定期周回ステーションで月への往復コストを劇的に改善  米国での研究

2023年8月15日 16:55

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 1960年代末に人類は初めて月面に到達し、50年以上の歳月が流れたが、アポロ計画以降、人類が再び月面に到達した事実はない。人類を月に送り込むのを難しくしてきたのは、膨大なコストだ。アポロ計画ではミッションごとに宇宙船は使い捨てで、アポロ計画に要した総費用は10兆円をはるかに超えていた(2005年の貨幣価値換算で1350億ドルとの数字がある)。

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 いっぽうでアポロ計画終了以降現在まで、人類は宇宙空間での長期滞在実績をかなり積み上げ、巨大な国際宇宙ステーションが長期に渡り安定的に運用できることを証明してきたのも事実だ。いずれにせよ人間を宇宙に送り込むためのコストは、地上の旅行とはけた違いにかさみ、劇的なコストダウンは最重要課題だ。

 そんな中、米イースタン・コネチカット州立大学の科学者らによって、月と地球を交互に周回する宇宙ステーションを用いた新しいコストダウンのアイデアが提案された。

 アポロ計画では、ロケット軌道は月と地球を8の字で結ぶものだったが、月と地球の間を常時往復する前提では、8の字周回軌道はエネルギーロスが多い。

 今回の提案では、エネルギーロスを最小限にするための周回モデルを数学的に考案し、様々なパターンでシミュレーションを実施。月も地球も円軌道で周回させ、適切なタイミングで地球から月、または月から地球への周回軌道に移行させる(従ってこの考え方では8の字軌道にはならない)ことが、最も効率が良いとの結論に至ったという。

 つまり、地球から月に人間を送り込む場合、ステーションが地球周回中に地球からシャトル便を送り込む。ステーションに乗り移った人間は、ステーションが月の周回軌道に移るまで滞在し、月の周回軌道から着陸船で月へ移動する。月から地球に帰還する場合には、この逆の運用をする。

 この運用で月と地球を周回するステーションのエネルギーコストは最小限になり、しかも、地球からステーション、ステーションから月、あるいは帰還時はその逆の運用での移動に要する機体コストとエネルギーコストも、最小限に抑えられることになる。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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