英語のスラング特集 (7) 「fit」と「flog」のイギリスならではの意味とは?

2023年8月6日 18:06

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 今回も前回から引き続き、非常にイギリス的なスラングに注目していく。今回取り上げる「fit」と「flog」は、一見するとふつうの英単語だが、これらの単語がイギリス英語ではどのような意味を持ち、どのような状況で使われるのかを詳しく説明しよう。

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■Fit

 「fit」は誰もが知る基本単語だが、イギリスではそれとは違う意味のスラングとしても広く使われている。その意味とは、肉体的に魅力的なこと、端的に言えば「セクシー」ということだ。

 「fit」というスラングは、19世紀なかばからスポーツの世界を中心に使われ始めたようで、もともとは体調や健康状態が良好なことを指していた。その後、「体格が良い」や「見た目が良い」など、人の外見についての肯定的な意味合いに変化していったと推測される。

 一時期は日常会話から姿を消していたこともあるが、1970年代から都市部を中心にふたたび使用されるようになり、80年代以降、イギリス全土で通用する非常にポピュラーなスラングとなった。魅力的な外見を持つ人物に対する表現として、男女関係なく日常的に使われている。

 ・She's really fit.
 (彼女は本当にセクシーだ)

 ・I met a fit guy at the gym today.
 (今日、ジムで格好いい男性に会ったよ)

■Flog

 「flog」とは「鞭打つ」という意味の動詞だが、イギリスのスラングでは「売る」を意味することもある。ただし、「sell」とまったくの同義語ではなく、「安く、素早く売りさばく」というニュアンスが含まれる。

 なぜ「鞭打つ」の「flog」がそのような意味を持つようになったのか、はっきりした由来はわかっていない。だが1つの推測として、「flog」が競走馬を鞭打って速く走らせることを指すことから、商品を素早く売りさばく様子をそれになぞらえた、というものがある。

 そのほか、軍の物資を不正に売る行為を指す言葉に由来するという説もある。

 19世紀に「flog the clock」という表現があった。直訳すれば「時計を鞭打つ」だが、要は、時計を進めて勤務時間を短縮するという不正行為を指す表現だ。そこから派生して、「flog」のみで不正行為をすること一般を指すようになり、さらに時間を経るうちに、軍の物資を不正に売る行為を特に指すようになったと考えられている。

 その後、「flog」は時間とともにその意味を広げ、「売る」という行為全般を指すようになった。「不正に」という意味合いはもはやないが、急いで安く売り飛ばすというニュアンスにかつての名残がうかがわれる。また、そのニュアンスを強調するために、しばしば「flog off」という形も用いられる。

 ・I need to flog off my old bike, it's just taking up space in the garage.
 (古い自転車をさっさと売らないと。ガレージのスペースを無駄に使っているだけだから)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

続きは: 日常会話に頻出! イギリス英語のスラング特集(8)

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