プリント基板:キョウデンの、「勢い」ある収益の理由

2022年8月2日 08:10

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2022年11月に拡張予定のEMS狩野川工場。(画像: キョウデンの発表資料より)

2022年11月に拡張予定のEMS狩野川工場。(画像: キョウデンの発表資料より)[写真拡大]

 どんな電子機器も、プリント基板(PCB)なくしては作れない。そんなPCB業界にあってキョウデン(東証スタンダード)は、特異かつ大手企業。株主手帳のZoomミーティングで森清隆社長の話を聞く機会を得た。

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 勢いを感じさせる収益動向を実現している。前3月期は、「22.0%増収、116.4%営業増益、7円増配17円配」。そして今期計画も、「13.3%の増収(650億円)、13.8%の営業増益(58億円)、3円増配20円配」で船出。

 かつキョウデンに興味を惹かれたのは「中計」の上方修正。昨年11月11日に発信した至2026年3月期の中計を、僅か7カ月後の6月15日に「売上高942億円(96億円増)、EBITDA176億円(13億円)」に修正した。当該期中の上方修正がサプライズになることは言うまでもないが、中計の上乗せ修正は稀。

 森氏は収益動向、中計上方修正の理由を「想定を大きく上回る需要増」と言い切った。プリント基板メーカーはキョウデン1社ではない。「同業他社も同様の恩恵に浴しているのか」という問いかけには、こんな答えが返ってきた。

 「当社の取引先企業は、約5670社に及ぶ。偏りはない。最も大きい取引先でも、総売上高の3%水準」と、広範な企業との取引を強調した。

 「ロボット・AGV(自動運送車)・半導体製造装置など産業機器が、総売上高の約27%。車載機器が約26%」と、PCB需要が急速に高まっている業態との取引を示した。

 その上で、キョウデンの最大の持ち味(特長)に言及した。

 「ビジネスの開始当初から、『多品種・少量生産・高品質・短納期』をミッションに取り組んできた」。

 具体的に「納期」に関しては実名こそ出さなかったが、「貫通基板」の場合A社:最短3日、B社:2日に対しキョウデンでは最短1日。「ビルドアップ基盤(配線能力のアップが可能)」ではA社7日、B社3日に対し最短2日とした。「長い間の効率化作業、スタッフ数増員・充実の結果」(森氏)。

 同社では国内需要は国内拠点で担っているが、海外事業についてはタイ工場を軸に展開してきた。だが中計と並行して「隣接敷地内に、130億円を投じ多層基板工場の新設」を明らかにし、海外事業の拡充に努める姿勢も示している。

 今回のZoomミーティングの開催、IR活動への積極性を感じた。「安定個人株主づくりが目的ですね」という問いかけに森氏は、首を縦に振った。本稿作成中の時価ベースの予想税引き後配当利回り2.7%強。魅力あり。が、安定個人株主づくりを進める上で1点、「?」を覚える。特定株主化比率の高さ⇔浮動株数比率の低さだ。今後の課題と考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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