AMD Ryzen AI 9 HX Pro 470、前年モデルにGPU性能で及ばず 企業が更新を急ぐ理由は乏しい

2026年7月27日 23:34

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記事提供元:Tech Times

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AMDのビジネス向けプロセッサ「Ryzen AI 9 HX Pro 470」の初の独立系ベンチマーク結果が公開され、前年のRyzen AI 9 HX Pro 370からの性能向上がごくわずかであることが明らかになった。テストされたDell Pro 7 14では、持続的な負荷によって性能が17%低下し、統合GPUのスコアもPro 370搭載の比較機を23%下回った。既存のPro 370搭載機を運用する企業のIT部門には、現時点で更新を急ぐ明確なハードウェア上の理由は見当たらない。新規導入の場合も、価格低下が見込まれるPro 370搭載機が有力な選択肢となりそうだ。

■CPU性能の向上は誤差の範囲内

NotebookcheckのAllen Ngo氏は、Dell Pro 7 14に搭載されたPro 470をテストし、Lenovo ThinkPad P14s Gen 6に搭載されたPro 370と直接比較した。AMDの公式仕様によれば、両チップは同じZen 5アーキテクチャ、12コア24スレッド構成、TSMCの4nm FinFET製造プロセス、24MBのL3キャッシュ、デフォルトTDP 28Wを共有している。仕様上の主な改良点は、最大ブーストクロックが100MHz向上したこと(Pro 370の5.1GHzに対して5.2GHz)に加え、GPUクロックとNPU性能がわずかに引き上げられたことだ。実際のテストでは、これらの向上が企業向けワークロードで体感できるほどの性能差にはつながらなかった。

一連のCPUベンチマークで、Pro 470はPro 370と実質的に区別できない結果となった。Cinebench R23のマルチコアテストでは、Pro 470搭載のDell Pro 7 14が18,834点、Pro 370搭載のThinkPad P14sが18,520点で、差は2%未満だった。Geekbench 6.7のマルチコアでも同様の傾向となり、Pro 470が14,979点、Pro 370が14,739点と、差は1.6%にとどまった。

CADレンダリングや動画処理など、持続的なプロフェッショナル向け計算処理の実用的な目安となるBlender BMW27のレンダリングテストでは、Pro 470搭載のDell機が完了までに178秒を要したのに対し、Pro 370搭載のLenovo機は169秒で完了した。この約5%の性能低下は、チップ自体のアーキテクチャ上の問題というよりも、各ノートPCの熱管理設計の違いを反映した可能性が極めて高い。それでも、Pro 470の前世代に対する性能上の優位性が、すべての筐体で保証されるわけではないことを示す結果だ。少なくとも今回テストされたプレミアムビジネスノートPCでは、その優位性は確認できなかった。

■持続的な負荷で性能が低下するDellの筐体

熱に関するテストでは、Pro 470が「新世代」という名称から期待される性能に届いていないことが、特に明確に表れた。NotebookcheckがCinebench R15を繰り返し実行し、大規模データセットの処理、AIエフェクトを有効にした長時間のビデオ通話、複雑なスプレッドシート計算など、企業向けワークロードで発生する持続的な計算負荷を再現したところ、Pro 470のスコアはピーク時の3,274点から、短時間の連続負荷後には2,709点まで低下した。同じベンチマークセッション内で17%の性能低下が生じたことになる。

サーマルスロットリングは、薄型軽量のビジネスノートPCに内在する制約だ。チップの発熱が冷却システムの限界、一般的には約90℃に近づくと、ファームウェアは損傷を防ぎ、安定性を維持するために動作クロックを引き下げる。デスクトップPCには拳ほどの大きさのヒートシンクを搭載できるが、すっきりとした外観を備える14インチのビジネスノートPCでは、冷却能力に大きな余裕を持たせにくい。Dell Pro 7 14は、処理性能だけでなく携帯性や外観も重視しており、モバイルワークステーションのような持続的な高負荷処理を主眼に置いた設計ではない。数分以上にわたって高負荷が続く企業向けワークロードでは、ピークスコアよりも持続負荷時のスコアの方が、実際の使用感をより適切に示す指標となる。

