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ムゲンエステート、収益性を重視した販売活動により、3Qの売上総利益率は25.2%と過去最高を達成
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本日のご説明内容
藤田進一氏(以下、藤田):ムゲンエステート代表取締役社長の藤田でございます。本日は、会社概要、事業内容、中古不動産市場、第2次中期経営計画と今期の取り組み状況の順にお話しします。
会社概要及び沿革
藤田:会社概要です。当社は1990年5月、ちょうどバブルが崩壊した頃に創業しました。代表取締役会長は、創業者でもある藤田進です。私、藤田進一が2代目の社長を務めています。資本金は25億5,200万円で、決算期は12月です。先ほど第3四半期の決算を行い、今、佳境に入っています。
社員数は連結で283名です。買取再販の営業職の社員は、100名近くいます。本社は東京都の大手町にあり、横浜に支店が1店、営業所が5ヶ所あります。また、子会社は2社あり、株式会社フジホームではリノベーションや賃貸の管理を行っており、株式会社ムゲンファンディングではクラウドファンディングを行っています。
企業理念
藤田:当社は、2022年1月に企業理念を刷新しました。モットーの「夢現(MUGEN)」の部分は変えていませんが、「夢を現実に」と短くしました。社名の由来でもある「夢は幻で終わらせるのではなく、現実にさせなければいけない」という意味の社是になっています。
ミッションには「不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと夢に挑戦する」を掲げています。中古不動産を再生することで、違った面での価値を創って、それをすべての人に提供していきたいと考えています。そして「夢を現実に」を実行するために、挑戦していきたいと思います。
バリューには、「速さを追求」「あくなき挑戦」「多様な連携」「先を見通す」「貫く責任」を掲げています。これらは「当社の社員がどのように考えて行動するか」を基準としており、会議場では最初にみんなでクレドのように唱和して、きちんと理念を浸透させるようにしています。
事業の内容① 買取再販事業
藤田:事業内容についてご説明します。当社の主な事業は、買取再販事業です。首都圏1都3県の中古不動産を買取し、再販しています。価格は、数百万円のワンルームマンションから、20億円規模の1棟のマンションやビルなどを中心に、30億円くらいのものまで扱っています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社では投資用と居住用の不動産を、数百万円から20億円程度という幅広い価格帯で取り扱っています。この環境は、現在もあまり変わっていないのでしょうか?
藤田:変化はありませんが、当社の場合は、直接売主を見つけるのではなく、東急リバブルや三井のリハウスなどの仲介会社を通して物件を取り扱います。したがって、そこで扱っている物件が小さかったり大きかったりすることがあります。それらを全部取り扱うことでノウハウが溜まってきます。ですので、いろいろな物件が扱えることが当社の特徴になっています。
坂本:買取再販事業では、再販する時にリフォームすると思います。私も、自分でマンションを購入してリノベーションを行って貸し出しているのですが、最近「壁紙がめちゃくちゃ高いな」と驚くことがありました。やはり資材価格は非常に上昇していますか?
藤田:おっしゃるとおり、2倍、3倍くらいになっています。
坂本:御社ではそのような価格上昇をカバーできていますか? また、仕入は順調でしょうか?
