関連記事
米Strategy社、優先株の額面回復に向けビットコイン1,690BTCを原価割れの約173億円で売却

(theblock.co)[写真拡大]
世界最大級のビットコイン(BTC)保有企業として知られた米ストラテジー(Strategy)社は、優先株「STRC」の価格を額面の100ドル(約1万5,900円)に戻すため、原価を下回る価格でビットコインを売却している。米国証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、同社は8月3日から9日にかけて1,690BTCを売却し、その代金全額をSTRCの買い戻しに充てた。STRCの額面回復は、同社がビットコイン売却の必要性を減らし、将来的に購入を再開するための重要な条件となっている。
■原価割れでの売却が続く背景
Strategy社がビットコインの売却を終えるために達成する必要がある数字が1つある。それは「100ドル」だ。月曜日の市場前取引の時点で、その指標となる優先株STRCは95.55ドルで取引されており、5月下旬に同社の資本構造が逼迫して以来、最もこの水準に近づいている。
同社が月曜日に米国証券取引委員会(SEC)へ提出したForm 8-Kによると、8月3日から8月9日までの間に1,690BTCを1億860万ドル(約173億円、1ドル=159円換算、以下同)で売却した。1BTCあたりの平均売却価格は6万4,262ドルだった。また、普通株(MSTR)658万5,682株を売却して6億5,310万ドルの純手取額を得ており、ビットコインの売却代金全額を優先株STRCの115万2,020株の買い戻しに充てたことを明らかにした。同社の米ドル準備金(USD Reserve)は8月9日現在、46億5,000万ドル(約7,394億円)に達している。
この開示を受け、MSTR株は市場前取引で約0.2%上昇した。同株は前週に3.3%上昇し、金曜日には100.01ドルで取引を終えていた。
今回のビットコイン売却は、市場環境を利用した機動的な利益確定ではなかった。Strategy社は1BTCあたり約6万4,262ドルで売却したが、平均取得コストは7万5,385ドルであり、1BTCあたり約1万1,123ドル、率にして約15%の損失を出した計算になる。
損失を出してまで売却した理由は、マイケル・セイラーCEOが5月下旬に発表した戦略転換にある。同氏はStrategy社の事業モデルを「ビットコイン・トレジャリー企業」から、同社が「デジタル・クレジット・キャピタル・フレームワーク」と呼ぶモデルへと再定義した。この枠組みの下では、何が何でもビットコインを積み増す方針から、優先株の配当義務を履行し、安定した米ドル準備金を維持する方針へと優先順位が移った。CryptoTimesの累積分析によると、セイラー氏が2026年6月29日にこの枠組みを正式に採用して以来、Strategy社は約6,948BTCを売却した。今週の1億860万ドルを除く売却代金は約4億3,200万ドルで、戦略転換以降に売却したビットコインの代金は合計約5億4,000万ドルとなる。
具体的な圧力の要因となっているのは、Strategy社の配当率変動型シリーズA永久優先株「STRC」だ。STRCは1株あたり100ドルの記載価額を持つが、5月下旬以降はこの水準を下回って取引されており、新規発行による資金調達が採算に合わない状態となっている。CoinDeskが6月に解説したように、STRCが額面を下回って取引されている間、Strategy社はアット・ザ・マーケット(ATM)プログラムを通じてSTRCの新株を売却し、新たな資金を調達することができない。この資金調達チャネルが再び開くのは、STRCが100ドル以上になった場合だけだ。
■売却を終わらせる「100ドル」という指標
Strategy社の毎週の開示を注視する投資家が見ているのは、STRCの価格が100ドルに対してどの位置にあるかという1点だ。この数字は、Strategy社による優先株発行を通じた資金調達チャネル全体のオンとオフを切り替えるスイッチとして機能している。
7月30日の第2四半期決算説明会で、マイケル・セイラーCEOは曖昧な見通しにとどまらない明確な目標を示した。「成功とは額面に戻すことなのかという疑問の余地はない。額面に戻すことこそが成功だ」と同氏は述べた。セイラー氏は、2025年7月にSTRCが発行された際、IPO時の90ドルから額面の100ドルに達するまでに70取引日かかったと説明した。STRCが5月28日に額面水準を割り込んだ時点から同じ70取引日を当てはめると、目標となる回復日は2026年9月8日ごろとなる。第2四半期決算説明会のハイライトとBigGo Financeの第2四半期STRCサマリーによると、セイラー氏はこの公表済みの目標を撤回していない。
STRCは金曜日に95.01ドルで取引を終え、月曜日の市場前取引では95.55ドルまで上昇した。CoinDeskの8月5日付の回復レポートによると、これは2026年6月下旬に付けた取引時間中の安値71.25ドルから約34%の回復となる。当時はビットコインが一時6万ドルを下回り、プライムブローカーがレバレッジをかけたSTRCポジションに対する融資の掛け目を引き下げたことで、強制売却が連鎖した。
