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複数のがん診断・治療法を同時に実施、相乗効果を生むナノ粒子開発 名大
BCGCRの概略図。(a)はBCGCRナノ粒子デザイン。(b)は診断などのメカニズムの概要。(画像:名古屋大学報道発表資料より)[写真拡大]
名古屋大学は25日、複数のがん診断・治療法を同時におこなうことができる超多機能ナノ粒子(Gd2O3/CuS。以下BCGCR)の開発に成功したと発表した。研究グループによれば、BCGCRは毒性がなく、室温でも簡易に低コストで作成することができ、非侵襲的ながんの治療法として極めて有望だという。
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■複数のがん診断・治療法を同時に実施可能
BCGCRは光温熱治療法と化学力学的治療法の2つに同時に使うことができる。
光温熱治療法とは、光を熱に変換するナノ粒子をがん組織に導入し、レーザーを照射して熱を発生させ、がん組織を死滅させる治療法だ。
また化学力学的治療法とは、がん組織にナノ粒子を導入し、細胞に対して猛毒となる活性酸素を発生させることで、がん組織を死滅させる治療法だ。
BCGCRに含まれるCuSナノ粒子は光温熱治療法と化学力学的治療法の双方で効果的に働くが、熱が発生することで、活性酸素の発生が促進。この2つの治療法を同時におこなうことで、相乗効果が期待できるという。
さらに研究グループは、BCGCRに酸化ガドリニウム(Gd2O3)などを付け加えることで、磁性(MR)イメージングと蛍光イメージングを同時におこなえるようにした。
BCGCRを使えば、2つの診断方法と相乗効果が期待できる2つの治療法を同時におこなえることになる。
■マウスの坦がんがほぼ消失
研究グループは、BCGCRの効果を確認するために、悪性脳腫瘍の1種である神経膠腫に由来する坦がんのマウスを用意し、BCGCRを使って診断、治療を試みた。
まずBCGCRががん組織に選択的・効果的に集積することで、がん組織の蛍光強度とMR強度が徐々に高まっていき、投与2日後に、BCGCRが最も集積することが確認された。
その診断に基づいて、近赤外線レーザーを照射し治療をおこなったところ、投与15日目には、マウスの坦がんがほぼ消失していることを確認したという。
研究グループでは、BCGCRはがんの非侵襲的な治療法として極めて有効であり、これから、さまざまな進行がんに対する治療効果、抗がん剤との併用や製剤化の可能性などを探っていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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