藤田:当社は資材を大量に発注することで価格を安くしていますが、やはり仕入の値段は上昇しています。その分、相場が上がっている中で、物件の価格を適正な値段で安く買うように努力しています。そのおかげで、粗利率はおよそ25.2パーセント取れており、きちんとカバーできていると思っています。
物件の数についても、営業所を5ヶ所作り、地元に根を張って、いろいろな物件を見つけていく体制を構築しています。仕入も順調に積み上がり、在庫も確保できている状態です。
事業の内容② 成長事業
藤田:当社の主な事業である買取再販事業から派生して、投資用の物件の不動産賃貸事業を行っています。また、いかに長く使える物件を作るかを考え、新築の建物も作っています。
成長事業として、不動産開発事業と不動産特定共同事業にも進出しています。不動産特定共同事業では、1口100万円からの不動産小口化商品を販売しています。通常、投資用不動産では1,000万円、2,000万円と額が大きくなりますが、小口化することによってお客さまの層を増やしています。
不動産の購入者層
藤田:不動産の購入者層です。当社の商品は、投資用不動産と居住用不動産の2種類となっています。投資用不動産は、日本国内の事業法人も多いのですが、アジア、中国を中心とした海外の方にもニーズがあります。
しかし、新型コロナウイルスによる入国制限で、なかなか来日することができず、買えない状態が続いており、その分の需要が減っています。ただし、国内の投資家の需要はかなり強いといえます。十分に資金がある方が求められていることもあり、その部分はかなり強いと思っています。
そして、居住用不動産に関しては、新型コロナウイルスによって在宅勤務する方が増えてきた影響で、少し都心から離れたところで、近くに公園や緑がある物件を買う方が増えています。
坂本:入国制限などの影響で海外投資家の需要が戻っていないというお話でしたが、オンラインなどで商談を行うことはありますか?
藤田:データに関しては、最初にオンラインで見ることができます。しかし当社の場合、5億円から10億円という規模の大きい物件を扱っているため、必ず現物をチェックしに来ます。その中には代理人を立てる方もいます。
坂本:居住用不動産では、都心以外への居住ニーズが高まっているとのお話でした。これまでは東京・埼玉・千葉を中心に扱われていましたが、ニーズの高まりにあわせ、郊外の在庫を増やしましたか?
藤田:そうですね。沿線的に、ターミナル駅以外を深耕していっています。例えば北千住や赤羽など、「この土地であればいろいろなお客さまがいる」と思われる場所に営業所を作り、在庫を増やしています。
不動産買取再販事業の流れ
藤田:不動産買取再販事業の流れです。当社の場合、お客さまから仲介業者を通して不動産を購入し、自社で企画を行っています。年間500件から600件程度取り扱っており、長年培ったノウハウがあります。
例えば、「この物件は2LDKを3LDKにしたほうがよい」「3LDKを2LDKにしたほうがよい」などと企画し、子会社のフジホームの施工管理のもと、協力会社が工事を行います。そして、できあがったものを、再び仲介業者を通して販売していきます。
坂本:御社では買取から販売まで一貫してビジネスを行っています。スライドに記載のとおり、「仕入から販売までの短期化」がメリットとしてあると思いますが、それ以外のメリットを教えてください。
藤田:当社では、仕入と販売の担当を分けておらず、自分が仕入れたものを必ず自分で販売します。そのため、「販売時のことを考えて、そこから利益はこれくらい、工事代がこれくらい要るから、仕入はこれくらい」と考えます。自分で責任を持って取り組むことができることが当社の強みとなっています。
不動産買取再販事業の収益モデル
藤田:不動産買取再販事業の収益モデルです。1から作る居住用不動産では、仕入れ後に、ユニットバスやシステムキッチンの内装工事を行い、バリューアップした後、売却により収入を得られます。
投資用不動産でも、内装工事で価値を上げて物件を売却することによる収入(キャピタル・ゲイン)はあります。ただし、居住用不動産とは異なり、「利回りの追求」の観点が必要です。
そのため、よい内装をして、よいテナントに入ってもらい、投資の利回りを上げるバリューアップを行います。さらに、スライド中央に記載している②のとおり、「リーシング・物件管理」を行うことによって、価値を上げて売却する部分があります。
つまり投資用不動産では、キャピタル・ゲインと、売却するまでの間に入る家賃収入(インカム・ゲイン)の2つのゲインが入るビジネスモデルとなっています。
ビジネスの特色① 営業体制