Cryptonomistの8月10日付の市場分析によると、月曜日の時点で、予測市場はSTRCが12月31日までに100ドルに達する確率を66.5%と見積もっている。わずか1週間前の36%から上昇した。
■7億8,520万ドルの買い戻し枠の役割
Strategy社がSTRCを額面に戻すために用いている手段は、市場での直接的な買い戻しだ。2026年6月29日に承認されたデジタル・クレジット証券買い戻しプログラムの下で、Strategy社は当初、公開市場でSTRCを買い戻すために10億ドルを割り当てた。市場で流通する株式数を減らし、価格を下支えする狙いがある。8月10日付の8-K提出書類によると、今週のビットコイン売却代金1億860万ドルはすべてSTRCの買い戻しに充てられ、1株あたり約94.26ドルの平均実効価格で115万2,020株を取得した。
今週の買い戻し後、優先株の買い戻し枠には7億8,520万ドルが残っている。これがSTRCの価格回復に利用できる主要な財務手段であり、9月8日という目標に、単なる言葉以上の実行可能性を与えている。
8月3日付の8-K提出書類によると、その前の週には、Strategy社は1,638BTCを1億473万ドルで売却し、5,240万ドルを優先株の配当に、5,230万ドルをSTRCの買い戻しに充てた。同時に、MSTR普通株の売却代金を用いてSTRCの91万2,143株を8,120万ドルで買い戻した。これにより、今週の追加分が入る前の米ドル準備金は40億ドルとなった。
並行して、MSTR普通株のATMプログラムでは直近の1週間に658万5,682株を売却し、6億5,310万ドルの純手取額を得た。このうち6億5,000万ドルが、優先株の配当と利息の支払いに充てるための米ドル準備金に組み入れられた。
■STRC回復の実際の条件
STRCを額面の100ドルに戻すには、単にできるだけ大規模な買い戻しを急いで行えばよいわけではない。この金融商品の設計には、特有の条件がある。
STRCは2025年7月、90ドルの価格と年率9%の配当率で発行された。変動配当の仕組みにより、価格を100ドルへ近づけるため、配当率が毎月調整される。ただし、重要な非対称の仕組みとして「ラチェット」がある。STRCが95ドルを下回るたびに、配当率は自動的に0.5ポイント上昇する。いったん上昇した配当率は恒久的なもので、価格が回復しても自動的に元へ戻ることはない。news.bitcoin.comの8月1日付の分析によると、STRCは95ドルの基準を繰り返し下回った結果、現在の配当率は年率12%に達している。初期の9%から数えて7回連続の引き上げとされている。
その結果、1株あたり月2回支払われる0.50ドルの配当が、この金融商品について年率12%の配当を維持するコストとなっている。Strategy社は8月3日付の8-K提出書類で、8月も12%の配当率を維持することを確認した。また、STRCが100ドルの記載価額またはその付近で持続的に取引される状況を示すまで、配当率の引き下げを提案する意向はないとしている。
STRCが95ドルを超えて上昇している現在、同株は技術的には95ドル未満のラチェット発動領域を脱している。このため、現時点では新たな自動引き上げは発動していない。既存の年率12%というコストが下がるわけではないが、恒久的な配当負担がさらに積み上がるのを止めるという意味で重要である。
■セイラーCEO、個人の信念と企業活動を区別
企業としての売却が恒常的に行われるようになる中、セイラー氏は先週、自身が個人で保有するビットコインとStrategy社の資本管理活動を明確に区別した。
「私が『ビットコインを絶対に売るな』と言うとき、それは一人の貯蓄者から別の貯蓄者に向けて語っている。私は自分のビットコインを売ったことはない。1サトシたりともだ」とセイラー氏はXに投稿した。「Strategy社は上場企業であり、私のウォレットではない」
同氏はまた、過去にビットコイン購入の発表に先立って投稿されることが多かった日曜日恒例のビットコイン・トラッカー・チャートを、「Doing ₿usiness」というキャプションとともに投稿した。このキャプションが近く行われるビットコイン購入を示唆しているのか、進行中の資本管理活動を反映しただけなのかは、8月9日の投稿のみから判断することはできない。8月3日から9日までの期間について、ビットコインの購入は確認されなかった。
■投資家が注目するポイント
投資家が求めている目先のシグナルは、今週ビットコインが上昇するか下落するかではなく、STRCが95ドルを超える軌道を維持できるかどうかだ。Strategy社の経営陣は第2四半期決算説明会で、いかなる状況でも額面を下回る価格でSTRCを新規発行することはないと述べた。BigGo Financeの第2四半期決算サマリーによると、セイラー氏は「もし100億ドルを提示され、この商品を99.99ドルで売って1セント値引きしてほしいと言われても、私はその1セントを譲らない」と強調した。
