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「好奇心は猫を殺す」とは? 猫にまつわる英語イディオム (1)
「Curiosity killed the cat(好奇心が猫を殺した)」は、過度な詮索や探求心が思わぬ災いを招くという警句である。
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なぜ猫が登場するのかといえば、猫はその旺盛な好奇心ゆえに狭い場所に入り込んだり、高い所に登ったりと、しばしば自ら危険な状況に入るからだ。そうした猫の行動が、この表現の比喩としてぴったり重なったのだろう。
何気なく使われることが多いこの表現だが、その歴史をたどると意外な変遷をたどっている。
■Curiosity Killed the Catの起源
このことわざが現在の形で広まる以前、17世紀ごろまでは 「Care killed the cat」という別の形で使われていた。ここでの 「care」 は「配慮」や「気遣い」ではなく、「心配」や「悩み」といった意味で用いられている。
最古の記録として知られているのは、1598年にイギリスの劇作家ベン・ジョンソンが書いた喜劇『Every Man in His Humour』に登場する一節である。
"Helter skelter, hang sorrow, care’ll kill a cat..."
この台詞は陽気さを装いつつ、悲しみに沈むのはやめようという文脈で発せられており、「心配しすぎると身を滅ぼす」といった警句的な含意が見て取れる。
翌年にはシェイクスピアの『Much Ado About Nothing(空騒ぎ)』にも似たような言い回しが登場し、「care killed a cat」という言い回しが一般に浸透していたことが推測できる。
■「care」から「curiosity」へ
「Care killed the cat」をいつ誰が「Curiosity killed the cat」 に変えて使ったのか、はっきりしたことはわからない。ただ、その変化は19世紀後半に起こったと考えられる。
たとえば、1868年のアイルランドの新聞記事に 「They say curiosity killed a cat once」 という記述が見られる。1873年には『The Handbook of Proverbs: English, Scottish, Irish, American, Shakespearean, and scriptural; and family mottoes』ということわざ辞典に、アイルランドのことわざとして掲載されている。
この時点ではまだ定着途中だったと思われるが、1909年にアメリカの作家O. ヘンリーが短編『Schools and Schools』でこの表現を用いたことにより、広く知られるようになったと考えられている。
■満足が猫を生き返らせる?
その後、このことわざに新しいフレーズを加えた「Curiosity killed the cat, but satisfaction brought it back」という形も用いられるようになった。19世紀以前のことわざ集には登場しないので、アメリカ英語圏において比較的最近になって加えられた変形と考えられる。
この変化形には、単に危険性を戒めるだけでなく、知ろうとすること自体を肯定し、たとえ危険があっても学びや発見の価値を重視するという、まさにアメリカ的なメンタリティが表れているとも言えるだろう。
例文
・Don’t go snooping through his desk. Curiosity killed the cat, remember?
(彼の机を勝手に探るなよ。好奇心が猫を殺すって言うだろ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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