月面で初めて二酸化炭素のコールドトラップを確認 米国での研究

2021年11月18日 08:09

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月の二酸化炭素コールドトラップ分布図(紫色でマーク)。これらの地域は冥王星より低温になる。(c) Norbert Schorghofer.

月の二酸化炭素コールドトラップ分布図(紫色でマーク)。これらの地域は冥王星より低温になる。(c) Norbert Schorghofer.[写真拡大]

 アルテミス計画により人類を再び月面に送り込むミッションの目標時期は、2024年から延期されたが、一方で月面基地の建設や、その基地から人類が宇宙に飛び立つための後押しとなるような研究結果も報じられている。

【こちらも】NASA、アルテミス計画の月着陸を2024年から「2025年以降」に延期

 月面に人類がこだわる理由は、第1に地球に最も近い天体であること、第2に地球と比べて引力が6分の1程度しかなく、ロケット打ち上げに有利なことだ。そして第3に、将来核融合技術が確立されれば、その際のエネルギー源となるヘリウム3が、地球にはほとんど存在しないが月には豊富に存在しているからである。

 だが月面では、水や酸素がなければ人は活動できない。月面でそれらを供給できる資源の見通しが立たなければ、月面基地建設も、ロケットの打ち上げも、地球からの資源供給をあてにしなければならない。それではコスト的には見合わず、持続性も期待できなくなる。

 惑星科学研究所(Planetary Science Institute)やカリフォルニア大学の研究者らが公表した論文によれば、月面の南極付近は、表面温度がマイナス210度以下になり、二酸化炭素が固化した状態で存在するコールドトラップの存在を確認したという。

 月面南極付近にある二酸化炭素トラップの総面積は、合計204平方キロメートルにも及ぶが、資源として活用できる大きな塊として存在している確証までは得られていない。とはいえ、アポロが月から持ち帰ったサンプル中の炭素濃度が100ppm程度しかないことを考えれば、二酸化炭素トラップ中の炭素濃度はそれよりもはるかに高く、資源として活用できる期待は持てるだろう。

 二酸化炭素は、地球の大気圧下ではマイナス78.5度を境に、それより低温ではドライアイス状態となり、それより高温では液体にはならず、気化を始める。月面では気圧が地球とは比べ物にならないほど低いため、よほどの低温でなければ二酸化炭素は直ちに気化して、宇宙空間に飛散してしまう。つまり、二酸化炭素コールドトラップが月面で発見されたことは、人類にとって幸運な奇跡なのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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