火星は現在も地殻変動が存在か? オックスフォード大らの研究

2023年10月20日 08:48

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NASAの探査機インサイト (c) NASA/JPL-Caltech

NASAの探査機インサイト (c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 NASAの火星探査機インサイトは2018年5月に打ち上げられ、半年後の11月18日に火星に降り立ったが、残念ながら2022年12月15日を最後に地球との交信が絶たれた。インサイトへ電源供給するソーラーパネルに、吹き荒れる砂塵嵐により塵が降り積もった結果、発電が困難になったためだ。

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 だが当初2年だったミッション計画は、さらに2年間も延長して活躍した。その間に数多くのデータ収集が行われたが、このミッションの終了間際である2022年5月4日に、火星での観測史上最大規模であるマグニチュード4.7の地震(S1222a巨大地震)が観測された。

 オックスフォード大学などの国際研究チームは17日、この火星最大規模の地震の原因に関する調査結果を発表した。火星での地震の原因は多くが隕石衝突によるものだが、この地震の原因となったであろう隕石衝突クレーターをくまなく探索した結果、それらしきものは見出されず、火星の地殻変動に起因する可能性が高いという。

 研究によれば、インサイトは4年間のミッションを通じて1,300回を超える地震イベントを観測したが、その多くは地表の隕石衝突によるクレーター現象によるものであることが、これまで確認されている。

 もし隕石衝突がS1222a巨大地震の原因であれば、そのクレーターは直径約300mとなり、直径約180kmにも及ぶ爆風帯を持つことが想定される。だが震源位置付近の低解像度および中解像度の画像を包括的に分析したところ、関連する一時的な大気現象や新たな爆風帯は存在しないことが判明したという。

 まだ今回の研究は地殻変動の存在を示唆したに過ぎないが、マグニチュード4.7規模の地震を起こせるほどの地殻変動が、現在の火星に存在する可能性を示した意義は大きい。将来火星に移住した人類は、地球同様に地震リスクに備える必要があるかもしれない。隕石起因の地震なら隕石観測で予知できるが、地殻変動によるものは地球同様予知が難しくたちが悪い。

 なお今回の研究成果は、10月17日に「Geophysical Research Letters」で公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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