NASAのニューホライズンズが捉えた、冥王星での大規模火山の痕跡

2022年3月30日 21:15

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冥王星の氷のような火山地域の斜視図。青で示されているのが問題のハンモック状の地形。(c) NASA/ジョンズホプキンス大学応用物理研究所/サウスウエスト・リサーチ・インスティテュート/アイザックエレーラ/ケルシーシンガー

冥王星の氷のような火山地域の斜視図。青で示されているのが問題のハンモック状の地形。(c) NASA/ジョンズホプキンス大学応用物理研究所/サウスウエスト・リサーチ・インスティテュート/アイザックエレーラ/ケルシーシンガー[写真拡大]

 ニューホライズンズは、2006年1月19日にNASAが打ち上げた、冥王星や太陽系外縁天体探査を行う人類初の無人探査機である。

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 冥王星探査は2015年1月15日から2016年10月25日まで実施。探査機は現在も航行中で、NASAが公表した情報によれば、2021年4月18日に太陽から50天文単位(地球から太陽までの距離の50倍=約75億km)の宇宙空間を通過した。最終的には太陽系外へ旅立つと言う。

 米サウスウエスト・リサーチ・インスティテュートやワシントン大学らの研究グループは、冥王星に大規模火山の痕跡を見出したとする研究結果を発表した。研究の成果は、3月29日に米ネイチャーコミュニケーションズに掲載されている。

 ニューホライズンズは、冥王星の様々な年代に形成された地形データを、これまで地球に送信してきた。今回の研究によれば、その中にハンモック状の地形隆起を伴った画像が含まれており、その画像はクレーターが非常に少ない地域で見出されたものだと言う。

 この画像は、2つの重大な事実を示唆している。1つ目はクレーターの数が多い地域ほど、形成年代が古く、長期間にわたって微惑星の衝突にさらされたことを意味する。この画像が捉えられた地点は、クレーターが非常に少なく、比較的新しい年代に形成されたという事実だ。

 2つ目は、この画像にみられるハンモック状の地形が形成されるには、大量の物質(少なくとも10000 立方km以上)が必要であるという事実だ。従って、この地形は高さ数kmにも及ぶ複数の巨大な火山ドームが融合されてできたものであると推定される。

 従来冥王星における地熱は、その質量の小ささからかなり早い時期に冷え切ってしまったと考えられてきた。だが今回発見された事実から考えると、実は比較的最近まで地熱は健在であり、活発な火山活動が続いていた可能性があると言うことになる。

 今回発表された論文の後半では、質量の小さな冥王星でなぜ長期間にわたって地熱保持が可能であったのかについての考察もなされている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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