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飢餓リスク人口、脱炭素化戦略で1億人以上増加の可能性も 京大らの研究
気候政策による炭素税が、農業・土地利用部門に影響した場合に発生しうる事象。(画像: 京都大学の発表資料より)[写真拡大]
現在世界では、脱炭素化に向けた温室効果ガス削減の取り組みが求められるようになったが、それに伴う様々なリスクも指摘されている。その1つが、食料生産や農業分野への影響であるが、具体的にどの脱炭素化戦略の取り組みが影響を与えるかは不透明であった。京都大学と立命館大学の共同研究グループは25日、世界農業経済モデルを用いて推定したところ、現時点での脱炭素化施策の主要な3つの悪影響によって、飢餓リスクに直面する人口が1億人以上増える可能性があると発表した。
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現在の農業、土地利用分野における主要な脱炭素化施策による悪影響は、次の3つが挙げられている。1つ目は、メタンや亜酸化窒素削減を行うために必要なコストが農業に上乗せされることである。2つ目はバイオエネルギー作物の需要増加による土地競合の激化で、3つ目は大規模植林による農地縮小である。今回の研究は、これらの各要因が農産物価格や食糧安全保障に与える影響の定量評価を目的として行われた。
その結果、上記の脱炭素化施策による影響によって飢餓リスク人口は1億1000万人増加することが明らかとなった。その主な原因は、国際食糧価格が27%増加することにより、発展途上国の貧困層が食糧を購入しにくくなることとされている。
またそのリスク要因のうち、約50%は大規模植林によるもので、特にアフリカでその影響が大きいことも分かっている。ただし、今回の研究では森林炭素ストックへの炭素税を仮定条件としているため、実際の措置と異なる可能性には留意が必要としている。
今回の研究では、様々な脱炭素化施策が食糧安全保障へ複雑に影響することが示唆された。一方で、各要因が与える影響については、施策の内容に対して仮定を多く含んでいることもあり継続的な研究が必要である。特に今回着目した大規模植林による影響については、施策の実行の仕方と連動しながら研究を続けていくべきである。
今回の研究成果は25日付の「Nature Food」誌のオンライン版に掲載されている。
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