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室温でCO2からメタノールを合成する触媒開発 気候変動対策などに期待 東工大
(a)異なるPd/Mo比で合成した触媒のXRDパターン。(b)hcp-PdMoの電子顕微鏡による原子像。(c)大気に暴露の前後の触媒のXRD比較。(画像:東京工業大学の発表資料より)[写真拡大]
東京工業大学は11日、室温でCO2からメタノールを合成する触媒の開発に成功したと発表した。メタノールは、化学工業における基幹物質で、プラスチック、合成繊維、医薬品、農薬などさまざまな化学製品の原料となる。今回の研究成果は、資源枯渇や気候変動などの対策に資するものという。
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■メタノールとカーボンニュートラル
政府は2050年までにCO2の排出を実質0にするカーボンニュートラルを実現することを掲げているが、メタノールはこのカーボンニュートラルの実現において重要な役割を演じることが期待されている。
その1つは、カーボンリサイクルにおける役割だ。カーボンリサイクルとは、CO2を資源として捉え、工場や発電所などから排出されるCO2を回収し、有用化成品に変換して、リサイクルする取り組みだ。メタノールはこの有用化学品の1つとして期待されている。
そしてもう1つは、再生可能エネルギーの活用における役割だ。再生可能エネルギーによってつくられた水素をメタノールに変換して、貯蔵・運搬などすることが期待されている。
だがこれまで、CO2からメタノールを合成する触媒については、室温で機能するものはほとんど報告例がなく、さらに化学的耐久性の低さや合成プロセスの複雑さなど、さまざまな課題が山積していた。
■室温でCO2からメタノールを合成する触媒開発
研究グループが今回開発に成功した触媒は、パラジウム(Pd)とモリブデン(Mo)からなるものだ(hcp-PdMo/Mo2N触媒)。前駆体をアルコールで処理するという簡便な処理で、合成できるという。
CO2を分解し、水素と反応させることでメタノールを合成するが、大気中で高い化学的耐久性を示し、大気圧下において60度以上でメタノールの合成反応が確認された。
さらに、加圧(0.9MPa)すると、室温(25度)でも50時間以上に渡って、断続的なメタノールの合成反応が確認された。
ただ本触媒はまだ効率が十分ではなく、研究グループでは今後、実用化に向けてさらなる効率の向上を図っていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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