AMDが設定しているPro 470の構成可能TDP(cTDP)は15Wから54Wである。54Wで動作させる構成なら、チップはより大きな電力と冷却能力を利用できるが、Dell Pro 7 14の電力供給構成では、その上限を大きく下回る範囲に制限されている。

■GPUテスト結果が実際に示していること

統合グラフィックスのテスト結果は、慎重に読み解く必要がある。AMDの公式仕様によれば、Pro 470とPro 370はいずれも、16基のRDNA 3.5コンピュートユニットを備えたAMD Radeon 890Mを搭載している。Notebookcheckのプロセッサ仕様によると、Pro 470のRadeon 890Mは、Pro 370の2,900MHzに対して3,100MHzという高いブーストクロックで動作し、仕様上は6.9%の優位性がある。

しかし、解像度1920×1080の3DMark Fire Strikeでは、Pro 470搭載のDell Pro 7 14が6,693点だったのに対し、Pro 370搭載のThinkPad P14sは8,703点だった。同じGPUシリコンを使用しているにもかかわらず、Pro 370搭載機のスコアが約30%高く、Pro 470搭載機を基準に見ると約23%低い結果である。解像度2560×1440のTime Spyでも同様の差が見られ、Pro 470が2,639点、Pro 370が3,238点だった。

Notebookcheckは、この差をプラットフォームレベルの違いによるものとみている。具体的には、Dell機とLenovo機の熱設計、ディスプレイに割り当てられる電力、ドライバーチューニングの違いだ。これは企業の購買担当者にとって重要な点である。GPUの仕様自体は向上しているものの、薄型筐体の熱環境によって、その向上が実際の性能として現れなかった。リモートデスクトップの描画、AIエフェクトを使用するビデオ会議、軽度のクリエイティブ作業など、グラフィックス処理を含む用途でPro 470を検討する組織は、仕様上の優位性がそのまま実性能に反映されると考えず、導入予定のOEM製品を個別にテストすべきだ。

■技術的な違いと、その影響が小さい理由

Notebookcheckのプロセッサ仕様によれば、AMDのGorgon Pointプラットフォームと、その前世代に当たるStrix Pointプラットフォームは、同じダイ、製造プロセス、コアアーキテクチャを採用している。AMDの公式仕様に基づくPro 470とPro 370の主な違いは4つある。最大CPUブーストクロックが100MHz高いこと(5.1GHzに対して5.2GHz)、Radeon 890MのGPUブーストクロックが200MHz高いこと(2,900MHzに対して3,100MHz)、XDNA 2ニューラルエンジンのNPU性能が50 TOPSから55 TOPSに引き上げられたこと、より高速なシステムメモリをサポートすること(Pro 370の8,000MT/sに対してLPDDR5x-8533)である。

実際には、チップメーカーはこの程度の動作クロック向上を、シリコンの再設計ではなく、同じ生産ウェハーから、テスト時にわずかに高い周波数を維持できるチップを選別することで実現する。これは「ビンリフト」と呼ばれる手法である。アーキテクチャ、トランジスタ、ダイ面積は同一だ。そのため、理想的な条件ではピークスコアがわずかに向上しても、実際のビジネスノートPCが受ける熱的な制約の下では、ほぼ同じ結果になる。

NPUの数値には特に注意が必要だ。AMDはGorgon PointとStrix Pointの両方を「Ryzen AI」ブランドで展開しており、企業のPC更新を促す売り文句として「AI PC」を掲げることは、ベンダーの一般的な訴求手法になっている。Pro 370は、MicrosoftのCopilot+ PC認定基準である40 TOPSをすでに上回っている。Pro 470の55 TOPSも、より大きな余裕を持って基準を上回るが、それによって新たなCopilot+機能が利用可能になるわけではない。リアルタイム文字起こし、文書の意味検索、Windows RecallなどのオンデバイスAI機能を目的としてPC群の更新を検討している組織でも、Pro 370搭載機ですでにこれらの機能を利用できる。NPU性能が50 TOPSから55 TOPSに向上しても、企業のCopilot+導入における重要な機能差は生じない。

