ヨコレイがGPIFのESG投資運用のベンチマーク:FTSEに採用された理由

2022年10月19日 17:38

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 横浜冷凍(東証プライム。以下、ヨコレイ)の、松原弘幸社長をZoomミーティングで取材する機会を得た。ヨコレイの事業の2本柱は、冷蔵倉庫と魚介類を軸とした食品のB2C販売。

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 誘いを受け取材に参加したいと思ったのは、2022年9月期を5月12日に「上方修正」していたこと。そしてFTSEの構成銘柄に採用されたことだった。

 FTSEインデックスは世界最大級の公的年金運用機関GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の、ESG投資のパッシブ運用のベンチマーク。採用の背景を噛み砕くと、冷蔵倉庫が直面している課題への対応が評価された結果が大きいと言える。

 フロンガス。周知の通り地球温暖化(オゾン層破壊)問題の要因として、世界的に「製造禁止」の動きが加速している。従来、冷蔵倉庫にはフロンガスは不可欠だった。だが松原氏は、「フロンガス製造終了の時期が遠からず来るという観点から、フロンを使わない自然触媒方式の冷蔵倉庫づくりと取り組んできた」とする。

 現にヨコレイの冷蔵倉庫は現時点で60%が、自然冷媒。そして「2030年にはその比率を8割まで高める計画」(松原氏)だと言う。

 ヨコレイの通期計画の修正は売上高こそ前期比0.9%減(1098億円)も、「営業利益:83.5%増(47億円)、経常利益:2倍(54億円)」。

 ヨコレイでは「冷蔵倉庫事業の入庫量・出庫量ともに回復基調で順調に推移。加えて食品販売事業も、水産品が内外ともに想定を上回る売り上げ・利益増」と説明したが、ミーティングでは「上方修正も株価の反応は芳しくなかった。ESGという視点は機関投資家も重視している。機関投資家に向けてのIR不足ではないか」という質問が出た。

 興味を持って松原氏の答えを待った。口を突いて出た答えは、「FTSEの採用は、機関投資家の間にも認め始められていると認識している。無論、IR活動はより積極的に行っていく」だった。

 ヨコレイの株主還元策自体は、評価に値する。「安定配当の継続を、配当性向30%以上」を目標に掲げている。1962年の上場以来、減配は1度もない。詳細は省くが自社製品の株主優待策も魅力的。ちなみに取材をした日(9月29日)の終値は893円。予定税引き後配当利回りは2%強。「配当を軸にした中長期投資にかっこうかと・・・」(松原氏)も頷ける。

 食品事業ではノルウェー産のサーモンが人気を集めているが、例えば国内産ウナギの養殖でも「年産50tから100tペースで軌道化」という施策も執っている。

 国内の、そして国外の「食」を司る企業として注目していきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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