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【決算分析】サンディスクの記録的増収、3分の2は価格上昇 AI需要でNAND市況は変わるか

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半導体メモリー大手、米サンディスクの2026年度第4四半期は、売上高が前四半期比51%増となる記録的な決算だった。ただし、増収分の約3分の2は平均販売価格の上昇によるもので、出荷量の増加による寄与は約3分の1だった。AIインフラ向け需要や長期契約がNANDフラッシュ市場の収益構造をどこまで変えるのかが、今後の焦点となる。
一方、同社株は機関投資家の保有集中をめぐる指摘を受け、8月18日に8.31%下落した。これは業績見通しの変更ではなく、急騰後のポジション調整に対する警戒を反映した動きとみられる。8月21日にソウルで開かれるOCP Korea Tech Dayでは、AI時代のストレージ技術に関する同社の発表も予定されている。
■好決算の増収分、約3分の2は価格上昇
サンディスクは2026年8月5日、7月3日までの2026年度第4四半期決算を発表した。売上高は前年同期比372%増、前四半期比51%増の89億6,500万ドル(約1兆4,254億円、1ドル=159円換算)となった。
売上総利益率はGAAP、Non-GAAPともに84.6%だった。GAAPベースの希薄化後1株利益は43.97ドル、Non-GAAPベースでは39.25ドルとなった。2026年度通期の売上高は前年比175%増の202億4,800万ドル(約3兆2,194億円)だった。
注目されるのは前四半期比の増収要因である。サンディスクによると、増収分の約3分の1が出荷量の増加、約3分の2が価格上昇によるものだった。これは「価格が出荷量の2倍の速さで上昇した」という意味ではなく、増収額を要因別に分解した結果である。
価格上昇の寄与が大きかったことは、当該四半期の需給が売り手側に有利だったことを示している。一方、NANDは設備投資や生産量の変化によって価格が大きく動いてきた市場でもある。今回の利益率が続くかどうかは、AI向け需要の拡大だけでなく、メーカー各社の供給計画や顧客構成にも左右される。
■株価下落は業績悪化ではなく保有集中への警戒
サンディスク株は8月18日に8.31%下落した。モルガン・スタンレーが、機関投資家による同社株の保有がS&P 500における構成比を約2.3ポイント上回っていると指摘したことが、売り材料として意識された。
この指摘は、NAND需要やサンディスクの利益予想を下方修正するものではない。特定の銘柄を多くの機関投資家が同時に保有している場合、利益確定、リスク縮小、指数に合わせたリバランスなどが重なることで、売りが増幅されやすいというポジショニング上の問題である。
8月19日の終値は1,568.87ドルで、6月22日に付けた52週高値2,354.39ドルを下回った。一方、52週安値は43.20ドルであり、過去1年間の上昇幅が極めて大きかったことも、値動きを不安定にする背景となっている。
アナリストの目標株価は集計元によって対象人数や平均値が異なる。8月19日時点のある集計では、24人の平均目標株価は2,126ドル、最低は1,000ドル、最高は3,600ドルだった。目標株価は将来の利益や市場環境に関する予測であり、価格上昇を保証するものではない。
■KVキャッシュが生む新たなNAND需要
サンディスクがAI分野で期待する用途の一つが、大規模言語モデルの推論で使われるKVキャッシュである。生成AIは、入力済みの文脈を効率的に参照するため、アテンション計算で生じるキーとバリューの情報を保持する。この情報を再利用すれば、後続のトークンを生成するたびに同じ計算を繰り返す負担を減らせる。
モデルやコンテキストが大きくなり、同時に処理する利用者が増えるほど、KVキャッシュに必要な容量も増える。高速性を求める部分にはDRAMやHBMが使われるが、すべてのデータを高価なメモリだけで保持するのではなく、アクセス頻度に応じて大容量のNANDへ移す階層化が検討されている。
ここには、データを入力し、必要性やアクセス頻度に応じて配置し、呼び出すという情報処理構造がある。NANDはDRAMより読み出し遅延が大きい一方、大容量を確保しやすく、推論システムのメモリ階層を広げる選択肢になる。
サンディスクは2026年のFuture of Memory and Storageで、KVキャッシュによる追加のNAND需要が2027年に75~100エクサバイトに達し、2028年にはさらに拡大する可能性があるとの見通しを示した。これは同社による市場予測であり、実際の需要はAIシステムの設計、キャッシュ管理技術、導入時期などによって変わる。
■QLC NANDは読み出し中心の大容量用途に適合
サンディスクとキオクシアが共同開発する第10世代3次元フラッシュメモリ「BiCS10 QLC」は、332層の構造と1平方ミリメートル当たり37ギガビット超の面密度を特徴とする。QLCは一つのメモリセルに4ビットを記録し、16段階の電圧状態を使い分ける方式である。
QLCには、同じセル数からより多くの容量を得られる利点がある。その反面、1セルに3ビットを記録するTLCなどと比べ、書き換え回数やデータ保持を考慮した制御がより重要になる。
KVキャッシュをNANDへ階層化する構成では、大容量のデータを保持し、必要に応じて読み出す用途が想定される。この点で、密度とビット当たりコストを重視するQLCの特性を生かしやすい。実際の適否は書き込み頻度、保持期間、遅延要件、エラー訂正、SSD全体の耐久性設計によって決まるため、AIストレージ全般を一つのNAND方式で賄うものではない。
■HBFはHBMとSSDの間を埋める新たなメモリ階層
AI推論向けのもう一つの構想が、High Bandwidth Flash(HBF)である。サンディスクとSKハイニックスは8月3日、Open Compute Projectを通じて最初のHBF技術仕様を公開した。両社が主要コントリビューターを務め、GoogleとAI半導体を手掛けるTenstorrentも標準化作業に参加した。