この方針により、額面が回復するまで、新たな優先株資本を調達するためのATM発行チャネルは閉じたままとなる。STRCが100ドル以上で安定して取引されるようになれば、Strategy社は再び採算の取れる形で新株を発行できるようになり、資金調達のためにビットコインを損失覚悟で売却する必要がなくなる。その時点で、デジタル・クレジット・キャピタル・フレームワークの資金配分は、再びビットコインの積み増しに有利な方向へと変わる。
アナリストは、STRCが100ドルに達しても、直ちにビットコインの購入が始まるとは限らないと指摘している。同社は、ビットコイン購入に新たな資金を投入する前に、額面を上回る価格での安定を確認したいと考える可能性が高い。ただし、ForeignPolicyJournalの8月10日付の分析によると、STRCが安値から34%以上上昇し、買い戻しプログラムの半分以上が実行され、米ドル準備金が優先株配当の約2.7年分に相当する46億5,000万ドルに達したことは、今回の売却局面に明確な終点があることを示す、これまでで最も強い構造的シグナルである。
■ビットコイン保有企業196社への影響
この問題に直面しているのは、もはやStrategy社だけではない。Bitcoin Treasuriesのデータによると、現在196社の上場企業が何らかの形でビットコイン取得モデルを採用している。Strategy社に次ぐ大口の企業保有者には、Twenty One(4万3,514BTC)、Metaplanet(4万3,000BTC)、MARA(3万5,377BTC)、Bitcoin Standard Treasury Company(3万21BTC)が含まれる。
Strategy社の資本管理上の判断は、この企業群にとって特に大きな意味を持つ。JPMorganのマネージング・ディレクター、Nikolaos Panigirtzoglou氏は今年初め、2026年のデジタル資産への純資本流入の約70%をStrategy社が占めていると指摘した。TechTimesが以前報じたように、同社がビットコインの純買い手から条件付きの売り手へ移行したことは、機関投資家によるビットコイン需要の形成にも市場全体で影響を及ぼす。
Strategy社は依然として、ビットコインの最大供給量2,100万BTCの約4%に相当する84万447BTCを保有している。その取得コストの総額は約633億6,000万ドルだ。8月10日時点のビットコイン価格を約6万5,000ドルとすると、このポジションには約87億ドルの含み損がある。
■売却は本当に終わるのか
率直に言えば、まだ終わっていない。ただし、売却を終えるための条件は整いつつあり、数値で確認できる。Strategy社の経営陣が年率12%の配当率引き下げを提案するには、STRCが100ドル以上で持続的に取引される必要がある。ビットコイン購入の資金を調達するために新たな優先株を発行するのは、さらにその後となる。月曜日朝の時点でSTRCは95.55ドルにあり、100ドルに到達するために必要な上昇率は5%未満だ。7億8,520万ドルの買い戻し枠が残り、CEOが9月8日という目標日を公言していることから、STRCへの買い圧力は大きく、期間も区切られている。
回復を遅らせたり反転させたりする可能性がある要因として、STRCの裏付け資産に対する信頼を損なうようなビットコイン価格の再下落、高利回り優先証券全般の下落、あるいはレバレッジをかけてSTRCを保有する投資家の新たな流動性危機が挙げられる。こうした投資家による強制売却は、6月26日に取引時間中の安値71.25ドルを付ける要因となった。現在の46億5,000万ドルの米ドル準備金によって、これらのシナリオが排除されるわけではない。ただし、この準備金は、まさにこうした状況を乗り切れる規模になるよう設計された。
Strategy社に対するRosen Law Firmの証券関連調査は現在も継続している。調査では、Strategy社と同社幹部が、ビットコイン戦略や優先証券に内在するリスクについて、重要な点で誤解を招く発言をした可能性があるとの申し立てが扱われている。現時点で訴状は提出されていない。
Strategy社の上場証券であるMSTR普通株、STRC、STRF、STRK、STRDのいずれかを保有する投資家にとって、今週の開示は1つのメッセージを補強するものだ。同社は資本構造が崩壊するのを放置しているのではなく、以前の運用状態へ戻すために管理している。問題は、STRCが額面までの残り4.45ドルを埋めるのに、あと1週間かかるのか、それとも1カ月以上かかるのかということだ。セイラー氏が示した答えは9月8日である。年末までに額面へ達する確率を66.5%とする市場の評価は、この日程が実現するかどうかについて一定の懐疑があることを示しているが、額面回復という方向性そのものが誤っていると市場が考えているわけではない。
MSTR株はNasdaqで取引されている。本記事は情報提供のみを目的としたものであり、投資助言ではない。
■注目ポイントQ&A
●Strategy社はいつビットコインの売却を停止しますか?
