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イネ栽培でのカリウム施肥抑制で土中に炭素蓄積、温暖化防止に 農研機構など
イネが鉱物中のカリウム・ケイ酸を吸収し、土壌で難分解性炭素を形成・蓄積する概念図(画像: 農研機構の発表資料より)[写真拡大]
地球温暖化の対策として、大気中の二酸化炭素増加を抑制することが昨今では喫緊の課題となっている。そのための取り組みの1つとして、二酸化炭素として放出されにくい難分解性炭素を土壌に蓄積させるという研究が行われている。農研機構と龍谷大学は20日、カリウムの施肥量を押さえてイネを栽培することで、難分解性炭素が蓄積されやすくなることが判明したと発表した。
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土壌に炭素を蓄積させるため、従来では堆肥等を農地に施用する試みが行われてきた。だが土壌に施用した堆肥は、微生物の働きによって分解され二酸化炭素として放出されてしまうため、全てを蓄積させることは困難であった。
農研機構と龍谷大学はこれまで、日本で最も栽培面積が大きいイネによる難分解性炭素の蓄積を試みてきた。今回の研究で着目されたのが、アルミニウム等と炭素を結合させて難分解性炭素とするアプローチである。アルミニウムとの結合による炭素の難分解化は以前から知られていたが、その形成メカニズムは明らかになっていなかった。
研究用水田で栽培試験を行ったところ、カリウム堆肥を抑制してイネを栽培することでアルミニウムと結合した難分解性炭素が多量蓄積。一方で、カリウムを十分に施肥して栽培したイネの土壌には難分解性炭素は蓄積しなかった。
このメカニズムを解明するためにイネの根を使って実験したところ、イネは土壌中の鉱物から不足するカリウム等を吸収していることが判明。このようにして鉱物からカリウムが抜けることで、鉱物に残ったアルミニウムと炭素が結合しやすくなると推定されている。一方で、堆肥中に十分なカリウムが存在する場合は鉱物中のカリウムは利用されないため、このような反応は進行しないと考えられる。
今回の実験では、カリウム施肥を抑制してもイネの生産性が落ちないことも明らかになっている。そのため、カリウムを制御したイネの栽培が地球温暖化を緩和するための有効な手段となりえることが期待される。
今回の研究成果は4月21日付の「Soil Science and Plant Nutrition」誌オンライン版に掲載されている。
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