深宇宙探査の近況と今後の展望

2021年4月28日 17:22

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太陽圏と星間物質を示す概略図 (c) Johns Hopkins APL

太陽圏と星間物質を示す概略図 (c) Johns Hopkins APL[写真拡大]

 欧州地球科学連合(EGU)は26日、深宇宙探査の話題について、ホームページで紹介した。2021年4月19日から30日まで開催されるEGU総会において、この話題に関するディスカッションが行われるためだ。深宇宙探査は一般に聞きなれない言葉だが、恒星間探査機によって太陽系の外側の宇宙を探査することを意味している。

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 恒星間探査機としてボイジャー1号、2号が打ち上げられたのは1977年のことであり、2021年で打ち上げから44年が経過することになるが、いまだに2機とも現役で地球に観測データを送り続けている。ボイジャー1号はプラズマ測定器が損傷し、太陽系から恒星間宇宙への飛行に関する十分なデータを収集できないが、ボイジャー2号は健在で深宇宙に関する貴重なデータを人類に送り続けてくれている。

 ボイジャー1号は2012年に、2号は2018年に太陽系と外宇宙との境界面(ヘリオポーズ)を通過したことが確認されているが、太陽系宇宙とその外側の宇宙には、明確な境界が存在するということも驚きだ。具体的にヘリオポーズとは、太陽風と星間風(太陽以外の恒星からのもの)がぶつかり合って均衡が保たれている場所を言い、太陽風はヘリオポーズで星間風にぶつかって戻ってくるそうだ。このような場所は非常に範囲が狭く、ボイジャー1号、2号ともヘリオポーズを通過するのに1日もかからなかったと言う。

 ヘリオポーズまでが太陽系ということになるのだが、ボイジャー1号はそこに到達するのに35年、ボイジャー2号は41年の歳月を要した。ヘリオポーズまでの距離が120天文単位(つまり地球から太陽までの距離1億5千万kmの120倍=180億km)であることを考えれば、無理もない。むしろよくぞそこまで人類のために働いてくれたと賞賛すべきだろう。

 NASAは近い将来、太陽から実に1,000天文単位のかなたにある深宇宙探査をもくろんでおり、早ければ2030年代の初めにミッションが開始されるかもしれない。このミッションでは探査機のスピードアップが図られ、ヘリオポーズに到達するのに要する期間は15年程度になると言う。

 そのころには火星に人類を送り込むミッションも構想されており、天文ファンにとっては、人類が月面到達を目指した1960年代、あるいはボイジャーが打ち上げられた1970年代に匹敵するほど、目が離せない時代になるのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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