ハウス食品と資本業務提携した農業総研の狙いは、事業黒字化の礎強化

2023年4月17日 16:13

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農業総研が1月に新たに設けた埼玉県蓮田市の新集荷所(画像: 農業総合研究所の発表資料より)

農業総研が1月に新たに設けた埼玉県蓮田市の新集荷所(画像: 農業総合研究所の発表資料より)[写真拡大]

 4月13日、ハウス食品グループ(東証プライム、以下、ハウス食品)が『農業総合研究所(東証グロース、以下、農業総研)との資本業務提携に関するお知らせ』を発信した。ハウス食品は農業総研の約2%の株式を、第2位大株主:プレンティーから総額2億1100万円で取得する予定(17日に出資実施で同意した)という内容。

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 ハウス食品はその目的を「成長領域と捉えている:付加価値野菜系バリューチェーンで、スマイルボール(辛みの無いタマネギ)の国内外での事業化をはじめ、グループ内外の共創によるビジネスモデルの可能性の追求のため」としている。

 が、このニュースに接した際に、私は「農業総研の事業展開の今後にプラス材料」という感想がまず頭に浮かんだ。

 農業総研は2021年8月期、22年8月期に「1億9300万円、1億2300万円の営業損失」に陥っている。そして今8月期は「売上高60億円~65億円、営業利益2000万円~5000万円」計画で立ち上がり、第2四半期は「27億6900万円、3600万円」で通過。2月に改定作業を行った四季報:春号は、売上高は60億円も営業利益予想を9000万円に独自増額した。

 農業総研の黒字復活・収益好転基調の背景は、22年8月期の決算資料にも読み取ることができる。「大型生産者との取引拡大による農家での直売事業拡充に加え、スーパー等の通常の青果市場で販売する産直卸事業を推進した。富山中央青果との資本業務提携の発表・実施で、取引額は前事業年度の約4倍に拡大した。また国分グループ本社を割当先とする約1億円の第三者割当増資を行い、物流・販路拡大・販促での関係強化で産直卸事業の積極化を計った」―といった内容が記されている。

 こうした取り組みは今期の第2四半期、こんな現状にも反映している。産直卸事業を展開するスーパー等が前年同期比37店舗増の1971。登録済み生産者数、92人増の1万350名。

 ハウス食品の発信資料の表現を借りれば、農業総研は「日本及び世界から農業が無くならない仕組みを構築することを目的とした産直流通のリーディングカンパニー」。その立ち位置を維持し強化していくためには、「生産者数の拡大」「産直卸機会の増強」が不可欠。ハウス食品との今回の一件は、後者の強化策。

 農業総研ではこうした流れを「スーパー以外の販路拡大を視野にドラッグストアでの販売に注力。駅ナカの実験店舗も」と明らかにしている。

 年来の株価動向は年初の安値:312円から同高値519円をつけ揉みあい。株価は農業総研の礎強化を、前向きに見守っているとも見えるが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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