マイクロロボットによる地球外海洋生命探査 NASAジェット推進研究所

2023年8月31日 17:11

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SWIMミッションのイメージイラスト (c) NASA/JPL-Caltech

SWIMミッションのイメージイラスト (c) NASA/JPL-Caltech[写真拡大]

 地球上で生命が誕生したのは海洋であった。したがって、地球外生命探査においても、海洋探査は最も可能性の高い手段だ。だがこれまで、地球以外の星での海洋探査事例はない。そもそも、地球以外の星で海洋を見つけ出すことが、以前は困難だったのだ。

【こちらも】エウロパの水蒸気噴出を捉えるミッション NASAジェット推進研究所

 だが現在では、例えば木星の4大衛星(ガリレオ衛星とも呼ばれる)の1つエウロパには、氷の表層の下に液体の水が存在し、そこには海洋世界が広がっている可能性が高いことが明らかになっている。つまりエウロパは、地球外海洋生命探査対象の第1候補とも考えられているのだ。

 エウロパの海洋探査を実現させるためには、まずはじめに氷の表層を掘削し、海面にたどり着く必要がある。これを実現させるアイデアとして、NASAはSESAMEと呼ばれる「熱機械掘削ロボット」を構想している。

 SESAMIは、最大25kmにも及ぶエウロパの分厚い氷の殻を掘ることができる。だが掘削時に発生する熱がエウロパの海洋環境に影響を及ぼし、SESAME周辺の海洋をこのロボットで直接探査しても、本来得るべきありのままのエウロパ海洋環境情報は得られない。

 そこでNASAジェット推進研究所で考案されたのが、自律移動型海洋探査マイクロロボットのSWIMだ。SESAMEからたくさんのSWIMをエウロパの海洋に放出し、SESAMEによる掘削の悪影響が及ばないところで、様々なデータを収集させるというアイデアだ。

 SWIMの電力供給や情報収集は、有線ケーブル方式では機動性が損なわれるため、無線方式での電力供給と情報収集が必要となる。そのため水中で電気エネルギーを伝送するシステムや、超音波情報伝送システムも構想されている。

 生命誕生には太陽光が必須と考えられがちだが、地球上では深海の熱水噴出孔で、太陽光を必要としない生命の存在が確認されており、エウロパでも同様の環境での生命発見に期待がかかる。

 また土星の衛星エンケラドスでも、エウロパと同様の海洋や熱水噴出孔の存在の可能性が高く、今回紹介した生命探査技術がそこでも活躍できるかもしれない。宇宙海洋探査が実現できるのはもう少し先になるが、地球外海洋生命発見には大いに期待が持てそうだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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