藤田:ビジネスの特色の1つ目は、営業体制です。先ほどもご説明したとおり、営業担当者が1人で仕入から販売まで行います。販売した後の利益に対して賞与が発生しますが、万が一マイナスになった場合は、その営業担当者にもペナルティがかかります。
また、社内金利をかけているため、早く売ることによって利益が上がり、その分営業担当者の賞与も上がるシステムです。それを1件1件積み上げることによって、たくさんの利益を生む体制になっています。
松浦千佳氏(以下、松浦):やる気になりそうですね。
藤田:そうですね。ただ、厳しい世界のため、たまに失敗もあります。失敗した場合には、株と同じ考え方で、半年から1年くらいで一度清算します。そこでマイナスを確定させて、「また違う物件でがんばろう」とモチベーションを持ち直しています。
さらに、そのような物件を販売する専任の部隊も作っています。実は、担当を変えると意外にもけっこう売れることがあります。
松浦:おもしろいですね。
藤田:発想が変ってくるのかもしれません。そのような流れで売却が進んでいきます。
ビジネスの特色② 幅広いアセットタイプ
藤田:ビジネスの特色の2つ目は、幅広いアセットタイプです。当社では、仲介業者を通して物件を購入しています。そのため、仲介会社に売主が自分の家を売ったり、相続で受け継いだ物件を販売したりと、いろいろなニーズがあります。
当社であれば、区分のマンションや1棟のマンション、ビルなど、何でも扱っています。また、とりあえず当社に出してもらえば、いろいろな値段が出ます。仲介会社も、いろいろな会社に持っていくよりも、1ヶ所で高い値段で買ってもらうほうが、仕事が一番早く終わります。また、売主の「1回で済ませたい」というニーズにも合致します。
ノウハウはかなり難しいですが、いろいろな物件を買うことが可能になっています。それにより、今年も物件をどんどん購入し、これからの準備を行っている状態です。
坂本:スライド右側の仕入実績と計画のグラフでは、居住用不動産と投資用不動産が多くなっています。一番上のグレーの部分の「長期優良資産」はどのようなものですか?
藤田:普通の会社では固定資産にあたります。当社でも今後の利回りの上昇を見込み、「内装に1年以上かかる代わりに価値がものすごく上がる」という物件などを仕込み、固定資産として持っています。
現状は、仕入の相場がかなり上がっている影響で、なかなか計画どおりに進んでおらず、商品として購入している状態の物件が多くなっています。状況が変わってくれば、無理せずに本当によいものだけを購入し、長期優良資産を増やしていきます。
ビジネスの特色③ 首都圏に特化した事業展開
藤田:ビジネスの特色の3つ目は、首都圏に特化した事業展開です。当社のグループの情報力を活用するために、首都圏エリアのすべての中古不動産を網羅するために、5ヶ所の営業所を作りました。
これにより、地元のお客さまのところに行ってすぐに対応し、いろいろな物件を見つけられる状態を目指しています。その結果、かなり多くの物件を仕入れられるようになりました。
坂本:先ほども5つの営業所を拠点にエリアを深耕していくというお話がありました。首都圏の主要なエリアはすでに押さえられていると思うのですが、1都3県以外に進出する考えはありますか?
藤田:今のところ、具体的にはありません。もともとは、「オリンピック以降は相場が下がるだろう」と言われていたこともあり、大阪への進出など、いろいろなことを考えていました。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり、今はこの地域できちんと深く根ざすことを考えています。
また、進出する際は、人員を増やし、部長・課長といった管理職になる人材も育てなければなりません。ですので、今はそのような部分を蓄えている状態です。
首都圏中古不動産流通市場の動向
藤田:中古不動産市場についてです。中古不動産の流通量はどんどん伸びています。今、建築資材の高騰やウッドショックによる木材価格の高騰があり、新築がなかなか作りづらい状況になっています。そのため、中古市場の規模が拡大しています。
首都圏マンション市場の動向 中古 vs. 新築
藤田:マンション市場の動向を見ると、2018年が転換期となり、新築マンションの供給戸数が減っている一方で、グラフでは水色で示しているように、中古マンションの成約件数がどんどん増えています。在庫は1年経てばすべて中古になるため、中古マンションの数が増えているということです。
第2次中期経営計画 基本方針と重点施策
藤田:第2次中期経営計画と今期の取り組み状況です。第2次中期経営計画は2022年から始まりました。その基本方針として、スライドに記載の4つを掲げています。
