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加速する日本酒離れ 逆風に立ち向かう酒造メーカーの挑戦 (2)
BEAMS JAPAN 京都の店舗向かいに特設された、新風館SPOT展示スペース。「日本酒のある日常」が表現されている[写真拡大]
その昔、酒税は地租と共に政府の大きな財源となり、日本を支えていた時期がある。現代においても、酒税は重要な財源の一つとなっているが、その酒税の観点からも、国内市場には逆風が吹き荒れている。国税庁が2021年に発表した「酒レポート」によれば、酒類の課税移出数量が、1999年をピークに減少を続けている。中でも日本酒を含めた清酒の減少は著しく、1973年のピーク時より3割以下に落ち込んでいる。シェアを伸ばす酒類もある中、清酒はなかなか厳しい戦いを強いられている。
【前回は】加速する日本酒離れ 逆風に立ち向かう酒造メーカーの挑戦 (1)
上向きなデータもある。清酒製造業の出荷金額と単価が、2012年から増加基調にある。より高付加価値の商品需要が高まっている結果だと推察されるが、業界全体の問題解決には至っていない。原因の一つとして考えられるのは、若者の日本酒離れだ。ワインやリキュールなど、気軽に注文や購入ができるお酒に比べ、日本酒のイメージは敷居が高く、古臭いイメージを持つ若者も少なくない。ましてや高付加価値の商品になれば、若者には手が届きにくい。一見、悪循環に入っているように見える日本酒業界だが、そんな危機感を踏まえ、新しい挑戦に動き出している酒造メーカーも増えている。
国内大手酒造メーカーの日本盛株式会社は、2016年から様々な日本文化の魅力を発信してきたBEAMS JAPANと手を組み、コラボレーションプロジェクト「にほんしゅき」を、昨年の12月2日より開始した。日本酒離れが進んでいることに危機感を持つ同社の社員が、「日本が誇る文化資源である日本酒を、若者たちに日常で楽しんでもらいたい」というテーマを掲げ、顧客へのアプローチを一から考え直したそうだ。商品や販売経路に至るまで、若者を中心とした日本酒に馴染みのない人々に寄り添う、ユニークなマーケティングが数多く展開されている。
まず初コラボにあたり、特別商品の「日本盛×BEAMS JAPAN 生原酒 純米大吟醸200mlボトル缶」を発売した。海外アートフェアでも活躍するアーティスト・白根ゆたんぽ氏が手掛ける女の子をモチーフにしたデザインは、親しみやすく手に取りやすいと評判も良い。実際に「BEAMS JAPAN」の3店舗(新宿、渋谷、京都)において、開始から3日間で約250本も売り上げており、通常の販路の売り上げを遥かに凌ぐそうだ。服飾のショップで日本酒を売るという、スタッフ達の画期的なアイデアが功を奏した形だ。
ボトル缶に採用された「生原酒」は、品質管理が非常に難しい。本来、蔵元など限られた環境でしか提供されない希少なお酒を、日本酒に馴染みのない方々へのコラボ商品で販売するあたり、今回のプロジェクトに対する意気込みがひしひしと伝わってくる。ボトル缶の他にも、グラスやお皿、トートバックなど、より親しみやすいグッズの展開も、より多くの人に商品へ触れてもらいたいという思いが伝わってくる。
更に「にほんしゅき」の特設サイトでは、女優・モデルの横田真悠氏と、関西エリアのビームススタッフ14名が出演するプロモーション動画『日本盛×BEAMS JAPAN 「にほんしゅき」Web Movie』を、公開している。それぞれ個性豊かな部屋の中で、日本酒のある日常が紹介されている。視聴者に日本酒をより身近な存在としてイメージしてもらうことが狙いだ。今回の両社のコラボレーションが、若者に向けた日本酒PRのモデルケースになって行くのではないだろうか。
移り変わる時代に合わせて、企業も文化も変化が求められるようになった。今までのイメージを覆したり、便利なものは取り入れたり、変化を恐れないマインドが重要になってくるだろう。しかし、元々備わっている「良さ」をも変えてしまったら、本末転倒になってしまう。変えるところは変えて、守るべきところは守る。デザインは若者に寄り添って、中身にはこだわりを持って。そのメリハリをバランスよく保つことが、今後のマーケティング戦略において重要になってくるのでは無いだろうか。 (編集担当:今井慎太郎)
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