もあり、通常のストップモーションより撮影装置と調整作業が複雑になる。

一方、モーションブラーを物理的な撮影段階で作り込めるため、実写映像と組み合わせるクリーチャーに独特の存在感を与えられた。こうした試行錯誤で培われた、動きと質量感の関係を考える発想は、DIDを介してデジタルキャラクターのアニメーションにも引き継がれた。

1993年の『ジュラシック・パーク』は、CGIによる恐竜と実物大のアニマトロニクスを組み合わせた作品となった。Tippett Studioもデジタル制作へ軸足を移したが、物理的な骨格を意識し、手作業で姿勢やタイミングを作り込む考え方は、その後のクリーチャーアニメーションを支える要素となった。

■買収と連邦破産法第11条の手続き

2024年3月、インドのVFX企業PhantomFXはTippett Studioの株式80%を取得すると発表した。取引額は約380万ドル(約6億800万円、1ドル=160円換算)と報じられ、買収後もTippett Studioの名称を維持する方針が示された。

一方、Tippett Studio, Inc.は同年5月1日、カリフォルニア州北部地区の連邦破産裁判所に連邦破産法第11条の適用を申請した。申請時に示された資産と負債は、いずれも100万ドル以上1000万ドル以下だった。裁判所は2025年4月1日に再建計画を承認している。

バークレー施設の清算セールは、この破産手続きに関連して実施された。閉鎖までの経緯についてティペットは、映画会社の統合や、制作を誘致する各地域の税制優遇策などによって、カリフォルニアを拠点とする独立系スタジオの事業環境が厳しくなったと説明している。

もっとも、買収、破産申請、施設閉鎖の間にある個別の因果関係は公表資料だけでは明らかではない。確認できるのは、PhantomFXによる株式取得の発表後に連邦破産法第11条の手続きが始まり、その後の再建計画に沿ってバークレー施設の資産が売却されたという経過である。

■制作流出に直面したカリフォルニア

カリフォルニア州の映画・テレビ制作税額控除は、従来、年間3億3000万ドルが上限だった。州外や国外の制作拠点との競争が激しくなるなか、州政府は2025年に年間枠を7億5000万ドルへ拡大した。新制度では対象となる作品の範囲も広げられたが、出演者や監督、プロデューサーなどの主要人件費や、州内での撮影を伴わない独立したVFX・ポストプロダクション業務には対象外となる部分が残っている。

ロサンゼルス地域のロケ撮影日数を集計するFilmLAによると、2025年の撮影日数は1万9694日で、2024年の2万3480日から16.1%減少した。制度拡充後に採択された作品が実際の撮影を始めるまでには時間差があるため、その効果は今後の制作動向を見ながら判断する必要がある。

こうした統計はカリフォルニアの映像制作全体の低迷を示すものであり、Tippett Studioの経営状況を単独で説明するものではない。それでも、撮影やVFXの仕事が複数の国・地域へ分散する変化は、大規模な常設施設を維持する独立系スタジオにとって重要な事業環境の変化となっている。

■バークレー閉鎖後も制作活動は継続

Tippett Studioはバークレー施設の閉鎖後、トロント拠点が長編映画を制作中であり、VFXとアニメーションの業務を継続していると説明した。ストップモーションも引き続き同社の制作能力の一部としながら、専用ステージやモーションコントロール撮影などが必要な場合は、外部施設を活用する方針である。

このため、今回の動きはTippett Studioという会社やブランドの消滅ではなく、長年維持してきたバークレーの常設工房から、案件に応じて制作環境を組み合わせる体制への移行と位置づけられる。

物理的な制作拠点の閉鎖によって失われるのは、設備や保管場所だけではない。模型の抵抗を手で感じながら姿勢を調整し、わずかな動きの違いから重さや速度を表現する技能は、設計図やソフトウェアだけでは受け渡しにくい。バークレーの工房は、そうした判断を作品制作の中で共有し、次の世代へ伝える場所でもあった。

ティペットは閉鎖を前に、Berkeleysideには映画業界の仕事から退いたとの趣旨を語る一方、CBS News Bay Areaには「私は剣を手にしたまま死ぬ」と述べ、創作を続ける意思を示した。バークレーの工房は役割を終えたが、ゴー・モーションからDID、さらにデジタルVFXへと受け継がれた発想と技能は、映画のクリーチャー表現に残り続けている。

元記事: Tippett Studio Shuts Down, Ending Craft That Taught CGI How Creatures Move

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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