事業戦略として、1つ目に「事業拡大に向けた収益基盤の強化」、2つ目に「収益機会を捉えるネットワークの構築」を挙げています。主力事業を拡大しながら、成長事業も拡大していきます。ただし、売上を伸ばすだけではなく、サステナビリティの部分もきちんと考え、それをもとに事業を行っていこうと考えています。
そして、それを支える経営基盤の強化として、人材の採用・拡大と育成や、ガバナンスの強化に取り組みます。やはり人材が不足しているため、その部分をDXでどのようにフォローしていくかが重要になると思っています。
第2次中期経営計画 連結数値目標
藤田:連結の数値目標として、2024年に営業利益率を9.4パーセントに引き上げることを掲げています。1件1件の利益を大きくしていくことによって、利益をどんどんと積み重ねていくことが目標です。
2022年12月期の取り組み状況 <不動産買取再販事業>
藤田:2022年12月期の取り組み状況です。先ほどもご説明したとおり、店舗ネットワークを増やしていきます。スライドの左下に記載していますが、現在は横浜支店がある神奈川・城南エリアをもう少し深堀りしていきたいと思っています。
そして、スライドの右側にはVRやバーチャルインテリアについて記載しています。今、生活はどんどんと変わってきており、仕事が終わってから家で物件を探せるようになってきています。
そのような時にVRがあると、物件内を確認しやすく、実際に現地に行く回数を減らして物件を見つけることができます。現在、VRやバーチャルインテリアの会社に投資し、そちらを強化していっています。
2022年12月期の取り組み状況 <不動産開発事業/不動産特定共同事業>
藤田:不動産開発事業では、2022年に5棟を竣工しました。現在は、それらをどんどん販売していく状態になっています。
不動産特定共同事業では、第3弾の商品となる世田谷のワンルームマンションを、年内に完売するために、第3期の売り出しを行っています。
坂本:不動産開発事業について、開発場所が錦糸町・浅草・大島・馬喰町・上野と、東京の東側に固まっています。これには、御社の得意な部分であるなど、何か理由があるのでしょうか? あるいは土地価格や物件価格など、利回りの関係で取得しやすいのでしょうか?
藤田:たまたま東側に偏った状態で、今は西側にも作っており、近々公開できると思います。よい土地があった場合には、東京・千葉など場所を問わず取得していっています。
坂本:開発が進めば投資家に販売するのですね。このような不動産が、だいたい5億円や20億円といった価格になるのでしょうか?
藤田:そのとおりです。今売り出しているものはそこまで大きな規模ではありませんが、少しずつ大きくしていきます。
坂本:不動産特定共同事業は、不動産の小口化だと思います。こちらはどのような方が購入しているのでしょうか?
藤田:こちらは相続対策で買われる方がけっこう多くいます。例えば、1,000万円で現物の不動産を買うと、相続時にお子さまが2人いると分けることができません。そのような場合は、どちらかに物件を渡し、他方に現金で渡すこともあります。しかし、不動産特定共同事業法により、1口100万円のものを10口・1,000万円分買うと、500万円ずつ分けて相続することができます。
また、こちらは不動産収入になるため、問題がない範囲で評価額を下げることも可能です。利回りもよく、預金で渡すよりもお金が入るかたちで渡せるため、よい方法ではないかと思います。
2022年12月期の取り組み <人材の採用と育成>
藤田:人材の採用と育成です。当社は今、採用をかなり積極的に行っています。新卒採用はもちろん、中途採用も行った結果、目標の267名に対し、現在283名を採用できています。ただ、スライドの中央にも記載しているとおり、物件の数を増やすためには、施工管理や賃貸管理などを行い、現場を守ってくれる人材を増やさなければなりません。そのため、付随事業もきちんと伸ばせるように、営業人材以外の採用も行っています。
そして、採用後の育成がやはり難しい部分となります。ですので、専門の部署を作り、新卒や中途で未経験の方を一定のレベルまで引き上げていっています。
また、どうしても不動産業というと、お金儲けのイメージが強いと思います。そこで、「なぜこのような仕事をするか」をきちんと理解してもらい、その上で従業員も会社も伸びる体制を目指すためにも、従業員のエンゲージメントの向上は重要だと考えています。
坂本:採用における新卒と中途の割合を教えてください。
藤田:今は新卒が2割、中途が8割くらいです。
坂本:営業職の方を中心に採用されていますか?
