【どう見るこの相場】東証市場再編関連のリベンジ銘柄・粘り腰銘柄にボトムアップ・スタンス

2021年8月17日 07:25

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

昔、昔である。まだ取引所に立会場があって、市場部員たちの声が立会場の高い天井に反響していた時代だ。業界2位会社の決算説明会で、記者が同社の妥当株価について質問したところ、財務担当役員が「トップ会社の7掛け」と答えた。

昔、昔である。まだ取引所に立会場があって、市場部員たちの声が立会場の高い天井に反響していた時代だ。業界2位会社の決算説明会で、記者が同社の妥当株価について質問したところ、財務担当役員が「トップ会社の7掛け」と答えた。[写真拡大]

【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】

 昔、昔である。まだ取引所に立会場があって、市場部員たちの声が立会場の高い天井に反響していた時代だ。業界2位会社の決算説明会で、記者が同社の妥当株価について質問したところ、財務担当役員が「トップ会社の7掛け」と答えた。記者が、重ねてその株価格差の根拠を聞くと、担当役員は、即座に「幹事証券の差」と答えた。同社の幹事証券会社は、その後、自主廃業で姿を消した業界4位会社であり、業界トップ会社は、証券業界のトップ会社であった。

 この即答から担当役員は、銀行出身のOBらしく幹事証券に対して、株価形成について相当、発破をかけていたことがうかがえた。しかし、その記者がもっと驚いたのは、その決算説明会場から30分も掛からずに兜町に戻ってみると、兜町の証券関係者の間ではすでにその株価問答の話で持ち切りになっていたことだったという話も残っている。

 上場会社のランク付けへの株価意識は、一般投資家や報道関係者が想定する以上に強いのである。ある業界で業界2位会社が、トップ会社の追撃に入れ込み過ぎて過剰在庫を抱え込み経営ピンチに陥ったケースもある。また日立製作所<6501>(東1)と東芝<6502>(東1)の株価トップ争いは有名だが、両社の激烈なライバル意識は、それこそ系列会社の末端にまで及んでいた。

 昔は昔、今は今である。しかし、現在でも上場会社の株価意識が高いことは変わりがない。「株価は会社経営の鏡、通信簿」といわれるだけに、株価は高ければ高いほど通信簿の採点は高くなる。そしてこの夏、昔、昔のあの業界2位の財務担当役員を彷彿とさせるような株価意識の高さを窺わせる証券イベントが進行中である。来年4月からスタートする東証の市場区分の再編だ。

 市場区分再編は、現在の東証1部・2部、マザーズ市場、ジャスダック市場の4市場をプレミアム(P)市場、スタンダード市場、グロース市場の3市場へ集約、この上場基準について流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、売買代金などについて厳しく設けられている。とくに最上位となるP市場のハードルは高く、今年7月9日に東証から上場会社に通知された一次判定では、東証第1部上場銘柄の30%超の664社が、P市場の上場基準に不適合となった。

 不適合となった東証1部会社にとっては、一流企業から二流企業への格落ちとなり看板の書き換えが必須となるばかりか、社会的な認知度や信用力が劣化して採用活動にも響き、何より需給関係が先々悪化して株主価値を毀損し株主から大ブーイングが起こる心配をしなくてはならない。そこで上場会社の自助努力か幹事証券のサポート力か、一次判定の不適合にリベンジして2次判定に持ち込み、見事にP市場の上場基準をゲットした銘柄が出た。その数は、3連休明けの7月26日以降で6銘柄にのぼった。

 全般相場は、前週末13日に連日の上場来高値更新となった米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)でさえ、新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の世界的な感染再拡大が響いて上値が重くなり、方向感がみえにくくなりつつある。なかでも兜町は、日本上空に長期停滞し記録的な大雨を降らせている秋雨前線にすっぽり覆われているかのようである。こうした軟弱相場では「神は細部に宿る」を鉄則に、個々の銘柄の個別材料に注目し積み上げるボトムアップ・スタンスを取るに限る。東証の市場再編で一次判定から二次判定に持ち込んでリベンジ力を発揮した6銘柄、さらに一次判定で不適合とはなったが粘り腰を窺わせて目立った6銘柄を含めて、個別対応も一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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