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商品先物のCRB指数が世界経済のインフレ化を示唆 個人の資産運用は堅実に
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4月末に景気のバロメーターと目されている『銅の先物価格』が、10年ぶりに1トン1万ドルを超えた。同様に景気の牽引役である原油価格も1バレル60ドル台で、更なる上値を模索している状況だ。コロナ対策の要とされるワクチン実施が世界で始まったこともあり、力強い景気回復を裏付ける指標とも言える。
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コロナショックで大幅な下落相場を展開した銅や原油は、すでにコロナ前の値をクリアしている。銅価格にいたってはプラス70%も上乗せした格好だ。これは何も銅や原油だけの話ではない。いわゆる国際商品先物銘柄全般に言える傾向である。
ここで注目してほしいのは、ロイター/ジェフリーズCRB指数だ。これはアメリカの経済分析においてよく物差しに使われる経済指標で、ダウ平均のように主力銘柄19品目を選定し、指数化したものである。
*現在の銘柄は原油、無鉛ガソリン、暖房油、天然ガス、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、トウモロコシ、大豆、小麦、綿、生牛、豚赤身肉、コーヒー、ココア、オレンジジュース、砂糖。
このCRB指数は、世界の物価や景気の先行指標として使われることが多く、インフレトレンドをいち早く察知するのに適した指数となっている。5月2日時点の数値は199.76 ドル、2020年4月1日につけた底値の117.2ドルと比べると、CRB指数は70%も上乗せした格好で、コロナ前の170ドル台まで回復している。つまり、銅をはじめとする世界商品先物相場は全体的に大幅なV字回復を見せ、そのままインフレトレンドを継続中と判断できるだろう。
ただし、このCRB指数をみる限りではコロナ前の物価レベルに戻ったということで、特にインフレ拡大を示す数値ではない。だがこの物価高騰の流れは、すでに世界経済において顕著化している。
2020年後半は穀物相場の高騰を受け、日本国内でもさまざまな食品価格が値上げを続けている。中でもトウモロコシ相場は早い段階から上昇を始めていた。これは中国の大量買付による影響が大きいのだが、原油と同様、ワクチン実施への期待で買い上げられた感が強い。
それにつれて小麦や砂糖の高騰も続いた。コロナ禍によって世界的に生産ラインが鈍化した影響もあるが、原材料の高騰は各商品単価の上昇を底辺で支えていると言える。
国内でも物価上昇は各販売チャネルで確認されている。長期にわたるデフレスパイラルからの脱却はまだできていないとの分析がなされているが、消費者レベルではすでにインフレ不況を実感しているのではないか。そう判断する理由は労働賃金の低迷があるからだ。
ここから本題に入るが、安定した生計を立てるために資産運用を実践している人は、今後の物価上昇・インフレ傾向に注意しておきたい。物価が上昇するならば、それに比例して労働賃金もアップすると期待するのは早計だ。
リーマンショック以降、世界の主要通貨の大量発行が継続され、マネタリーベースは拡大の一途だが、そのお金の多くがストックマーケットへ流入している。CRB指数はあくまでも先物市場の指標であり、いわゆるデリバティブは株式市場と同じように、投資家の損得で変動している。実体経済とは乖離した部分で動く傾向にあることを留意したい。
つまり、ストックマーケットに投入された莫大な資金は、その多くがストックマーケット内を回遊するということで、実体経済に下りてくる率はそれ程大きくない。また、実体経済へ回ってきたお金がすぐに企業の収入となるわけもなく、労働賃金に反映されるまでには多くの時間を要するだろう。
通貨の過剰供給は押しなべて物価を上げてきた。それは至極当然で、世界経済(実体経済)の拡大を何倍も上回るマレーサプライが毎年慣行されたため、絶えず通貨価値は下落をすることになる。労働賃金が物価スライドに追い付かない現状は、言い換えれば労働単価が下落し続けているのと同じことだ。
そこで、資産運用は確実性を重視するべきだ。物価上昇における収入の縮小局面では、いかに損を出さず、確実に利益を積み上げるかが大事になってくる。実質賃金の目減りによって生活費は負担を増す、その中で投資資金を積み上げるのは難しいかもしれない。
ハイリスク承知で一攫千金を狙うのは、資金に余裕がある資産家の専売特許であることを知っておいていただきたい。将来の生活資金を確保するための資産運用である以上、物価上昇の資金難においても、確実に利益を蓄積できる固い投資方法を実践するようおすすめする。(記事:TO・記事一覧を見る)
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