原油減産の縮小から見える景気回復

2021年6月3日 16:59

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●協調減産を段階的に縮小

 ロイタ―通信によると、OPECプラスは1日の閣僚級会合で、協調減産を7月までに段階的に縮小する方針を確認した。OPECプラスは、4月の会合で5-7月の生産量を日量210万バレル増やすことで合意していた。

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 ワクチン接種によるコロナ禍からの回復で、原油需要の増加が顕著となっており、さらなる原油価格の高騰も懸念されている。

●鍵を握るイラン

 今回の協調減産の縮小を後押ししたのが、イランの増産だ。

 イランは、2018年5月にトランプ前米大統領が核合意を離脱して以来、経済制裁を受けている。その後はイラン側も核合意の義務履行を相次いで停止しており、歩み寄りがなかった。

 バイデン政権になってからは歩み寄りを見せており、米国とイランは4月から欧州を介して、核合意再建を目指して協議を重ねており、バイデン政権は合意に至れば制裁を解除することを示唆している。

 米国の経済制裁でほとんどの原油生産を停止しているが、経済制裁が解除されれば、イランのザンギャネ石油大臣は生産量が日量650万バレルに達するとの見方を示している。

●景気回復の象徴!?危うさも

 6月に入り、WTI原油先物はさらに上昇し、一時1バレル=69ドルまで上昇、2018年以来の70ドル台も視野に入れている。

 米国の1~3月期のGDPは前期比年率6.4%増を記録。バイデン政権の大胆な経済対策も後押しし、夏場に向けてさらなる原油需要の増加が見込まれている。

 需要がコロナ前に完全に戻っているかと言うとまだまだ時間はかかるが、経済正常化を前提として市場は動いている。

 ただ、原油も株式と同じ動きをしやすいため、株式の上昇圧力による原油の上昇も考慮しなくてはならない。

 株式と連動するということは、長期金利の上昇や物価指数でインフレ懸念が意識されるようになると売られやすいということでもある。

 景気回復のバロメーターでもあるが、テーパリングが意識される指標でもあるということを念頭に、上昇相場に乗ってしまうのは危険な投資であると言わざるを得ない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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