パンデミックによる排出ガス減少 地球温暖化には悪影響も NASAの研究

2021年11月10日 11:42

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 NASAジェット推進研究所は9日、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な経済停滞の影響により、2020年の地球全体における二酸化炭素の排出量は、前年に比べて5.4%減少したと発表した。一方で、大気中の二酸化炭素濃度の増加速度は、前年と変わりがなかったという。

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 自然界で発生した二酸化炭素量が前年よりも著しく増えたというデータも得られなかったため、人類が排出する二酸化炭素量が減少すれば、大気中の二酸化炭素濃度は減少して当然と思われる。だが、そうなってくれないのは、実は海洋が二酸化炭素を吸収するメカニズムが影響しているらしい。

 海洋では海面が大気圧と平衡状態を保っているのだが、この平衡状態の中で海洋は二酸化炭素を吸収してくれている。だが、2020年は海洋が二酸化炭素を吸収する能力が低下していたのだという。

 大気中の二酸化炭素濃度が高ければ高いほど、海洋ではたくさんの二酸化炭素を吸収してくれるのだが、2020年においては、さほど大気中の二酸化炭素濃度が上昇しなかったため、海洋で吸収される二酸化炭素も少量にとどまったということである。

 またメタンの排出量も2020年には前年に比べて10%程低下したが、大気中のメタン濃度は逆に0.3%上昇したという。しかもこの値は過去10年間で最大である。

 このようなことが起きたのは、窒素酸化物(NOx)排出量の大幅な減少が原因らしい。大気中のNOxは、メタンを分解する作用を持っている。だがNOxが減少したため、メタン排出量が大幅に減ったにもかかわらず、大気中の濃度が過去10年間で最も上昇してしまうという、皮肉な結果をもたらしたのだ。

 自動車の排ガス規制などで人類から目の敵にされてきたNOxは、実は環境にさほど悪影響を及ぼすことはなく、むしろ地球温暖化を防止するためには有効な存在なのかもしれない。2020年に全世界で起きたパンデミックのおかげで、地球大気メカニズムは人間が想像していたほど単純なものではないことが明らかになってきたのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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