HBFはNANDフラッシュを積層し、高い容量と帯域幅を備えたメモリを演算装置の近くに配置する構想である。最高帯域を担うHBMと、大容量データを保持するSSDの間に新たな階層を設け、AI推論で必要となるモデルデータなどをプロセッサの近くに置く発想に通じる。
公開された仕様は、xPUとHBFを結ぶホストインターフェース、電気的要件、信頼性、パッケージ、読み書きに関するソフトウェア指針などを定めている。SKハイニックスの発表では、8段または16段のNAND積層で最大512GB、帯域幅は約0.4TB/sから最大3.0TB/sまでの区分が示された。
これらは標準仕様が想定する構成と性能区分であり、量産製品の性能や採用企業を示すものではない。今回の公開によって、アクセラレータやシステムの設計者が共通の枠組みで相互接続や実装を検討できる段階に進んだ。
■OCP Korea Tech Dayは8月21日に開催
2026年のOCP Korea Tech Dayは、8月21日にソウルのCOEXで開催される。サンディスクのSSDアーキテクチャ担当ディスティングイッシュド・エンジニア、ロス・ステンフォート氏も講演者として案内されている。
イベントはサーバー、ストレージ、メモリ、ネットワーク、AIシステム、冷却・電力、データセンターなどをテーマとする技術会議である。HBFやKVキャッシュの階層化を含む技術議論は、市場の短期的な価格見通しを直接決めるものではないが、AIシステムの設計者が大容量フラッシュをどのように位置付けているかを読み解く材料になる。
標準仕様の公開から実際の量産採用までは、製品開発、相互運用性の検証、アクセラレータ側の対応、顧客による評価など複数の段階がある。今後は、HBF対応製品の開発計画やサンプル提供、システム企業の参加拡大などが注目点となる。
■長期契約は業績の見通しを高める
サンディスクは従来の市況連動型販売を補う仕組みとして、New Business Model(NBM)と呼ぶ長期契約を拡大している。2026年度第4四半期の決算発表時点では、4月に発表した5件に加えて新たに5件を締結したとしている。
同社の決算説明によると、8社の戦略顧客との契約について、下限価格を前提とする最低売上高は合計939億ドル(約14兆9,301億円)とされた。長期契約は販売量と収益の予見可能性を高める一方、実際の売上高や利益は出荷時期、製品構成、市場価格、契約条件によって変動する。
同社は2027年度第1四半期について、売上高103億~108億ドル、Non-GAAPベースの希薄化後1株利益44~46ドルを見込んでいる。この見通しには、出荷量と価格の双方による前四半期比の成長が織り込まれている。
8月13日の投資家向け説明会では、2028~2030年度の財務モデルや、AI推論向け製品戦略も示された。同社は企業向けデータセンターフラッシュの総市場が2030年までに1.2ゼタバイトへ拡大するとの予測を掲げているが、これも同社の将来見通しとして捉える必要がある。
■持続性を判断する鍵は価格と出荷量の両方
サンディスクの現在の業績には、NAND価格の上昇、データセンター向け製品構成の改善、出荷量の増加がそれぞれ寄与している。したがって、増収分の約3分の2が価格要因だったという一点だけで、今回の業績を一時的なピークとも、恒久的な構造変化とも断定できない。
今後は、平均販売価格の推移、ビット出荷量、データセンター部門の売上構成、長期契約に基づく出荷、メーカー各社の設備投資を併せて見る必要がある。AI推論が必要とするメモリ容量が拡大し続ければ、KVキャッシュの階層化やHBFはNANDの用途を広げる可能性がある。
反対に、生産能力の増加が需要の伸びを上回れば、価格上昇の寄与は小さくなる。長期契約は市況変動の影響を和らげる手段になり得るが、NAND市場全体の需給変動をなくすものではない。
サンディスク株をめぐる短期的なポジション調整と、AIインフラがNAND市場にもたらす長期的な変化は分けて考える必要がある。記録的な利益率の持続性を判断するうえでは、今後数四半期の価格と出荷量の組み合わせが最も重要な手掛かりとなる。
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではない。市場データは2026年8月19日時点。
■注目ポイントQ&A
●第4四半期の増収分の約3分の2が価格上昇によるものだったことは何を意味しますか?
前四半期から増えた売上高を要因別に見ると、約3分の2が平均販売価格の上昇、約3分の1が出荷量の増加によるものだったという意味です。NANDの需給が売り手側に有利だったことを示しますが、価格上昇率が出荷量の伸び率の2倍だったという意味ではありません。
●HBFとはどのような技術ですか?
HBFは、積層したNANDフラッシュをAIアクセラレータなどの近くに配置し、高い容量と帯域幅を提供する構想です。HBMとSSDの間を補うメモリ階層として、AI推論で扱う大容量データの移動を効率化することが目指されています。
●モルガン・スタンレーの指摘で株価が下落したのはなぜですか?
機関投資家によるサンディスク株の保有が、株価指数における同社の構成比より大きいと指摘されたためです。保有が集中した銘柄では、利益確定やリバランスが重なると売りが増幅される可能性があります。業績予想の下方修正が示されたわけではありません。
●QLC NANDの耐久性はAIストレージの課題になりますか?
QLCは大容量化とビット当たりコストの低減に適する一方、TLCなどより書き換え耐性を考慮した設計が重要です。読み出し中心のデータ保持には特性を生かしやすいものの、適否は書き込み頻度や保持期間、エラー訂正、SSD全体の耐久性設計によって決まります。
元記事: SanDisk Drops Before OCP Korea Tech Day; Two-Thirds of Record Revenue Came From Price
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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