Strategy社は、ビットコイン購入の再開をSTRCが額面の100ドルへ戻ることと結び付けています。マイケル・セイラーCEOは、STRCが5月28日に額面を割ってから約70取引日後となる2026年9月8日ごろを公の目標として設定しました。これは、2025年7月のIPO後、STRCが額面へ達するまでにかかった70取引日と一致します。8月10日現在、STRCは約95.55ドルで取引され、Strategy社の優先株買い戻しプログラムには7億8,520万ドルが残っています。アナリストは、STRCが額面へ達しても、同社はビットコイン購入へ資金を投じる前に価格の安定を確認する可能性が高いとしています。このため、売却は突然止まるのではなく、徐々に縮小する可能性があります。
●STRCとは何ですか? なぜその価格がMSTR株主にとって重要なのですか?
STRCは、Strategy社の配当率変動型シリーズA永久優先株です。Nasdaqで取引され、1株あたり100ドルの記載価額を持ちます。価格を100ドル付近へ誘導するための変動月次配当が設定されており、現在の配当率は年率12%です。STRCが100ドル以上で取引されている場合、Strategy社はアット・ザ・マーケット発行プログラムを通じて新株を売却し、その代金をビットコイン購入に充てることができます。これは、長年にわたる積極的なビットコインの積み増しを支えた仕組みです。STRCが額面を下回ると、その資金調達チャネルは閉じます。したがって、STRCの価格は、Strategy社の資金調達手段が利用可能かどうか、そして新たなビットコイン購入がいつ再び可能になるかを示すリアルタイムの指標となります。
●Strategy社の米ドル準備金はSTRC保有者をどのように保護していますか?
Strategy社は、優先株の配当と債務の利払いのために割り当てた米ドル準備金(USD Reserve)を維持しています。2026年8月9日現在、この準備金は46億5,000万ドルに達しており、追加のビットコイン売却や株式による資金調達を行わなくても、現在の配当率を前提として、5つの優先株シリーズの配当義務を約2.7年間賄える額とされています。この準備金は、MSTR普通株の売却と目的を定めたビットコイン売却を組み合わせて構築されました。STRCの配当はこの準備金から支払われ、ビットコインの保有資産から直接支払われるわけではありません。このため、準備金が十分に維持される限り、STRC保有者が受ける短期的なビットコイン価格変動の影響は抑えられます。
●戦略転換以降、Strategy社はどれくらいのビットコインを売却しましたか? また、そのポジションは依然として含み損を抱えていますか?
セイラー氏が2026年6月29日にデジタル・クレジット・キャピタル・フレームワークを正式に採用して以来、Strategy社は約6,948BTCを売却し、売却代金の合計は約5億4,000万ドルとなっています。これに先立ち、5月下旬にも小規模な売却がありました。同社は依然として84万447BTCを保有しており、1BTCあたりの平均取得コストは7万5,385ドル、手数料を含む取得費用の総額は約633億6,000万ドルです。8月10日時点のビットコイン価格を約6万5,000ドルとすると、このポジションには約87億ドルの含み損があります。売却した数量は総保有量の1%未満であり、ビットコインへのエクスポージャーを戦略的に縮小するためではなく、優先株の配当とSTRCの買い戻しへ資金を充てるために実行されました。
元記事: Strategy Sold 1,690 Bitcoin Below Cost to Bring STRC Within $4.45 of Par
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
関連キーワード
