川勝平太静岡県知事の辞任は、何を意味する? マスコミは「また」手玉に取られたか?

2024年4月6日 09:15

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 リニア新幹線計画には、東京と大阪を結ぶ大動脈が東海道本線頼みの現状に対する危機感がある。2011年3月に発生した東日本大震災は、日本に様々な教訓を残した。その中で地味に語られているのは、津波によって寸断された鉄道網の復旧問題だ。

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 東海道本線の路線は海沿いの区間が長い。国土が狭く山岳地帯が多い日本で、比較的平坦なのは海岸線を置いて他にないからだ。掘削技術が未成熟な時代に、山々を貫通して鉄路を拡げるという発想はなかった。

 ところが東海道新幹線が走る地帯は、南海トラフ地震などの警鐘が鳴らされている地域と重なる。もし大規模地震が東京から大阪の間で発生して大津波が海岸線を襲うと、東海道本線が寸断されて機能を喪失することは容易に想像できる。

 災害の規模にもよるが、運が悪ければ復旧までに10年単位の時間を要する事態も有り得るだろう。東京大阪間を結ぶ大動脈が運行不能になると、日本経済が大きなダメージを受けることは避けられない。代替の路線を山岳地域に求めるリニア新幹線は、東日本と西日本を結ぶ大動脈が、複数確保される点で大きな意義を持つ。

 2017年に、静岡県の川勝平太知事が静岡工区の着工に反対を表明した時には、「静岡にリニア新幹線の駅が設置されないからヘソを曲げた」と勘繰る向きもあったが、大方は「国家的プロジェクトだからいずれ矛を収める」と楽観的に見ていた。

 ところが川勝知事は水資源問題に解決策が示された後にも、次々と問題を掲げて反対の旗を掲げ続けた。本心を窺い知ることはできないが、傍目で見ていて「反対のための反対」と感じていた人も多かった筈だ。

 川勝知事の本意が読めないのは、静岡県がリニア新幹線建設期成会の構成メンバーで、知事自身も「リニアに反対している訳でない」と煙幕を張っていたからだ。

 川勝知事は奔放な発言でも名高い。近隣地域を腐したり、他所と比べて貶めたりする度に批判を受けては、謝罪したり弁明したりを繰り返してきた。職責の重みを感じていれば「学習」して発言も慎重になると考えるが、「内輪ではこんな話をしているのかな?」と感じさせる奔放さは変わらなかった。

 今回の職業差別発言も本音だったのだろう。本人は「発言の一部を切り取られて」と反論していたが、発言全体を何度読み直しても、職業差別以外の読み方はできないから、本心を吐露しただけだ。

 川勝知事は記者達に問題発言を追求されて、辞任を表明した訳ではない。リニア工事の先延ばしが確定して、知事としての出番が少なくなるので「辞任」を決意した。前の日に渡辺周議員にその旨を伝え、翌日マスコミの追及があったのを奇貨として辞任を表明した。マスコミをダシにして辞任した訳だ。

 発言に問題があると思っていないから、取り消しもしない。過去に給料は辞退すると言っていながら、チャッカリ受け取っていた人だから、退職金はいらないとの公約も、「規則だから」と受け取って辞任するのかもしれない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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