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「豚の目の中」とは?家畜から派生して独特の意味を獲得した英語イディオム
今回も家畜に由来する英語イディオムを紹介したい。注目するのは「豚」に関連する表現で、特に「豚の目」と「豚の耳」を使ったフレーズだ。
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これらのフレーズは豚という動物と直接関連しているわけではなく、実はまったく異なる意味を持っている。ではなぜ、これらの表現が豚から派生し、まったく異なる意味を持つようになったのかを掘り下げてみよう。
■In a Pig's Eye
「in a pig's eye」というフレーズは、何かがあり得ないことと示唆するため、感嘆詞的に用いられる表現だ。
たとえば、あまりにも馬鹿げた話を聞いたときや、誰かが実現不可能な目標を達成すると主張したときなどに、「In a pig's eye!」と断言する。以下の例文のように、「ありえない!」や「そんなバカな!」といったニュアンスだ。
・You think you can finish that project by tomorrow? In a pig's eye!
(明日までにプロジェクトを終わらせると思っているの? ありえない!)
この表現は、17世紀にさかのぼる。豚の目は顔の大きさに比してとても小さいことから、目の小ささを表す表現として「a pig's eye」が使われ始めた。記録に残っているところでは、イギリスの詩人Richard Flecknoeが1658年に出版した作品において、この表現を使用している。
最初は単に目の小ささを示す表現だったが、19世紀に入ると、アメリカで「in a pig's eye」という形になり、異なる意味を持つようになった。何かが信じられないほど非現実的であったり、絶対に起こり得ない状況を指したりする表現として使用され始めたのだ。
なぜこのような変化が起きたのかはさだかではないが、以前紹介した、同じく非現実性を表す「when pigs fly」のような表現と、関連があるのではないかと考えられている。
このフレーズはアメリカで広まり、その後、オーストラリアにも伝わった。やや古風ではあるものの、アメリカではポピュラーな表現として今でも頻繁に用いられている。一方、もともとのルーツのあるイギリスでは普及しなかったようだ。
■In a Pig's Ear
イギリスでは、「in a pig's eye」の変形として「in a pig's ear」というスラングが生まれた。ただしその後、「a pig's ear」という形で、別の意味を持つようにもなった。
「in a pig's ear」という形では、「in a pig's eye」と同じく「ありえない」という意味になるのだが、「何かを台無しにする」や「何かを間違って実行する」という意味で、「make a pig's ear of something」という形も使われている。
・I tried to fix the watch myself and ended up making a pig's ear of it.
(自分で時計を修理しようとしたが、結局完全に台無しにしてしまった)
ただし、今ではかなり古風なスラングであり、イギリスの若い世代のなかには知らない人も多いようだ。またスラングなので、フォーマルな文章には適さないことにも注意したい。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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