公務わずか38日のメラニア米大統領夫人、AI悪用規制法と1720万ドル超の私的ビジネスで際立つ存在感

2026年8月18日 21:26

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メラニア・トランプ米大統領夫人が2026年に公の場で確認された日数は38日にとどまる。7月19日のFIFAワールドカップ決勝を最後に、公の日程への出席は約1カ月間途絶えている。一方でこの19カ月間、夫人はAI生成のディープフェイクを含む同意のない性的画像の公開を犯罪化する連邦法の成立を主導し、私的な商業活動では2025年に1720万ドル超の収入を報告していた。法律に規定を持たないファーストレディという役割が、いま静かに輪郭を変えつつある。

■公の場は38日 現代のファーストレディでは異例の少なさ

デイリー・ビーストが8月9日に公開した集計によると、メラニア夫人が2026年に公の場で確認されたのは38日で、平均するとおよそ6日に1回にあたる。同メディアは公式行事への出席だけでなく、大統領専用機から降りるところを撮影された場面なども広く数え入れており、集計基準はむしろ緩やかだ。写真を基準にしたニューズウィークの別集計では、同期間の登場は34件とされている。

最後に確認された公の場は7月19日、ニュージャージー州メットライフ・スタジアムで開かれたFIFAワールドカップ決勝で、ドナルド・トランプ大統領とともに観戦した。それ以降、8月中旬時点まで公の日程への出席は確認されていない。

発言の回数でも差は大きい。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の大統領関連文書データベースによれば、トランプ大統領の2期目に入ってからメラニア夫人が公の場で発言したのは29回である。ミシェル・オバマ夫人は政権発足から18カ月の同じ期間に130回、ジル・バイデン夫人は43回の演説を行っており、オバマ夫人と比べると約22%にとどまる。なおバイデン夫人はこの期間、ノーザンバージニア・コミュニティカレッジで英語教員の職も続けていた。

移動範囲も狭い。デイリー・ビーストの集計では、2026年の登場のおよそ8割がワシントンで、大半はホワイトハウス内だった。首都以外は、ニューヨーク証券取引所の開場ベルと国連での演説(いずれもニューヨーク州)、ノースカロライナ州フォートブラッグでの部隊訪問、メリーランド州の米国立衛生研究所(NIH)訪問、デラウェア州での戦死者搬送式典、フロリダ州マール・ア・ラーゴ、そしてニュージャージー州のワールドカップ決勝に限られる。少なくとも2025年7月以降、東海岸から離れた州を訪れた記録はない。

比較対象となる先例は明確だ。ジョージ・W・ブッシュ大統領図書館の資料によれば、ローラ・ブッシュ夫人は在任中に全50州と75カ国以上を訪問した。ミシェル・オバマ夫人は2014年に全米の州をすべて訪問済みだと公の場で述べ、ジル・バイデン夫人の事務所は在任4年間で40州以上を訪れたとしている。

1期目との比較でも後退している。デイリー・ビーストが1期目の最初の1年半を集計したところ、公の場での確認は140日を超えていた。2025年は1月20日の就任以降で47日。2026年のペースは2025年をやや上回るものの、年内の推移では4月の10日から、6月と7月は合わせて5日まで落ち込んでいる。

■執務拠点の解体と、5人の事務局

2025年10月、トランプ大統領はホワイトハウス東棟(イーストウィング)の解体を命じた。跡地には大規模な舞踏室(ボールルーム)が建設される。東棟は1902年に建てられ、1977年にロザリン・カーター夫人が執務室を置いて以来、ファーストレディ府(Office of the First Lady)の拠点として機能してきた建物である。メラニア夫人はこの解体について公に発言しておらず、夫人の事務所はCNNの取材に対し、計画を支持するかどうかへのコメントを控えた。

事業費の見積もりは短期間で膨らんだ。2025年7月の発表時点では約2億ドル(約318億円、1ドル=159円換算)とされ、解体が進んだ10月には大統領自身が3億ドル(約477億円)と述べた。12月には4億ドル(約636億円)に引き上げられ、2026年6月にはワシントン・ポストが、内部記録に最大6億ドル(約954億円)の見積もりがあり、その約半分が公費で賄われる可能性があると報じている。当初は全額を民間寄付で賄うと説明されていたが、その後、警備インフラの強化に公費を充てる案が議会で動いている。

