【小倉正男の経済コラム】自民党総裁選:政治は怨恨・感情(ルサンチマン)で決まるのか

2021年9月21日 10:02

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

政治は政策が基本というか、政策で決まるものと思いたいが、そうともいえない模様だ。自民党の総裁選でみていると、「感情」が無視できない要因となっている。感情というか、会社などでいえば、「人間関係」ということになるかもしれない。

政治は政策が基本というか、政策で決まるものと思いたいが、そうともいえない模様だ。自民党の総裁選でみていると、「感情」が無視できない要因となっている。感情というか、会社などでいえば、「人間関係」ということになるかもしれない。[写真拡大]

■派閥の親分のルサンチマン

 政治は政策が基本というか、政策で決まるものと思いたいが、そうともいえない模様だ。自民党の総裁選でみていると、「感情」が無視できない要因となっている。感情というか、会社などでいえば、「人間関係」ということになるかもしれない。

 石破茂氏(元幹事長)が、阿倍晋三前首相、麻生太郎財務相に極端に嫌われているのは過去のいきさつにある模様だ。

 阿倍前首相の場合は「モリカケ問題」、麻生財務相の場合は麻生内閣末期、ともに窮地にある時に石破氏から「鉄砲を撃たれた」、といわれる問題があったとされている。そんないきさつから石破氏は不倶戴天の敵、許しがたい存在になっているとされている。

 哲学用語の「ルサンチマン」(怨恨・怨念)が近いのか、あるいは仏語の「ル・サンチマン」(感情)のほうなのか。派閥の親分が過去のいきさつから、あいつと手を組むなら許さないとタガをはめたり排除したりということになっている。

 何ともそういうもので総裁が決まり、結果として日本の総理大臣が決まっていくという現実が少なからずある。“自主投票”とはいうものの水面下で派閥の強烈な締め付けが強まる気配が強い。

■自由投票VS派閥の締め付け

 困ったものだが人間がやっていることだから、確かにそうした過去の因縁めいたファクターも無視できない。どこかの企業の権力争い、派閥争いと同じことであり、抗争のレベルはそれらと本質的には大きく変わるところはない。

 総裁選は、岸田文夫氏(前政調会長)、高市早苗氏(前総務相)、河野太郎規制改革相の3氏の戦いと思われたが、野田聖子幹事長代行が加わった。野田幹事長代行の出馬は、念願だったのだろうが、結果としては「河野つぶし」に作用するのではないかとみられる。

 高市氏の健闘が伝えられているが、最終的にはおそらく岸田氏、河野氏の戦いになる。派閥の大半は“自主投票“という格好になっている。だが、実体はそう甘いものではない。

 麻生派の緊急総会で、麻生財務相は「総裁選は学級委員の選挙とは訳が違う」「総裁選という名を借りた権力闘争であることを腹に収めてもらいたい」「負けたら冷や飯食いになる」と檄を飛ばしている。

 麻生財務相の激からすると、自主投票などというものはどこかできれい事として吹き飛びかねない。権力闘争なのだからギリギリの局面では、派閥の親分の命令に従えということになりかねない。

■「聞く力」か、「突破力」か

 総裁選が政策などではなく、人間関係、怨恨、感情といったもの、すなわちルサンチマンで決まるとなれば、岸田氏、河野氏のどちらに逆風が吹くのか。

 岸田氏は、自民党の「ガバナンス改革」ということで幹事長、政調会長など党3役の「1期1年連続3年まで」という問題提起をした。これが契機となり二階俊博幹事長切りの動きとなり、菅義偉首相の総裁選不出馬という想定外の事態になった。

 二階幹事長、菅首相は、岸田氏にルサンチマンを持っているのではないかとされている。「敵の敵は味方」となり、河野氏の支援に廻るとみられている。

 一方、河野氏は石破氏の支援を受けることにで、阿倍前首相、麻生財務相から警戒されることになる。阿倍前首相、麻生財務相は最終的には岸田氏の支援に廻ることになるとみられる。河野氏は規制改革相であり、既得権益に切り込んできた面がある。そうした経過から既得権益を守ろうとする業界団体などを敵に廻す可能性もある。

 「聞く力」の岸田氏か、「突破力」の河野氏か。おそらく大接戦となる。どちらが勝っても前途は多難であるに違いない。そうしたことからすると負けても次のチャンスがないわけではない。権力闘争であるのは間違いないが、ルサンチマンの増幅、上塗りは勘弁してほしいものである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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