通期既存店売上高108.8%、厳しい環境下で踏ん張るモスフードの味わい

2021年5月13日 16:12

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 日本生まれのハンバーガーチェーンのモスフードサービス(モスフード)を初めて知ったのは、かれこれ40年近く前になる。創業者の故櫻田慧氏の取材だった。僅か20年足らずで1000店舗を突破、創業2年目(1973年)に「テリヤキバーガー」なるヒット商品を生み出していた。

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 櫻田氏が旧日興証券の出身という点にも、興味をそそられた(旧日興証券マン3人で設立)。まず「(日本)マグドナルドと対峙するわけだが、勝てますか」とぶつけた。私の物書き業の師匠である故亀岡大郎氏の、「相手がカチンとくるような質問から入るのも1つの方法だ。相手をこっちの土俵に引っ張り上げるのに、有効だ」という教えの実践だった。

 だが櫻田氏の口をついて出た言葉は「マグドナルドと勝負を、というつもりは毛頭ない」であり、「うちの第1号店が、その答え。成増店(東京都板橋区)は表通りから1本入った裏通りの店で、2.8坪」とした。ちなみに故藤田田氏が日本マグドナルド第1号店を開店したのは、銀座4丁目の目抜き通りだった。「まあ、見ていて欲しい。櫻田流・日本流のハンバーガーチェーンを作り上げるから」と自信たっぷりだったことを記憶している。

 「モスライスバーガー」や「ニッポンのバーガー匠味」などは、櫻田氏の「意」に基づく新商品開発だったといえる。農業生産法人:モスファーム設立で国産野菜の使用に注力したのも、その象徴だった。

 ちなみに目下の店舗数は、1260店舗(直営40+FC1220)。海外店は、台湾の287店を軸に421店舗。

 収益動向は総じて順調も紆余曲折はあった。例えば20年3月期の「104.9%営業増益」に対し21年3月期は、「コロナ禍の影響を勘案し、通期計画未定」でスタート。中間期時点で「5億円の営業損失」と通期計画を発表。「コロナ禍を受けた閉店に伴う8億8600万円の減損」をその理由とした。

 が、2月12日には「コロナ対応策として内外から享受した助成金等で、5億1600万円の特利」で、今度は営業利益を4億円に上方修正(前期:10億6000万円)。-5億円から+4億円、その差9億円。第3四半期での営業利益進捗率は243.8%(数字の魔術!?)。

 「コロナ禍に揺さぶられた」と捉えるべきだろうが、1点見落としが出来ない事実がある。小売業の現状を掴むうえで不可欠なのが、既存店の前年比売上高比率。昨年4月から今年3月まで、ひと月として100を下回ることなく通期計108.8で推移している。

 本稿作成中の時価は3000円台出入り。過去10年余で約2倍に上昇している。新年度計画を注目したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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