制度面への影響は速かった。2026年7月時点で5人だった夫人付きのフルタイム職員は、行事を統括する社交担当部門とともに大統領公邸内へ移り、ヴァーメイル・ルーム、南メザニン、図書室、そして歴代大統領の食器を展示するチャイナルームに分散して執務している。東棟にあった大統領官邸軍事局や来訪者事務局などはアイゼンハワー行政府ビルへ移転した。新しい舞踏室の設計に夫人の事務所の恒久的な執務空間が含まれるかどうかについて、ホワイトハウスはCNNの照会に回答していない。

『First Women』の著者ケイト・アンダーセン・ブラワー氏は2025年10月、CNNにこう語っている。「解体を見ていると、ファーストレディの役割がどんどん小さくなっていくのを目の当たりにしているようだ」。同氏は「彼女は、夫と同じように、ほかのどのファーストレディとも違う存在でいるつもりだということを明確にしている。歴史的な前例も気にしていない」とも述べた。

そもそもこの役割は法律で定められていない。ファーストレディ府は大統領府(ホワイトハウス・オフィス)の一部門であり、活動日数や取り組むべき政策分野を義務付ける法令はない。全国歴訪、テーマを掲げた活動、軍の式典や国葬への参列といった歴代の慣行は、あくまで慣例である。メラニア夫人の日程はその慣例から大きく外れているが、規則違反ではない。それを後退と見るか再定義と見るかは、明文化されていない役割が公衆に何を負うと考えるかによって分かれる。

■AIディープフェイク規制法「TAKE IT DOWN Act」を主導

テクノロジー政策では、歴代のファーストレディに例のない成果を残している。中心にあるのが、ウェブサイトやネットワーク上のディープフェイク技術による既知の搾取に対処する法律、通称「TAKE IT DOWN Act」だ。

メラニア夫人は2025年初頭、議会を自ら訪ねて法案成立を働きかけ、AIとディープフェイクをテーマにした「ビー・ベスト(Be Best)」の円卓会議を主催した。法案は下院を409対2、上院を全会一致で通過し、2025年5月19日にローズガーデンで署名式が開かれた。夫人も式典に立ち会っている。

同法は、AI生成物を含む同意のない性的画像を故意に公開する行為を犯罪とし、被写体が成人なら最長2年、未成年なら最長3年の連邦刑を定める。プラットフォーム事業者には、正当な申し立てから48時間以内の削除を義務付けた。刑事罰の規定は署名と同時に発効したが、事業者側の対応義務と米連邦取引委員会(FTC)による民事執行が動き出したのは1年後の2026年5月19日である。違反1件あたりの民事制裁金は5万3088ドル(約844万円)で、FTCは執行開始に合わせ、いわゆる「ヌーディファイ」ツールを提供する12社へ警告書を送ったと報じられている。

執行の実績も出始めている。2026年4月7日、オハイオ州コロンバスのジェームズ・ストレイラー被告(37)が、サイバーストーキングや同法の定める「デジタル贋作」の公開などの罪を認め、同法に基づく初の連邦有罪事例となった。メラニア夫人はこれをX(旧ツイッター)で公表し、担当した連邦検事に謝意を示している。5月20日にはニューヨーク州東部連邦地区のブルックリンの裁判所で、別の男性2人に対する刑事告発が開示された。検察は、2人が実在の女性の写真をAIで加工した画像や動画を470以上のアルバムにまとめて公開し、被害者は140人を超え、閲覧数は数百万回に達したとしている。両件はいずれも告発の段階であり、有罪が確定したものではない。

■里親経験者向けの奨学金とデジタル基盤

2025年11月13日には、大統領令「Fostering the Future for American Children and Families」(大統領令14359号)の署名にこぎ着けた。夫人が2021年に始めた同名の取り組みを土台に、里親制度を離れる若者への教育・就労・住宅の支援を広げるもので、大学や短大に進む里親経験者向けのテクノロジー分野の奨学金が柱の一つだ。夫人は署名式で、この奨学金が受給者を「キャリアの道筋に乗せる」ものだと述べている。

保健福祉省の児童家族局(ACF)は、AIを用いて進学、住宅、就労の情報につなぐポータル「FosteringTheFuture.gov」の構築を進めている。里親経験者や州の児童福祉担当者との円卓会議・設計セッションを重ねて内容を固めたと説明しており、全面稼働は2026年秋を見込む。同局は2026年2月23日、アイオワ州との連携発表とあわせ、州の児童福祉情報システムの刷新を支援する「児童福祉技術インキュベーター」を立ち上げた。

