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新しいコロナ治療薬「モルヌピラビル」はどのような薬か
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新型コロナウイルス感染症の治療薬に新しい動きが見られた。米食品医薬品局(FDA)は、製薬会社メルクが開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬「モルヌピラビル」について、11月30日に緊急使用許可を審議すると発表した。この薬の使用が許可されると、軽症の新型コロナウイルス感染者が自宅で治療ができるようになる。今大きな期待が寄せられているモルヌピラビルは、どのような薬なのだろうか。現時点でわかっていることをまとめてみる。
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現在日本で使用できる新型コロナウイルス感染症の治療薬は、全て点滴で入院している患者に使用されている。自宅で治療できる治療薬として、経口(口から飲む)の治療薬が期待されており、その中で今回使用許可を待つのが、冒頭のモルヌピラビルだ。軽症者が自宅で治療できれば、医療への負担軽減が期待できる。
モルヌピラビルは、どのような仕組みで新型コロナウイルスをやっつけるのだろうか?この薬は、ウイルスが増殖するときに合成するRNAの材料の「そっくりさん」が含まれている。ウイルスが増殖するときに、本来の材料と間違えて「そっくりさん」を取り込むと、そのウイルスは正しいRNAを作れなくなり、その結果増殖できなくなるという仕組みだ。メルクによる第三層試験の中間報告では、この薬を服用することで、入院治療者数は半分に減り、報告時点での死亡者はいなかった。
人間も細胞分裂するときにはRNAを合成する。この「そっくりさん」は人間の細胞分裂には悪影響を与えないのだろうかという疑問が生じる。だがこの薬は、ウイルスの「変異しやすさ」を利用して作られている。ウイルスは変異しやすいからこそ、「そっくりさん」を間違えて取り込んでも気づかない。通常の細胞分裂では、少しのコピーミスも致命的なため、そっくりさんを取り込みにくいのだ。ウイルスが生き残るための戦略である「変異しやすさ」を利用した薬といえる。
現在日本国内では、新型コロナウイルス感染症の治療として5種類の薬の使用が特例承認されている。エボラ出血熱の治療薬として開発されていたレムデシビルは、モルヌピラビルと類似の仕組みで働くが、点滴で使用するため入院患者にしか使用できない。
パリシチニブは、元はアトピー性皮膚炎の薬だ。アトピー性皮膚炎の原因である過剰な免疫反応を抑える作用を利用し、新型コロナウイルス感染症が重症化時の過剰な免疫反応を抑える。
ステロイド剤であるデキサメタゾンも免疫反応を抑える薬だ。カシリニマブ、ソトロミマブはどちらも新型コロナウイルス中和抗体だ。ウイルスを中和して感染できなくする効果を持つ。
モルヌビラビルが米国で許可されたとして、今後日本での承認がどうなっていくかはまだ未定だ。しかし現在複数の製薬会社で経口の新型コロナウイルス感染症治療薬が開発されており、近い将来、自宅で治療可能となることが期待できるだろう。今後の動きに注目していきたい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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