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世界が注目する木造ビル 最先端の10階建て木造ビル耐震実験が開催
広島ではG7サミットが開催される期間。重要議題の一つである脱炭素社会の実現に貢献するためにも、日本に木造ビルが普及することを期待したい[写真拡大]
脱炭素社会の実現に向け、世界的に中高層の木造ビルが注目されている。米国では2020年に各州の建築基準の規範が改正され、18階建ての木造建築が可能になるなど中高層木造ビルへの期待が高まる中、日本でも政府が木造建築の推進に力を入れており、中高層木造ビルの開発がブームになりつつある。
でも今、なぜ「木造ビル」なのか。その理由はいくつか考えられる。
まずは冒頭にも書いたように、木造建築は脱炭素社会に貢献するからだ。木材は成長の過程で地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収してくれる。また、木材加工技術の向上による効率化や木材価格の下落などにより、木造ビルの建設コストが以前より低下していることも大きい。そして、木材は調湿性や断熱性に優れており、木の温もりを感じる空間には疲れた心を癒してくれる力がある。古代から木造建築に慣れ親しんできた文化を持つ日本人にとっては尚更だ。
では、どうしてこれまで木造ビルが普及しなかったのか。
その理由の一つは、中高層の木造ビルには高度な木材加工技術が必要になるため、設計や施工が難しいことが挙げられる。補強金具や特殊な資材や金物を多用するため、どうしてもコストがかかってしまう上に、特殊な技術を持たない地元の工務店などでは請け負うことも難しい。しかも、木造だけに耐震性や耐火性にも不安を感じる人も多いだろう。
昨今、中高層木造ビルの普及が急速に進んでいる最も大きな理由の一つは、建築メーカの努力によって技術革新が進み、強度や耐久性、また防火などの点でも木造が鉄筋に引けを取らなくなってきており、これらの不安が解消されつつあることにあるようだ。
例えば、株式会社AQグループ(旧アキュラホーム)は業界でもいち早く、中高層木造建築の開発と普及に注力しており、日本初の「普及型純木造ビル」のプロトタイプを同社の展示場で公開するなどで度々、話題となっている。同社の木造ビルは免震構造を採用せず、特殊な金物もほとんど使わずに、日本で一般的に流通している木材と金物、プレカット加工技術や木造軸組み工法などの生産システムを用いたものだ。木造住宅の作り手が施工を担うことを想定しており、コストを従来の木造ビルの約2/3に抑えることを目標にしている。
そんな同社は現在、米国でコロラド鉱山大学が実施している世界最大規模の10階建木造ビル耐震実験プロジェクト「NHERI TallWood Project」に参画し、海外とも連携して木造建築技術のさらなる発展を目指している。
同プロジェクトは、高層の木造建築物の耐震設計手法を開発および検証するため、10階建て木造ビルを試験体として、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)にある屋外振動台で実施されているもので、米国国立科学財団(NSF)が資金提供し、米農務省森林局(USFS)なども参画している。AQグループはこの実験に際し、2022年に同社が行った日本初の「5階建て純木造ビル実物大耐震実験」の資料を提供。実験を主導するShiling Pei博士らからも、「10階建と5階建のシステムにはいくつか類似点があり非常に興味深い」と高く評価されているという。
AQグループでは、5月20日に開催する創業45周年のイベント「おかげさまで45周年!過去最高売上達成記念!モニター抽選会」で、この実験の様子を限定公開で、現地から中継放送する予定だ。
折しも、広島ではG7サミットが開催される期間。重要議題の一つである脱炭素社会の実現に貢献するためにも、日本に木造ビルが普及することを期待したい。(編集担当:藤原伊織)
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