藤田:そうですね。中途採用者のうち、営業人材が6割くらいで、あとの2割が賃貸管理・工事、その他の間接部門などの人材です。人数が増えてくると、人事や総務も必要になるため、基本的には3対1くらいで「営業が強い会社」というイメージで採用しています。
坂本:スライドに記載している「教育プログラム」とはどのようなものでしょうか?
藤田:今までは人数が少なく、あまり力を入れてこなかった部分になります。階層別に、1年目・2年目・3年目の社員向けのプログラムや、4年目・5年目の係長クラスの方が課長になるためのマネジメントプログラムなどがあります。
また、営業部では不動産の知識を身につけるためのプログラムや、工事の資格を取るための専門的な部分についても育成を行っています。その他には、上場会社ということで、コンプライアンスなどに関する研修もかなり増やしていく予定で、多くの費用がかかる見込みです。
2022年12月期の取り組み <株主還元:配当・自己株式取得>
藤田:株主還元です。第2次中計期間中は配当性向30パーセント以上を目標としています。自己株の取得はスライドに記載のとおりです。
坂本:配当性向を引き上げ、株主還元を強めるということですが、自社株買いを行った年も、総還元性向ではなく、配当性向は30パーセントを目安とするイメージでしょうか?
藤田:そのとおりです。配当性向は30パーセントを維持し、大きく利益が出た時にはポイントで適度に配当していきます。
2022年12月期の取り組み <株主還元:株主優待>
藤田:株主優待としては、QUOカードを提供しています。
2022年12月期の取り組み <サステナビリティ>
藤田:当社はプライム市場にいるため、サステナビリティについてもきちんと考えていこうと考え、2022年7月14日にサステナビリティ委員会を設置しました。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のプログラムに合ったものに取り組んでいきます。
人材開発については、「伊藤レポート3.0」にも記載がある、人的資本の経営を検討し、現在進めています。
2022年度12月期3Q実績
藤田:2022年度12月期第3四半期の実績はスライドのとおりです。売上の進捗率はやや低くなっていますが、収益性を重要視し、居住用の不動産をどんどんと回転させていきます。また、投資用不動産はグロスで5パーセントから6パーセントの利回りを持っています。ですので、安売りはせず、利益を取れるものや古いものはきちんと売却しています。
その結果、スライド右側のグラフのように、売上総利益率は上場来最高の25.2パーセントとなっています。今後も利益率を保ちつつ、売上も上げていきたいと考えています。
2023年に向けて
藤田:2023年に向けた順調な仕入れ活動により、在庫を前期末より143億円増やしました。また、在庫に投資しつつ、人材にも投資し、早期の戦力化を推進していきます。これによって、利益も伴ってくるのではないかと考えています。
坂本:成長に向けて仕入れが非常に大事だと思っていますが、御社の主力である投資用不動産が直近1年くらいは横ばいになっています。この要因として、ライバルが増えているのか、あるいは無理せず利益率が低い物件は手がけないようにしているために増えないのか、実際の背景を教えてください。
藤田:当社は創業以来、投資用不動産は利回りがだいたい5パーセント・6パーセントと高いものを扱っています。銀座などの利回りが1パーセントや2パーセントのものも場合によっては扱いますが、基本的には金利が上昇した時に負けてしまうような物件は扱っていません。
そのため、利回りが5パーセントや6パーセントになる物件を見つけた時に購入し、無理して買うことはありません。ただ、今は営業所を増やしているため、居住用不動産を地道に多く買いながら、利益を貯めていくことに注力しています。
坂本:物件によると思いますが、投資用不動産と居住用不動産の利益率はどちらが高いのでしょうか?
