米アンソロピック、AI基盤企業Decartを約60億ドルで買収協議との報道―推論効率化が焦点

2026年8月14日 14:16

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記事提供元:Tech Times

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Anthropicが、AIインフラと最適化技術を手がけるDecart AIの買収を協議していると報じられた。Bloombergによると、取引額は約60億ドル(約9,540億円、1ドル=159円換算)になる可能性がある。Reutersは関係者の話として、交渉は初期段階にあり、取引が成立しない可能性もあると伝えている。

■買収交渉の背景とIPOへの影響

Reutersは2026年8月12日、Claudeを開発するAnthropicがDecart AIの買収を協議していると報じた。Bloombergが先に報じた取引額は約60億ドルで、実現すればAnthropicにとって過去最大規模の買収になるとみられる。ただし、Reutersによると協議は初期段階で、最終合意には達していない。Anthropicの広報担当者はコメントを控え、Decartからも直ちに回答は得られなかった。

Anthropicは2026年6月1日、普通株式の新規株式公開に向け、Form S-1の登録届出書案を米国証券取引委員会(SEC)へ非公開で提出したと発表している。ただし、募集株式数や価格、上場時期は決まっておらず、実際のIPOは市場環境などの条件に左右される。

■計算能力ではなく「効率」を買う

Decartは、AIモデルの学習と推論を高速化し、既存の計算資源からより高い性能を引き出すためのインフラ技術を開発している。Reutersが引用した関係者によると、同社の技術はAnthropicが既存インフラでより多くの需要を処理する助けになる可能性がある。

取引が成立した場合、DecartのチームはAnthropicの推論・パフォーマンス部門に加わる見通しだという。推論とは、学習済みのAIモデルがユーザーからの入力を処理し、回答などを生成する工程を指す。

AIサービスでは利用量が増えるほど推論に必要な計算資源も増える。このため、チップを追加するだけでなく、同じハードウェアからより多くの処理能力を引き出す技術が、コスト管理とサービス拡張の両面で重要になる。

■Decartの最適化スタック(DOS)の仕組み

Decartの中核技術は「Decart Optimization Stack(DOS)」と呼ばれる。Decartによると、DOSはAIの推論や学習を対象とし、GPU、GoogleのTPU、AWS Trainium、AMD製アクセラレーターなど、複数のチップアーキテクチャで性能を最適化するための基盤である。

DOSは、AIモデルとそれを実行するハードウェアの間に位置し、処理の遅延、スループット、コスト、ハードウェア利用効率の改善を目的としている。特定メーカーのチップだけに限定されず、複数種類のアクセラレーターに対応する点をDecartは特徴として掲げている。

一般に、チップごとにメモリ構成や並列処理方式が異なるため、モデルや実行コードを個別のハードウェアに合わせて最適化することで、同じ計算資源からより高い性能を引き出せる可能性がある。ただし、記事公開時点で、Anthropicの環境に導入した場合の具体的な性能向上率やコスト削減額は明らかになっていない。

■インフラの実力を示すDecartの製品群

Decartはインフラ技術に加え、リアルタイム動画変換モデル「Lucy」と、インタラクティブな仮想環境を生成する世界モデル「Oasis」を開発している。

同社によると、Lucyはライブ映像をリアルタイムで変換する技術で、バーチャル試着、広告、ソーシャルプラットフォーム、ゲームなどでの利用を想定している。

Oasisは、操作や制御信号に反応する仮想環境をリアルタイムで生成する世界モデルである。Decartは、自律走行車やロボットなどのシステムを仮想環境内で学習・検証する用途を掲げている。Reutersは、DecartがAIインフラや最適化技術だけでなく、LucyとOasisを含む独自のAIモデルも開発していると伝えている。

■Anthropic浮上前の買収交渉の経緯

Anthropicとの協議が報じられる前には、イスラエルのメディアが、DecartとSpaceXの買収交渉の可能性を報じていた。Reutersによると、イーロン・マスク氏はSpaceXによる買収を巡る報道をX上で否定した。

Reutersが確認した2026年8月12日時点の状況では、Decartの買収を協議している企業はAnthropicとされている。ただし、交渉は初期段階であり、買収先や条件が確定したわけではない。

■IPOに向けた計算

Anthropicは2026年6月1日、IPOに向けた登録届出書案をSECへ非公開で提出した。会社側は、この提出によってSECの審査後に株式を公開する選択肢が得られる一方、IPOの実施は市場環境やその他の要因に左右されると説明している。

Anthropicの公式発表では、上場市場、上場時期、募集株式数、公開価格は明らかにされていない。このため、Decartの買収が特定の上場期限に合わせたものかどうかは確認できない。

もっとも、Reutersは今回の協議について、Anthropicが上場を控えて計算能力の拡大とサービスの容量制約への対応を進める中で浮上したものだと報じている。買収が成立すれば、Decartの最適化技術と人材を取り込み、既存インフラの処理効率を高める可能性がある。

■Decartの創業者たち

Decartは2023年、Dean Leitersdorf氏、Orian Leitersdorf氏、Moshe Shalev氏によって設立された。同社は2026年5月、Radical Venturesが主導する資金調達ラウンドで3億ドルを調達したと発表した。Reutersによると、Nvidiaも新規投資家としてこのラウンドに参加した。Decartは、DOS、Lucy、Oasisの3つを中心に、低遅延AIシステム向けのインフラとモデルを開発している。

■注目ポイントQ&A

●なぜAnthropicは約60億ドルでDecartの買収を検討しているのですか?

関係者の話としてReutersが伝えたところによると、Decartの技術はAnthropicが既存のインフラでより多くの需要を処理する助けになる可能性があります。買収が成立すれば、DecartのチームはAnthropicの推論・パフォーマンス部門に加わる見通しです。ただし、約60億ドルという金額は報道ベースであり、最終的な買収価格として確定したものではありません。

●世界モデル(ワールドモデル)とは何ですか?

世界モデルは、環境の状態や、操作に応じて環境がどう変化するかをモデル化するAIシステムです。DecartのOasisは、操作や制御信号に反応する仮想環境をリアルタイムで生成し、自律走行車やロボットなどの学習・検証に利用することを想定しています。

●DOSはどのような技術ですか?

DOSは、Decartが開発するAIの学習・推論向け最適化基盤です。Decartによると、NvidiaのGPU、AWS Trainium、Google TPU、AMD製アクセラレーターなど、複数種類のハードウェアを対象に、遅延、スループット、コスト、利用効率の改善を図ります。Anthropicの環境でどの程度の性能向上が得られるかは公表されていません。

元記事: Anthropic in Talks to Acquire Decart for $6B, Targeting 77% Gross Margins Before IPO

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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