小型モーター世界1:マブチモーターの使途拡大の現状&PBR1倍復帰への姿勢

2023年5月25日 16:24

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 過日、娘と食事をした折りにマブチモーター(東証プライム)の話になった。豪州で6年ほど学んだ彼女は学校のカリキュラムで「株式投資」を体験して以来、投資に興味を持ち続けている。持論は「世界に冠たる日本企業の長期投資は、インカム・キャピタル双方で妙味大」。

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 「いまマブチモーターに興味あり」という彼女の話からマブチ話は始まった。

 「マブチの(直流)小型モーターは、世界での屈指のシェア(50%超)を誇っている。内外での自動車生産の立ち直りは、マブチにとっては好材料だろうな。とにかく車関連だけで7割以上(前12月期で74.3%)の売上高比率を占めているのだからな」と発した私に娘は、待っていましたとばかりに「確かにね。でもお父さん、マブチのモーターって自動車ばかりに使われているわけでないわよ。例えば、私も毎日のように使っている(ヘアー)ドライヤーにも使われているし・・・」と矢継ぎ早に用途先を指折り数え始めたのだった。後は彼女の独演会。

 40過ぎの娘の独演会に「苦笑い」する以外になかったが・・・久方ぶりにマブチを覗き込んで見た。こんな事実が改めて確認できた。

 ★マブチの小型モーターの入り口は、玩具や模型用のモーターだった。それまでの「ゼンマイ」仕掛けの玩具の類を、一掃してしまった。

 ★確かに使途は幅広い。<精密・事務分野>では複写機・複合機器や自販機・ATM、インクジェットプリンター等々。<医療機器>では外科用手術機器・人工呼吸器や(虫歯用)歯科治療用ハンドピースなどに。<家具・工具>ではドライヤーやバリカン、バキュームクリーナーetc。

 ★最近のマブチはAGV(無人搬送車)やAMR(自立移動型搬送ロボット)に適した移動体用モーターに、新商品開発を急ぎ食指を動かしている。

 足元の収益は、前12月期が「16.4%増収、21.6%営業減益、9.7%経常増益、20円増配135円は(配当性向61%強)」。そして今期は「10.4%の増収(1730億円)、38.6%の営業増益(150億円)、16.8%の経常減益(119億円)、135円配(73%強)」計画。

 今期予想に関しマブチでは「自動車領域では世界のインフレ加速/利上げの影響や半導体等のサプライチェーン混乱などで、回復の力強さに欠ける」「その他領域での需要はほぼ横ばい」「研究開発費増」と慎重姿勢を示しながらも、「販売数量の増加や売価・プロダクトミックス(市場関係に応じた製品・製造ラインのバランス調整による利益最大化)改善で増益要因が上回る」としている。

 ちなみに経常利益減に関しては対米ドルの予想レート:135円前提、為替差損益は見込んでいないという姿勢。

 世界的な経済潮流のど真ん中に身を置きながら好配当性向を保持している点が、外国人持ち株比率2割近くの背景であることは理解できる。

 本稿作成中の時価は3000円台終盤。予想税引き後配当利回り2.7%余。IFIS目標平均株価4175円。投資姿勢としては押し目買い利回り享受が賢明だろうが、株価材料も孕んでいる。予想PBR0.91倍。対応策を問い合わせた。こんな答えが返ってきた。

 「東証からの要請に基づき、資本コストや資本収益性の現状分析を行ったうえで、改善計画をできる限り速やかに策定・開示すべく検討・対応を進めている。企業活動の一層の効率化、企業価値の増大に向けた方向を投資家の方々にも理解いただけるようIR活動にも注力する」

 PBR倍率上昇に不可欠な純資産額は前期末で202億600万円と、着実増の動きにある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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