AI生成物を直接の規制対象に据えた連邦法の成立を、ファーストレディが前面に立って推し進めた例はこれまでにない。ジル・バイデン夫人の「Joining Forces」は軍人家族の支援と教育を扱ったがテクノロジー関連の立法には至らず、ミシェル・オバマ夫人の「Let's Move」や「Let Girls Learn」も既存の連邦制度を通じた運動だった。5人の職員と、借り物の部屋という体制から生まれた立法上の実績としては、記録の上では現代のファーストレディが主導したテクノロジー政策で最大のものになる。

■公の場に出ない間も続く仲介

公の日程が途絶えている間も、事務所を通じた活動は続いている。ホワイトハウスは8月17日、ウクライナとロシアの戦争で家族と引き離された子ども1人が同日、夫人の仲介で家族と再会したと発表した。2025年8月15日にアラスカで開かれた米ロ首脳会談で、トランプ大統領がウラジーミル・プーチン大統領へ手渡した夫人名義の「平和の手紙」以降、こうした再会は34件に達したという。

夫人は「長い時間を経て母親と子どもを再会させること以上に力のあるものはない」との声明を出し、代理人とともに次の再会に向けた働きかけを続けているとしている。ウクライナ政府は連れ去られた子どもを約2万人としており、帰還が確認されているのはその一部にとどまる。

■1720万ドルの私的収入と、映画契約への疑義

米政府倫理局(OGE)が2026年6月30日に公開したトランプ大統領の年次財務開示書には、フロリダ州パームビーチに置かれた事業体「MKT World LLC」を通じた夫人の2025年収入が記されている。連邦倫理規則が配偶者の収入開示を求めているためで、記載は大統領の「OGE Form 278e」第5部にある。合計は1720万ドル(約27億3000万円)を超えた。

最大の項目は、ドキュメンタリー映画『Melania』のライセンス契約に伴う純収入1071万ドル(約17億円)である。同作は2026年1月29日にケネディ・センターでプレミア上映され、翌30日に劇場公開された。配給はアマゾンMGMスタジオで、興行収入は全世界で約1666万ドル(約26億5000万円)。アマゾンは関連ドキュシリーズを含む権利取得に4000万ドル、宣伝に3500万ドルを投じたと報じられている。

NFTなどコレクティブルの販売による純収入は601万1259ドル(約9億5600万円)で、2024年に開示された同分野の収入(約21万6710ドル)のおよそ28倍にあたる。回顧録『Melania』(スカイホース社刊)の純収入は52万1161ドル(約8290万円)だった。

映画契約を巡っては、エリザベス・ウォーレン、ベン・レイ・ルハン両上院議員と、プラミラ・ジャヤパル、ダン・ゴールドマン、ハンク・ジョンソン各下院議員が2026年3月15日、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOに書簡を送った。支払額の大きさが「興行上の賭けだったのか賄賂だったのか」という疑問を招いているとして、トランプ政権に事業上の利害を持つ企業として政治的影響力を得るための取り決めではなかったかを説明するよう求めている。アマゾンは「顧客に喜んでもらえると考えたから、その一点でライセンスを取得した」と否定し、ホワイトハウスの報道担当も、大統領と家族が利益相反に関与したことはないとしている。

商業面の事情は、日程の傾向を説明する一因ではあっても、それ自体が答えではない。夫人は2025年の就任前、FOXニュースに対し、ホワイトハウス、ニューヨークのトランプ・タワー、パームビーチのマール・ア・ラーゴに時間を分ける考えを示していた。財務開示は、パームビーチの事業体がいまも商業活動の受け皿であることを裏づけている。

■4月に集中し、7月に空白ができた

2026年で最も活動が多かったのは4月で、発言、報道発表、あるいは撮影が10日にわたって確認されている。チャールズ英国王とカミラ王妃の訪米を迎えたのもこの月だった。

最も注目を集めたのは4月9日である。夫人は予定になかった形でホワイトハウスの記者団を集め、ジェフリー・エプスタイン事件と自身を結びつける臆測を否定する声明を読み上げた。「悪意を持ち、政治的な動機から、私の名誉を傷つけて金銭的な利益を得たり政治的に浮上したりしようとする個人や団体による、私に関する虚偽の中傷は、やめなければならない」。夫人は質問を受けずに退出した。何がこの発言を促したのかは明らかになっていない。

4月25日には、ワシントン・ヒルトンで開かれたホワイトハウス記者協会(WHCA)の夕食会に出席した。トランプ大統領が現職として初めて参加した回だったが、会場の警備検問付近で銃撃があり、夫人は大統領や副大統領らとともにシークレットサービスによって退避した。逮捕された男は大統領暗殺未遂などの罪で訴追され、無罪を主張している。夕食会は7月24日に改めて開かれたが、夫人は出席しなかった。

