ファストリ柳井CEOの「世界1ブランドになる」シナリオと、カギの海外部門動向

2023年6月14日 08:15

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 ファーストリテイリング(東証プライム市場。以下ファストリ)。ユニクロブランドを主軸とした、世界3位のSPA(服飾製造小売業)。

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 創業者CEOの柳井正氏は5月11日、改めて「世界No1のブランドになる」と宣言を発信した。極めて具体的な形で、である。

 『我々にとって世界最高のグローバルブランドなるための実行の年である。あらゆる人々の快適な日常生活に欠かせない「服のインフラ」として、世界中の顧客から最も愛されるNo1ブランドになることを本気で目指す』。

 『今期の連結業績は売上収益2兆6800億円を見込んでいる。来期は3兆円程度となり、その先に10兆円の目標を掲げる。過去20年の成長を見ると、ほぼ10年で売上が3倍ずつ伸びてきた。次の10年で3倍以上に成長すれば、10兆円を達成できる。これまでと同じように高い目標と理想を掲げ、達成する方法を考え実行していく』。

 『我々の使命はLifeWear(究極の普段着)という、より快適で質の高い生活を実現するための「服のインフラ」を世界中の人々に提供すること。こうした理念を掲げ、実際に行動しているのは世界の中で我々しかいないと思う。世界最高水準の技術力を持つパートナーと力を合わせ、生活をより快適で豊かにするLifeWearを作り続けていく』。

 周知の通り名実ともに「世界No1ブランド」になるには、海外市場での一層の拡充が不可欠。2001年のロンドン進出以降、加速度的に展開を図ってきた。前2022年8月期末のユニクロの総店舗数は2394。うち海外部門が1585店を占める。売上収益でも1兆9289億円のうち58%余りの1兆1187億円を、海外の売上収益が占めている。この勢いを今後とも維持し続けられるのか。

 今8月期の期初計画は「15.2%増収、17.7%営業増益」。過去最高となった第2四半期開示と同時に、「16.5%増収(2兆6800億円)、21.1%営業増益(3600億円)」に上方修正された。上半期の既存店&EC売上高は前年同期比104.7%。

 中間期のユニクロ事業の売上収益は1兆2503億円。国内部門4951億円(前年同期比11.9%増)に対し海外部門は、27.3%増の7552億。総売上高の6割を超えている。

 株式市場(日経平均)の引け後にしばしば、「ファストリ1社で◎◎円押し上げ(引き下げ)云々」といった類の場況を耳にするが、ファストリの株価自体は意識していない。

 今回改めて株価動向をチェックしたが、時価は3万5000円台前半。年初来安値(1月の2万3670円)から6月の同高値3万5430円まで買われ、高値圏横這い水準。IFIS目標平均株価3万4373円。この限りはアナリスト達の見方は「目下、妥当水準」と取れるが、算出担当者11人中6名は「強気」を示しているのも事実。

 柳井氏は、10年単位の売上収益動向を口にしているが、ファストリの過去10年間の株価動向は修正済みベースで2.5倍近いパフォーマンスを残している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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