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犬にまつわる英語イディオム、今回取り上げるのは「dog and pony show」だ。
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この言葉を見て、サーカスのような楽しい光景を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかしこの表現が、現代では皮肉や批判の意味で使われることをご存じだろうか?
意外なルーツを持つこの言葉が、どうしてネガティブな意味合いを持つようになったのか、詳しく見ていこう。
■Dog and Pony Show
「dog and pony show」とは、直訳すると「犬とポニーのショー」となるが、その意味は単なる動物の見世物ではない。現代では、「見た目ばかり派手で実質の伴わない誇張されたパフォーマンス」や、「誰かを説得するために演出された、過剰なプレゼンテーション」を指す。
特に政治やビジネスの場面で、実際には重要性や実態のない出来事が、あたかも大きな意義を持つかのように演出されるときに使われることが多い。
この表現のルーツは、19世紀末から20世紀初頭のアメリカに遡る。当時、広大なアメリカの農村部では娯楽が限られており、大都市で見られるような大規模なサーカスや舞台公演を招くことは困難だった。
そこで移動型の小規模なショーが各地を巡業し、人々に娯楽を提供していた。そのなかでも特に人気があったのが、「dog and pony show」と呼ばれる、犬やポニーを使ったショーだった。
現在のサーカスの基準からすれば、当時の犬やポニーを使ったショーは、規模も小さく見世物としても単調なものだっただろう。それでも、他と隔絶され変化の乏しい田舎においては一大イベントだったはずだ。
したがって当初、この表現にネガティブな意味合いはなかった。それがいつしか、「dog and pony show」=「大げさな演出をするわりには中身が乏しいもの」というイメージに変わっていったのである。
■現代の比喩表現へ
「dog and pony show」が比喩的な意味で広く使われるようになったのは、20世紀に入ってからである。特に政治やビジネスの場面で、何かを印象的に見せるために派手な演出を施すが、実際の内容が乏しい場合に使われることが多い。
政治家が開催する有権者を引きつけるための華やかなイベントや、企業が行う派手なプレゼンテーションなどがその例だ。
またアメリカでは、法廷の場面でもしばしば使われる表現だ。法廷では、検察や弁護側が陪審員を説得するために、意図的に派手な演出を行う場合がある。サプライズ証人の登場や、感情を揺さぶるような証拠提示など、まるで舞台演劇のように展開する裁判があるが、こうした裁判は時に「dog and pony show」と揶揄されることがある。
例文
・The courtroom turned into a dog and pony show, with the prosecution dramatically revealing last-minute evidence to sway the jury.
(陪審員の心を揺さぶろうと検察側が土壇場で劇的に新証拠を提示した結果、法廷はまるで茶番劇のようになってしまった)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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