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NASAによるボイジャー延命、技術革新であと5年以上は稼働可能か?
ボイジャー 1 号のイメージ。(c) NASA/JPL-カリフォルニア工科大学[写真拡大]
ボイジャー1号、2号は1977年にNASAによって打ち上げられ、現在は太陽系圏外を航行しながら、貴重なデータを地球に送り続けている現役最年長の探査機だ。2023年5月時点で、1号は地球から233億km、2号は194億km離れている。
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ボイジャー2号は、2023年夏に人為的なコマンド送信ミスで地球に向けたアンテナ角度が2度ずれ、制御不能に陥ったが、NASAのエンジニアの懸命な努力により、奇跡的にリカバリーを成功させている。だが実は、1号、2号とも、開発当初の稼働想定期間はたったの5年しかなかった。
NASAのエンジニアたちは、現在もさらなるボイジャー延命策のアイデアを模索中だ。ボイジャー1号は観測機器のうちの1つが故障で稼働を停止し、5つの観測機器が稼働中のボイジャー2号に比べれば、電力の余裕がある。したがってボイジャー2号での電力延命策が現在の最重要課題だ。
2023年3月末、NASAはボイジャー2号で、電圧変動により回路が誤動作した際に作動する安全装置のために確保されていた予備電力を活用することで、延命を図る作戦にチャレンジした。NASAが電圧変動リスクを取ってこの対策を講じた理由は、電圧変動による故障確率が低いと判断したためだ。
既にこの対策以来6カ月以上が経過したが、問題は出ておらず、この対策は1号にも講じられる予定だ。NASAによれば、この対策でボイジャー2号はあと3年は稼働が可能だという。
NASAが10月に公開した情報によれば、現在は、アンテナが方向制御不能になるリスクを回避する努力が行われている。アンテナを地球方向へと向けておくための補助推進装置(スラスター)の推進剤入口チューブ内には、残留物が徐々に蓄積し、制御不能になる可能性があるのだ。
これを回避するため、アンテナ回転角度制御精度を約1度ラフにし、スラスター点火回数を減らし、残留物蓄積を最小限に抑えるプログラムに切り替えたという。これによりあと5年以上スラスター延命が期待されている。
スラスター延命策は、今後数年間でさらなる措置が講じられる可能性もある。これらの延命策が功を奏し、より遠い宇宙からの情報がキャッチされ、驚きの発見に繋がっていくことを期待したい。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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