地球の水の起源は太陽風か イトカワの石粒子分析から判明 豪カーティン大学

2021年11月30日 15:25

印刷

太陽、太陽風、小惑星イトカワのイメージ。(画像: オースティン大学の発表資料より)

太陽、太陽風、小惑星イトカワのイメージ。(画像: オースティン大学の発表資料より)[写真拡大]

 豪カーティン大学の研究者らは11月29日、太陽風が地球の水の起源となっていた可能性を示唆する研究論文を、Nature Astronomy誌で公表した。従来地球に存在している水の起源は、地球に衝突を繰り返してきた小惑星によってもたらされたものと考えられてきた。だが現在の海洋水の同位体組成は、小惑星のそれとは一致しないという矛盾点もあったのだ。

【こちらも】月面に水分が存在する理由 地球とは違う水の起源

 今回発表された論文によれば、ハヤブサによって地球に持ち帰られたS型小惑星イトカワのかんらん石粒子を分析した結果、太陽風を受けた影響により、水や水酸化化合物濃度が平均で約1モル%の濃縮が見出されたと言う。またケイ酸塩鉱物表面に太陽風を模したH +イオン照射を行い、水分子が生成されることも実験的に確認したのだ。

 これらの検証の末、小惑星イトカワには、1立方メートル当たりで最大20リットルの、太陽風を起源とする水分が含有されているという結論に達した。これは空気が存在しない惑星や小惑星においても、太陽風を起源とする水の存在の可能性を示唆するだけでなく、宇宙飛行時に貴重となる水の供給源として、太陽風が有効活用できることも示す結果となった。

 これまで小惑星によってのみもたらされたと考えられていた地球上の水の起源として、太陽風も大きく関与していた可能性も判明。これが事実であれば、海洋水の同位体組成が、小惑星のみを起源と仮定した場合に矛盾する問題も解消される。さらに月やその他の大気が存在しないとされる星の探査において、太陽風にさらされた岩石から、水の供給を受けられることが分かった事実は、人類の新たな他の星への探査に大きな可能性を切り開いたと言えよう。

 大気が存在しない星の組成が、すべて小惑星イトカワと同じとは限らないが、1立方メートルの岩石から最大20リットルの水が得られるというデータの意義も、容易に理解ができるというものだ。宇宙探検には、わざわざ地球から大きな水筒を持っていく必要がなくなったのだから。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事