関連記事
Google CloudとベライゾンがAI提携拡大、問い合わせ通話・チャットの大半をGeminiのAI基盤で処理

Photo by Rubaitul Azad on Unsplash[写真拡大]
米通信大手ベライゾン(Verizon)とGoogle Cloudは2026年8月24日、人工知能(AI)の全社展開に向けた戦略的パートナーシップを発表した。顧客対応、ネットワーク運用、マーケティング、セキュリティ、従業員の業務支援などに、Google Cloudのデータ基盤とGemini Enterpriseを活用する。
顧客対応では、Google Cloudのコンタクトセンター技術を発展させた「Gemini Enterprise for Customer Experience」を導入している。両社によると、この基盤はベライゾンに毎月寄せられる消費者向けの通話とチャットの大半を処理し、顧客満足度とデジタル接点における自動解決率も改善しているという。
■通話とチャットの大半をAI基盤で処理
Gemini Enterprise for Customer Experienceは、音声やチャットによる問い合わせに対応する企業向けのAI基盤だ。会話内容を踏まえて問い合わせの意図を把握し、必要な情報や業務システムと連携しながら回答や手続きを進める。処理が難しい案件では人間の担当者による対応へ移行できる。
ベライゾンは以前からGoogle Cloudのコンタクトセンター技術を利用しており、今回の取り組みは、その関係を生成AIとAIエージェントを中心とした仕組みへ発展させたものとなる。
両社は問い合わせ件数や自動解決率、顧客満足度の具体的な数値を公表していない。また、「通話とチャットの大半を処理する」という説明が、AIだけで完結した問い合わせの割合を示すのか、担当者支援を含めてAI基盤を経由した件数を示すのかは明らかにしていない。
人間の顧客対応担当者は、AI基盤によって定型的な問い合わせへの対応負担を減らし、個別の判断や丁寧な説明が必要な案件に集中できるとしている。
■ネットワーク運用やマーケティングにも展開
ベライゾンは顧客対応以外にも、Google CloudのAIとデータ基盤を展開する。ネットワーク運用では、異常を予測し、顧客への影響が生じる前に問題の特定や対応を進めるネットワーク・インテリジェンス基盤を構築している。
マーケティングでは、エージェントを利用してコンテンツやキャンペーンを編成し、顧客との接点を調整する。従業員向けには、社内業務に利用できるAIエージェントを展開する計画だ。セキュリティ分野でも、脅威の検知やリスク管理にGoogle Cloudの技術を組み込む。
これらの機能がすべて完全に自律運用されているわけではない。顧客対応はすでに大規模に稼働している一方、ネットワーク運用などには構築中または展開を拡大している取り組みも含まれる。
■AIエージェントを支える4つの機能
Google Cloudは2026年4月の年次イベント「Google Cloud Next '26」で、「Gemini Enterprise Agent Platform」を発表した。従来のVertex AIを発展させ、AIエージェントの構築から展開、統制、改善までを扱う基盤である。
同プラットフォームは「Build」「Scale」「Govern」「Optimize」の4領域で構成される。Buildはエージェントの設計と開発、Scaleは本番環境への展開と実行、Governはアクセス権限やセキュリティポリシーの管理、Optimizeは動作の評価と改善を担う。
企業はローコード環境のAgent Studioや、コードによる開発に対応したAgent Development Kitを利用できる。エージェントごとに権限を設定するAgent Identityや、エージェントと外部システムとの通信を管理するAgent Gatewayも用意されている。
Google Cloudは、自社のコンピュート基盤、データ管理、AIモデル、エージェント開発・運用環境、セキュリティ機能を組み合わせて提供する構成を「フルスタックAI」と位置づけている。個別製品を組み合わせる方式に比べ、システム間の連携や権限管理を一つの基盤で設計しやすいことが狙いだ。
■複数年のデータ統合が導入の前提に
ベライゾンの取り組みを支えているのが、複数年にわたって進めてきたレガシーデータレイクの統合だ。同社は分散していたデータを、Google Cloudが「Agentic Data Cloud」と呼ぶデータ基盤へ集約してきた。
企業の顧客情報、課金データ、ネットワーク情報、社内文書などは、一般に異なるシステムや形式で管理されている。AIエージェントがこれらを業務で利用するには、アクセス権限やデータの意味を管理しながら、必要な情報を検索できる状態にする必要がある。
Agentic Data Cloudは単一の製品名というより、BigQueryなどのデータサービスやデータベース、非構造化データ、ナレッジ管理機能を組み合わせ、AIエージェントが企業データを利用できるようにするGoogle Cloudの構想を指す。