6月と7月の登場は合わせて5日にとどまった。うち2日は、ホワイトハウスのサウスローンで開かれたUFCの興行とワールドカップ決勝という競技イベントである。7月には、22日にデラウェア州ドーバー空軍基地で行われたイランの攻撃による戦死者4人の搬送式典、24日の振替開催のWHCA夕食会、28日のリンゼー・グラム上院議員の葬儀という3つの場面を欠席した。夫人は3月7日に行われた同種の搬送式典には、大統領とともに参列していた。

■「不在」なのか「再定義」なのか

解釈は割れている。ブラワー氏は、夫人が歴史的な前例に頓着していない姿勢を明確にしていると見る。一方、トランプ大統領の伝記作家マイケル・ウォルフ氏は2026年7月、自身のニュースレターで、夫妻に近い関係者の話として「トランプ氏と妻はほとんど口をきかない」「彼女がホワイトハウスに住んでいるという体裁すら、ほとんど保たれていない」と書いた。ホワイトハウスもファーストレディ府も、この記述に反応していない。なおウォルフ氏は今期、夫人と法廷で争っている。

役割に何が求められるのかという問いに、法令からの答えはない。ファーストレディ府は税で運営され、5人の職員、ホワイトハウス内の執務空間、移動費、警護はいずれも公的な資源に支えられている。それでも、その資源をどう使うべきか、何回の登場をもって十分とするか、誰がそれを判断するのかを定めた規則は存在しない。メラニア夫人は、明文化されていない役割が許す範囲の外縁で動いており、しかも歴代の夫人にはなかった規模の私的収入という後ろ盾を持つ。

9月にはレイバーデーの行事と米同時多発テロの追悼式がホワイトハウスの日程に入る。夫人が姿を見せるかどうか、秋の政治日程のなかで日程がどう動くかは、まだ分からない。すでに記録として残っているのは、この19カ月間の輪郭である。AI生成物を規制する連邦法を成立まで運び、里親の若者向けのデジタル基盤を立ち上げ、自らの執務棟が舞踏室のために解体されるのを黙って見送り、現代のどの夫人よりも多い私的収入を得て、そして現代のどの夫人よりも公の場に姿を見せなかった。

■注目ポイントQ&A

●「TAKE IT DOWN Act」とはどのような法律ですか?

AI生成のディープフェイクを含む、同意のない性的画像を故意に公開する行為を犯罪とする連邦法です。2025年5月19日に成立しました。被写体が成人なら最長2年、未成年なら最長3年の刑が定められ、プラットフォーム事業者には申し立てから48時間以内の削除が義務付けられています。事業者向けの民事執行は2026年5月19日に始まり、違反1件あたり5万3088ドルの制裁金が科され得ます。2026年4月にはオハイオ州の男性が罪を認め、初の適用例となりました。

●米国のファーストレディに公務出席の法的義務はありますか?

ありません。ファーストレディ府は大統領府の一部門ですが、役割そのものは法律で明文化されておらず、出席日数や取り組むテーマ、ワシントンに滞在すべき期間を定めた法令や大統領令はありません。全国歴訪や式典への参列といった歴代の活動は慣例に基づくもので、公務を絞ること自体が規則違反にあたるわけではありません。

●ホワイトハウス東棟はなぜ解体されたのですか?

大規模な舞踏室を建設する用地を確保するため、2025年10月にトランプ大統領の指示で解体されました。東棟は1977年以降ファーストレディ府の拠点でしたが、解体後は5人の職員が公邸内のヴァーメイル・ルーム、南メザニン、図書室、チャイナルームに分かれて執務しています。事業費は当初約2億ドルとされましたが、その後4億ドルまで引き上げられ、内部記録では最大6億ドルとの見積もりも報じられています。

●私的収入の内訳はどうなっていますか?

2026年6月に公開された財務開示によると、2025年の収入はドキュメンタリー映画のライセンス契約が1071万ドル、NFTなどコレクティブルの販売が601万1259ドル、回顧録が52万1161ドルで、合計1720万ドルを超えています。いずれもパームビーチの事業体「MKT World LLC」を通じたものです。映画の契約については、民主党の議員がアマゾンに説明を求める書簡を送っています。

元記事: Melania Trump: 38 Days Visible, One AI Law, $17M Private; First Lady Role Remade

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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