レナード彗星、12月17日に宵の明星のすぐそばを通過 アリゾナ大

2021年12月16日 07:37

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球状星団M3のすぐそばを通過するレナード彗星 (c) Adam Block/Steward Observatory/University of Arizona アダムブロック/スチュワード天文台/アリゾナ大学

球状星団M3のすぐそばを通過するレナード彗星 (c) Adam Block/Steward Observatory/University of Arizona アダムブロック/スチュワード天文台/アリゾナ大学[写真拡大]

 2021年に最も明るく見える彗星といわれる「レナード彗星」が、今観望の好機だ。アリゾナ大学によると、12月17日に金星のすぐ近くを通過すると予想されている。この彗星は、2021年1月3日にアリゾナ大学月惑星研究所の研究員であるグレゴリー・レナードによって発見されたもので、今回が最初で最後の観望の好機となる。

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 レナード彗星は12月12日に地球に最も接近したが、その距離は約3,300万km以上(月までの距離の約88倍)であった。地球から最も見やすくなるのは12月14日以降年末にかけてだという。今、金星は宵の明星として夕刻に非常に明るく輝いているため、12月17日はぜひとも金星の近くの空をしっかり目を凝らして見てみよう。

 最も明るくなっても5等星級とのことなので、肉眼でこれを見られる人はよほど光害のない空気の澄んだ地域で、しかも視力の良い人に限られるかもしれない。だが、双眼鏡さえあればかなりの人にとってレナード彗星を自分の目で見られる可能性があるだろう。

 アリゾナ大学によれば、レナード彗星は今から約8万年前に地球の近くを訪れていたかもしれない。当時の地球ではクロマニヨン人やネアンデルタール人がその雄姿を見ていたことだろう。だが、約4万年前に進路を変え今回の太陽接近の旅に出たらしい。

 とはいえ、現生人類がこの彗星にお目にかかるチャンスは今回が最初で最後だという。というのもこの彗星は楕円軌道ではなく、双曲線軌道を描いており、太陽系を周回する軌道をとらないためだ。今回、人類に姿を見せた後、レナード彗星は太陽系外の宇宙空間へと旅立って行き、再び太陽系に戻ってくることはない。

 ウィキペディアによれば、双曲線軌道とは、「ケプラー軌道の中で離心率が1よりも大きい軌道を指す。通常、この軌道上を運動する物体は中心天体に対して無限に遠ざかる」とされる。まさに現生人類にとってはレナード彗星とは一期一会の出会いとなる。師走の何かと忙しい時期ではあるが、一息つきながら宇宙の旅人との出会いを楽しまれてはいかがだろうか。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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