■セキュリティプラットフォームは変更なし

コンシューマー向けRyzenチップではなくRyzen AI PROシリーズを選ぶ最大の理由は、性能よりもAMD PROセキュリティスタックにある。AMD PROには、ファームウェアとBIOSコードを実行前に検証するハードウェアの信頼基点「AMD Secure Processor」、RAM内のデータと暗号鍵を含むシステムメモリ全体を暗号化する「AMD Memory Guard」、コード改ざん攻撃をハードウェアで防御する「Shadow Stack」、チップからクラウドまでを保護する暗号化プロセッサ「Microsoft Pluton」、AMD DASHによるリモート管理が含まれる。AMD DASHはTLS 1.3を使用しており、原文ではIntelの競合プラットフォームであるvProが使用するTLS 1.2より新しく、安全性の高いプロトコルだとされている。AMDはプロセッサの最終出荷日から5年間のソフトウェアサポートも提供しており、長期にわたるデバイスのライフサイクルを管理する企業のIT部門にとって重要な要素となる。

AMDの公式仕様によれば、このセキュリティスタックはPro 370とPro 470の両方に搭載され、内容も変わっていない。セキュリティ機能を主な理由としてAMD PRO搭載機を選ぶ組織にとって、セキュリティを理由にPro 370からPro 470へ更新する必要はない。6層の保護機能は両世代で同一である。

■AI PCの訴求はアップグレードの判断を変えない

企業向けテクノロジーのベンダーは、年次の製品更新をAI機能の訴求と結び付けることが増えている。2026年3月に発表されたRyzen AI PRO 400シリーズに関するAMDのプレスリリースでは、Pro 470について「モバイルフォームファクターにAIアクセラレーションとCopilot+ PC体験を提供する」と説明している。この表現は技術的には正確だが、同じCopilot+体験を提供するPro 370搭載機をすでに運用している組織に対しては、誤解を招きかねない。

Pro 470のNPU性能は55 TOPSで、Pro 370の50 TOPSのXDNA 2エンジンを仕様上10%上回っている。しかし、Windowsのライブキャプション、ビデオ通話でのリアルタイム背景ぼかし、オンデバイスでの文書要約、ローカルでの小規模モデル推論など、実際のNPUワークロードにおけるボトルネックは、40 TOPSをどれだけ上回るかではなく、メモリ帯域幅である。メモリ帯域幅は、チップの公称TOPS値ではなく、システムのRAM構成によって決まる。NPU性能を理由にPC群の更新を検討する組織は、Pro 470がPro 370をどれだけ上回るかではなく、現在使用している機器がCopilot+ PCの40 TOPS基準を満たしているかどうかを確認すべきだ。

Notebookcheckは、他のOEMや異なる筐体を採用したPro 470搭載ノートPCでは、Dell Pro 7 14と異なる結果になる可能性があると指摘している。この留保は妥当だ。ただし、Pro 470とPro 370のCPU性能差は、すべてのCPUベンチマークで2%未満と極めて小さい。プラットフォームの実装が変わったとしても、CPU性能だけで更新を正当化できるほどの差になる可能性は低い。熱設計によって約7%のGPUクロック上の優位性が実性能に表れなかった今回の結果は、理想的な熱条件がなければ実現しない仕様上の優位性を、慎重に評価する必要があることを示している。

現在、AMD製プロセッサを搭載した新しいビジネスノートPCを検討している購入者に対し、Notebookcheckは、旧モデルのRyzen AI 9 HX Pro 370を搭載した製品を探すよう勧めている。Gorgon Point搭載製品への切り替えに伴ってPro 370搭載機の在庫整理が進めば、価格が下がる可能性がある。Notebookcheckの評価では、Pro 370搭載機の実際の使用感はPro 470搭載機と「ほぼ同一」でありながら、より低い価格で購入できる可能性がある。

既存のPro 370搭載機を管理しているIT部門にとって、今回のベンチマークデータは、更新サイクルを前倒しするハードウェア上の根拠を示していない。

■注目ポイントQ&A

●AMD Ryzen AI 9 HX Pro 470は、Pro 370からアップグレードする価値がありますか?