藤田:投資用不動産のほうが多いですが、居住用も物件によります。当社では、居住用不動産は2,000万円や3,000万円の物件ではそれほど利益を取れませんが、5億円程度の戸建のコンクリート造(RC)の物件も多少扱っており、そのような物件は内装によって利幅が大きくなることがあります。
IR・SRサイトのご紹介
藤田:当社はIRサイトに力を入れており、2021年のIRサイト総合ランキングでは銅賞を受賞するなど、優良なサイトとなっています。ぜひみなさまにも見ていただければと思います。
質疑応答:在庫のリスクについて
坂本:在庫について、買取再販事業を含む、いろいろなお話がありましたが、「在庫のリスクはないのでしょうか?」という質問です。
1人の方が物件の仕入から販売まで一貫して行っているというお話でしたが、御社は在庫リスクに関して非常に気をつけているとうかがっています。イメージしやすいように、もう少し詳しく教えていただけますか?
藤田:在庫リスクは、みなさまが非常に気にされているとおり、当社でも大変気にしています。物件を買う際に大事にしている「買取り12ヶ条」というものがあり、「眺望が悪かったら、値段は低く買う」など、いろいろな項目があります。
それを営業担当が考えていく際に担当が1人だと、やはり意見が固まってしまいます。そのため、上司や課長や部長などが価格帯や物件の種類によって、見る人を変えていきます。大きい物件に関しては、私や会長が見に行って購入するか決めるというシステムを実施しています。
坂本:藤田さんもけっこう見に行かれるのですか?
藤田:そうですね。見に行くといろいろな意見が出ます。我々が「だめだ」と思った物件でも、逆に下の人たちが言うと通りやすいことや、部長が「だめだ」と言っても、上が「これはいけるよ」と判断することなどがあります。物件にはいろいろな魅力があるため、そのあたりの多様性をかなり拾うようにしています。
また、社内金利というものを付けており、早く販売したほうが利益が多くなるため、賞与も大きくなるように設定しています。そのあたりのチェック機能が働いていると思います。
坂本:実際には無限に借入し、無限に買えるわけではありません。在庫がきちんと回転しているほうが、次の物件を買いに行けるということですね。
藤田:おっしゃるとおりです。借入金の限度もあります。
質疑応答:新卒社員の定着率について
松浦:「新卒社員の定着率を教えてください」という質問です。
藤田:今年は離職率がゼロになっています。昨年は1人くらいだったと思います。
坂本:新卒社員のほとんどが残っているということですね。
藤田:そうですね。3年目からは多少増えてくると思います。全体の離職率は、12パーセント、13パーセントくらいです。ただ、今年から理念をきちんと作ったことによって、300人近くいる社員の中から、違う考え方の社員がどうしても出てきます。残念ですが、そのような方は退職すると思います。
ただし、同じ業界で仕事する方が多いため、仲介業に転職し、当社と取引することなどはあります。実は不動産業界は、ぐるぐると人材が回る世界だと言われています。
坂本:そのわりには、離職率が10パーセント台前半というのは非常に低いと思います。
藤田:そうですね。一度辞めた方がまた戻ることもよくあります。
松浦:寛大ですね。
藤田:また、当社には紹介制度があり、社員の紹介で入ってくる人材が多くいます。紹介した方にはインセンティブを少し出しています。そうすると、実際に働いている人が、よいところと悪いところを事前にきちんと伝えてくれますので、悪いところについてもと理解されていると、離職が少なくなります。
坂本:カルチャーの理解が早いということですね。
松浦:新卒の方を採用するときは、どのようなところを見ていますか?
藤田:今は協調性などを見ています。お金もたしかに大事ですが、我々は中古の不動産を提供しているため、「ほかの人のために何をしたいか?」「それをもって世の中のために何かできることはあるか?」ということを考えられる人を採用するようにしています。なかなか難しいですが、今がんばっていろいろな策を練っています。
坂本:だいたい新卒の方はすぐに辞めるパターンが多いですが、最初の1年、2年で辞める方が少なかったのは、非常に素晴らしいことだと思います。「丁寧に教えている」など、なにか理由はありますか?
