日経平均株価30,714円は超えられない? 岸田政権を待ち受ける前途多難 前編

2021年11月1日 07:23

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 10月31日、岸田文雄新首相のもとで行われた衆議院解散総選挙の結果、自民党が議席数を減らしながらも単独で過半数を超え、岸田首相の続投が決まった。菅前首相からの交代まもなく、日程を前倒しで解散総選挙を行った理由は、首相交代直後の支持率が高い状態で総選挙を迎えたかったという思惑があるだろう。

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 一方で、前倒しの「解散」総選挙によって「任期満了による」総選挙が回避され、「解散前営業日から投票前営業日までは必ず株価が上がる」という勝率100%のアノマリーの実現性を高めることにつながった。なぜなら、過去50年間において、唯一このアノマリーが崩れたのが1976年は、解散総選挙ではなく任期満了による総選挙だったからだ(任期満了による総選挙は、戦後の現行憲法下で1度だけ)。

 結果として、解散前営業日である10月13日(水)の終値28,085円から、投票前営業日である29日(金)の終値28,892円とを比較すると約800円の株高、2.7%の上昇率となった。勝率100%のアノマリーとはいえども、過去にはその上昇率が1%も満たないケースもあったところで、まずまずの結果といえるのではないだろうか。

 しかしながら、このアノマリーはあくまでも短期的な売買に有効というだけであり、投資の基本である中長期的な株価の見通しに対しては意味をなさない。中長期的な株価を見通すためには、選挙の結果によって政権を勝ち取った政党の掲げる政策を吟味すべきであるが、日程を前倒して解散総選挙を行ったために十分な政策論争が成されず、どれも抽象的かつ、その場しのぎのバラマキ政策が目立ったといわざるを得ない状況だ。

 つまり、続投が決まった岸田首相が、成長戦略に明確な筋道を示すことができなければ、株価を押し上げるどころか維持をすることも困難であろう。これまでETFの購入で株価を間接的に支えてきた日本銀行が、2021年3月に「原則年6兆円増」の買い入れ枠撤廃を表明して以降、株価が緩やかな下落基調となっていることからも、日本の株式市場が自立反発に乏しい状況であるのは明らかである。

 そして、その猶予もごくわずかに限られている。なぜなら、アメリカのFRB(アメリカの中央銀行としての組織体)のテーパリング(金融緩和の縮小)が、国内のインフレ懸念によって早まり、目前に迫っているからだ。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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