株価も上昇! 「ペロブスカイト」にかかる期待!

2025年7月4日 09:16

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積水化学工業と積水ソーラーフィルム、関西エアポート神戸が神戸空港で6月から開始した実証実験の様子(画像: 神戸市の発表資料より)

積水化学工業と積水ソーラーフィルム、関西エアポート神戸が神戸空港で6月から開始した実証実験の様子(画像: 神戸市の発表資料より)[写真拡大]

●経産省の太陽光パネル義務化で関連株上昇

 日経新聞によると、経済産業省は2026年度から化石燃料の利用の多い工場や店舗を持つ1万2000事業者に、太陽光パネルの導入目標策定を義務付けると言う。

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 この報道を受けて、次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池に関連する企業の株価が、上昇した。

 従来の太陽光パネルの設置には広大な土地が必要で、適地はすでに限られている。一方で、軽量で柔軟な太陽電池が作れ、ビルの壁や窓ガラスにも設置できるペロブスカイトの需要は、高まると見られている。

 国産技術で生産できるペロブスカイトは、関連株だけでなく、日本経済にとっても起爆剤として期待される。

●ペロブスカイトとは?

 ペロブスカイトは、灰チタン石という鉱物で、ペロブスカイト構造と言う独特な結晶構造を有する。

 桐蔭横浜大学の宮坂力教授が、ペロブスカイト材料を太陽電池に使うことを提唱し、同教授の研究グループが光から電気を生み出すことに成功した。ノーベル賞候補としても名前が挙がっている。

 世界で実用化に向けての競争が行われているが、ペロブスカイトの原料は従来の太陽光パネルに必要なレアメタルが不要で、日本が世界2位の生産量を誇るヨウ素で作れることから、優位性がある。

 研究グループでは、2025年の実用化を目指し、2023年から実証実験が行われている。

●期待の一方、不安も・・

 ペロブスカイト関連株である伊勢化学工業や積水化学の株が上昇するなど、期待は高い。

 日本にとっては、化石燃料の輸入を減らし、コスト削減に繋がる。市場規模は2032年までに1760万ドル(約2500億円)に達するとも言われている。

 ただ実用化の道は険しい。雨に弱く、水や湿度への耐用性が課題とも言われている。材料に鉛が使われていることで流出した時の環境の問題や、エネルギー変換効率もまだまだ未知数な部分が多い。

 結局は、従来型の太陽光パネルの課題を大きく解決できるとは言い難い。

 AI革命によるデータセンターなどの電力需要を賄えるわけではなく、世界中で脱炭素社会実現への陰りが見られる中、その流れを劇的に変えられるわけではなさそうだ。

 それでも、日本がペロブスカイトのイニシアチブを取れるなら、輸出面も含め、日本経済の起爆剤になることは間違いない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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