藤田:当社は中途の方が非常に多い文化があり、中途で入ってきた方が先輩にやさしく教えてもらったことが企業の風土になって、その方もまた新しく入ってきた方々に「やさしく教えなければ」と意識する部分があります。そのような文化がよいのだと思います。
ただ、その負荷が先輩になった方にかかりすぎてはいけません。負荷を分散させるために、教育課のようなカリキュラムを作り、ある部分はそこで行っています。来年以降も新卒を非常に多く採用する予定で、少しずつ変えているところです。
質疑応答:競合について
松浦:「スター・マイカやカチタスが競合になるのでしょうか?」という質問です。
藤田:おっしゃるとおり、住まいを販売している会社になるため、居住用不動産に関しては競合となります。スター・マイカはマンションが多く、本当の競合になると思います。カチタスの場合は、戸建が主で、地方が中心となっています。マイプレイスという子会社は、マンションでバッティングする部分はありますが、それほど競合ではありません。
実は、当社が1都3県を中心に取り組んでいる意図はそこにあります。パイが大きいため、競合が多くてもうまく回ります。また、バッティングしないように、当社では高額な何億円もする物件も扱うなど、すみ分けをきちんと行っています。
質疑応答:売上の進捗が低い理由について
松浦:「スライド27ページについて、売上の進捗が低いことには、どのような理由があるのでしょうか? 巻き返しの策など考えはありますか?」という質問です。
藤田:当社は、売上よりも利益をどのように取るかを考えています。居住用不動産の場合は、空のままでは持っているだけでは利益が発生せず、陳腐化するだけです。そのため、在庫を早く回転させて利益をつくります。
また、スライドには載せていませんが、投資用不動産に関しては、当社の借入方法が少し変わっています。商品としての短期借入ではなく、長期借入金を選択しています。平均は4年以上で、5年や10年の契約も組んでいます。その分のインカム・ゲインをある程度考えて販売しており、安い金額では売っていません。
その結果、最終利益は25.2パーセントになり、今もきちんと進んでいます。つまり、売上至上主義ではなく、利益をきちんと取ることを中心に取り組んでいます。それで売上も上がっていけば、プラスアルファになると思っています。
質疑応答:今後の成長について
松浦:「2016年や2017年のような売上規模の成長は、今後期待できるでしょうか?」という質問です。
藤田:やはりそこを目指していかないといけない部分はあります。ただ、薄利多売は問題だと思います。今は営業所と営業職を増やしているため、その方々が育ってくれば、利益をつけながら、今度は投資用の大きい物件を扱っていくことができます。
質疑応答:リフォームの子会社について
坂本:御社は買取再販に取り組んでおり、リフォームを実施することが非常に多いと思います。すでに自社で子会社を抱えているのか、それとも外部に委託する場合もあるのかについて教えてください。
藤田:当社の場合、フジホームという子会社で施工管理を行っています。その上で、協力会社に施行してもらい、材料自体は当社で大量発注しています。これは分離発注という方式になります。工務店にすべて任せる会社もありますが、当社の場合は、物件によって両方を使っています。
坂本:施主施工の場合は、施主が壁紙などの材料を発注するのでしょうか?
藤田:施主が発注すると、材料の値段が2倍、3倍になりますね。
坂本:この前、私もマンションを買って、壁紙を貼り替えたのですが、値段が非常に高くて驚きました。最近は壁紙の値段が2倍くらいになっていますね。
藤田:化学製品ですので、原材料が非常に高くなっています。
坂本:予算の都合で実施できない工事がいくつかありました。
松浦:坂本さんのお悩みも出てきましたね。
藤田:給湯器や半導体の問題がかなり落ち着いてきたことはよかったです。当社では築10年から20年の物件を扱うため、「きれいな新しいものに交換して提供したい」という想いもあります。そのため、本当に困りました。
松浦:流通量は徐々に戻ってきつつありますか?