このため、ベライゾンの導入を他社がそのまま短期間で再現できるとは限らない。AIモデルを契約するだけでなく、自社のデータを整理し、権限や品質を管理できる基盤を整える作業が導入期間を大きく左右する。
■Amdocsが通信事業者向けエージェントを提供
通信事業者向けソフトウェアを手掛けるAmdocsは2026年5月、「Amdocs Telco Agents for Customer Experience」をGemini Enterprise Agent Marketplaceで提供開始した。
この製品は、Google CloudのGemini Enterprise for Customer Experienceと、Amdocsの通信事業者向けAI技術「Cognitive Core」を組み合わせる。顧客対応、サービス要求の処理、問題解決、注文管理など、通信事業者固有の業務をAIエージェントで支援する。
Amdocsは、通信事業者の課金システムや業務支援システムと連携できる構成を用意することで、各社がすべてを一から開発せずに導入できるようにする。ただし、実際の導入期間や自動化できる範囲は、既存システムやデータの整備状況によって異なる。
■Google Cloudの成長を支える企業向けAI
Alphabetが2026年7月に発表した2026年第2四半期決算では、Google Cloudの売上高が前年同期比82%増となり、契約済みで将来売上高として認識される受注残は5,140億ドルに達した。4月に発表した第1四半期には、売上高が前年同期比63%増の200億ドルを超え、受注残は前四半期からほぼ倍増していた。
同社はAIインフラと企業向けAIソリューションへの需要がクラウド事業の成長を支えていると説明している。Gemini Enterpriseについても、企業での導入が拡大しているという。
ベライゾンは2026年7月、Googleのデータセンターを接続するダークファイバーを提供する10億ドル超の契約も明らかにした。ダークファイバーは、通信事業者が敷設した光ファイバーを顧客が自らの通信機器で運用する方式で、大容量のデータセンター間通信に利用される。
この回線契約と今回のAI提携は別個の案件だが、両社の関係が企業向けAIの利用だけでなく、AIデータセンターを支える通信インフラにも広がっていることを示す。
■一体運用とベンダーロックインの両面
単一のクラウド事業者からAIモデル、データ基盤、エージェント管理、セキュリティ機能をまとめて導入すると、システム間の連携やガバナンスを統一しやすくなる。一方で、データや業務処理が特定事業者のサービスに深く組み込まれれば、将来の移行には相応の費用と作業が必要になる。
機能ごとに異なる事業者の製品を選ぶベスト・オブ・ブリード方式は、選択肢を維持しやすい半面、データ連携、アクセス管理、監査などを複数のサービスにまたがって設計しなければならない。
ベライゾンの事例が示すのは、AIモデル単体の性能だけでなく、データの整備、既存業務との接続、人間への引き継ぎ、権限管理までを含めて設計する必要があるという点だ。大規模なAI導入の速度と効果は、契約するモデル以上に、その前段階にあるデータ基盤と運用設計に左右される。
■注目ポイントQ&A
●ベライゾンでは、顧客からの問い合わせをAIだけで完結させているのですか?
両社は、Gemini Enterprise for Customer Experienceが月間の消費者向け通話とチャットの大半を処理していると説明しています。ただし、そのすべてがAIだけで解決されているとは発表していません。必要に応じて人間の担当者が対応する仕組みも含まれます。
●Gemini Enterprise for Customer Experienceは何をする製品ですか?
音声やチャットによる問い合わせの意図を把握し、企業のデータや業務システムと連携して回答や手続きを支援する製品です。AIによるセルフサービスのほか、人間の担当者への応答候補の提示、会話の要約、問い合わせ内容の分析などにも対応します。
●他の通信事業者も同様の仕組みを導入できますか?
Google CloudとAmdocsは、通信事業者向けのAIエージェントや導入基盤を提供しています。ただし、実際の導入期間は、既存の課金・顧客管理システムとの連携や、データ基盤の整備状況によって異なります。
●Agentic Data Cloudは単一のクラウド製品ですか?
単一製品というより、データベース、分析基盤、非構造化データ、ナレッジ管理などを組み合わせ、AIエージェントが企業データを安全に利用できるようにするGoogle Cloudのデータ基盤構想です。
元記事: Verizon Confirms Gemini Handles Most Inbound Calls: Google Cloud Full-Stack AI at Carrier Scale
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