2026年7月25日にNotebookcheckが公開した初の独立系ベンチマーク結果に基づけば、アップグレードを正当化できるほどの性能差はありません。今回テストされたDell Pro 7 14のCPU性能は、すべてのテストワークロードで、Lenovo ThinkPad P14s Gen 6に搭載されたPro 370との差が2%未満でした。Dell機のGPUスコアは、チップ自体の性能後退ではなく、プラットフォームの熱設計などの違いにより、Pro 370搭載機を23%下回りました。Pro 370搭載機を運用している企業には、Pro 470へ更新する明確なハードウェア上の理由はありません。新しいAMD搭載ビジネスノートPCを探している購入者は、在庫整理で価格が低下する可能性のあるPro 370搭載機に、より高いコストパフォーマンスを見いだせる可能性があります。

●Ryzen AI 9 HX Pro 470は、企業利用においてPro 370よりも優れたAI機能を提供しますか?

仕様上のNPU性能は上回っています。Pro 470が55 TOPSであるのに対し、Pro 370は50 TOPSです。しかし、どちらもMicrosoftのCopilot+ PC認定基準である40 TOPSを上回っており、Windows Recall、ライブキャプション、AIを利用したビデオエフェクトなど、現在のオンデバイスAI機能を実行するための基準を満たしています。現在のCopilot+ワークロードでは、Pro 370もPro 470もNPUの演算性能が主な制約にはなっていません。オンデバイスAI推論における実際のボトルネックはメモリ帯域幅であり、システムのRAM構成に依存します。Copilot+を理由にPro 370を導入した企業がPro 470へ更新しても、新たなAI機能が利用可能になるわけではありません。

●今回のテストで、Pro 470の統合グラフィックスのスコアがPro 370を23%下回ったのはなぜですか?

どちらのチップも、16基のRDNA 3.5コンピュートユニットを備えたAMD Radeon 890Mを搭載しています。仕様上、Pro 470のGPUブーストクロックは3,100MHzで、Pro 370の2,900MHzを上回っています。3DMark Fire StrikeでPro 470搭載機のスコアが23%低かったのは、Dell Pro 7 14と比較対象のLenovo ThinkPad P14s Gen 6における、熱設計、電力供給構成、ドライバーチューニングなどの違いを反映したものです。Dellの薄型で外観を重視した筐体では、ThinkPadの冷却設計と比べて、GPUに持続的に供給できる電力が制限されています。この結果は、企業の購買担当者がPC群の構成を決定する前に、チップの仕様だけでなく、導入予定のOEM製品そのものをテストすべき理由を示しています。

●企業のIT部門は、ノートPCを更新する前にAMDの次世代モデルを待つべきですか?

AMDはすでにZen 6アーキテクチャの初期サンプルを披露しており、Zen 6世代の「Medusa Point」が開発中です。既存のハードウェアが十分に機能している場合、現在のビンリフトによる小幅な更新ではなく、本格的なアーキテクチャ刷新を待つことは合理的な選択です。ハードウェアのサポート終了や、現在の機器では満たせないセキュリティ要件によって更新が必要な場合は、Pro 370が引き続き価格面で有力な選択肢となります。Pro 470搭載製品への切り替えが進むにつれて、Pro 370搭載機を低価格で入手できる可能性があります。

元記事: AMD Ryzen AI 9 HX Pro 470 Trails Last Year’s Business Chip in GPU: Enterprise Should Hold Off

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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