坂本:だいぶ戻ってきましたね。最近は給湯器も届き、助かりました。
藤田:特殊品以外は、だいぶ出てきたため、注意して仕入を行っています。
質疑応答:VRによる物件案内について
坂本:スライド20ページに記載がありますが、VRなどを使って物件の中が見られるというかたちは、今風だと思います。こちらに関して、御社が直接売っている物件を見に来るために作っているのでしょうか? また、VRの使い方について、どこでこれを見せているのかを教えていただけたらと思います。
藤田:販売図面に載せて、QRコードで簡単に見られるようにしています。仲介業者が当社の物件を紹介する際には、「ムゲンさんはこうですよ」というかたちで使用します。当社の場合は直接販売してしまうと、仲介業者を抜いてしまうことになるため、それは行わないように気をつけています。
こちらはカラーアンドデコやスペースリーといった会社にお願いして作ってもらっています。現物と同じサイズで入っているため、家具の購入も検討でき、「思ったより小さいね」「大きいね」とイメージしやすくなります。
坂本:販売しているところのサポートですね。このような手助けによって、コロナ禍の売れ行きは大きく伸びましたか?
藤田:そうですね。現場に行けないため、これがなければ逆に見てもらえませんでした。マンション側も「ほかの人は来ないでください」というのが当然です。そのため、いかに販売していけるかを検討した結果です。
質疑応答:エリアについて
坂本:首都圏でしばらく取り組んでいくというお話でしたが、エリアをさらに深耕させていくことはあるのでしょうか? 上のほうにもう少し支店を作る予定があるのか、それともこのパターンで進めていく予定なのでしょうか?
藤田:空いている部分が、何ヶ所かあると把握しており、そのようなところにどのように取り組むかになります。あとは、人口動態と沿線にどのくらいの方が住んでいて、マンションの比率がどのくらいかも見ます。当社の場合は、戸建をほとんど扱っていません。
坂本:マンションが建っているところとなると、東京か神奈川でしょうか?
藤田:そうですね。横浜支店が横浜駅にあるため、その周りが多少手薄になっています。また、より内陸側の厚木や橋本などは、リニアモーターカーの関係でよい場所といえます。少し離れた地域にも、よい場所はあります。
ただ、営業だけで行っても工事の問題があるため、工事会社も一緒に行かなければなりません。千葉の業者に「橋を3つ渡って」と依頼するのは、なかなかつらいことです。ですので、セットで開拓していくほうがよいと思っています。
質疑応答:販売期間について
坂本:不動産特定共同事業が最近非常に盛り上がっています。他社の例では「売り出すとすぐさま売り切れます」というくらい非常に人気で、おもしろい事業だと思います。
御社は期間が10年と意外と長めだと思いますが、そのほうがニーズがあり、安定しているからでしょうか?
藤田:利回り商品として買う方もいますが、相続として考えた時などは、期間を長めにしておかなければなりません。場合によっては短期の5年くらいでよい額で売れる場合には、違うものを提供するということもあり得ると思います。
坂本:ほかに買いたいという人がいたら、御社が仲介するということですね。
藤田:そのようなこともできます。今は、取引先をどんどんと増やすことが重要だと思っています。数をあまり増やさずに、お知らせしていく段階です。件数自体はまだ追っていません。
また、説明と契約は直接当社が行いますが、税理士や証券会社からお客さまを紹介してもらうことが多いです。
坂本:集金も兼ねてでしょうか?
藤田:はい。
坂本:法的にいろいろあると思いますが、御社が直接Webサイトで販売することも考えていますか?
藤田:そうですね。3号や4号など、いろいろな部分を今検討しています。
質疑応答:シェアハウスについて
松浦:「最近だと、シェアハウスのような活用も多くなっていると感じています。居住用だけではなく、そのような用途の物件も扱うのでしょうか?」というご質問です。
藤田:今、製造業の職人をたくさん抱えている会社では寮の空きがありません。また、大企業では食堂付きの寮などを売却しているところが多くなっています。ですので、中小企業ではシェアハウスというよりも、寮のような用途はあるかもしれません。
坂本:ニーズは高いということでしょうか?
藤田:一時期は、いろいろなシェアハウスの問題があり、最近は新型コロナウイルスの問題もあったため、そのようなお話がまとまるのは、今はなかなか難しいのではないかと思います。もちろん、きちんと運営されている会社もありますが、当社は寮にせず、空のままできれいな物件を販売し、使っていただくほうがよいと思っています。
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