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支援策で倒産減少も企業の半数が借入増大 過剰債務への対応が喫緊の課題
東京商工リサーチが「倒産状況の説明会」。2020年度の倒産は支援策で大幅な減少も47.8%の企業で借入金が増加[写真拡大]
2020年度、コロナ禍の経済で企業倒産は減少している。これは外出自粛や営業活動の制限など感染症対策に伴う経済停滞下での各種支援策が功を奏した結果といえる。しかし需要低迷の中、企業の負債は増大しており、今後は需要回復が見込めない分野での息切れ倒産も懸念される。
4月9日、東京商工リサーチ(友田信男・情報本部長)が官公庁の担当者を対象に「2020年度の倒産概況」について説明会を開催、12日に説明要旨を公表している。要旨資料によると、20年度の倒産(負債1000万円以上)は7163件で、前年度より減少しただけでなく、30年ぶりに8000件を下回る低水準となった。国や自治体、金融機関の支援が功を奏し大幅な減少となった模様だ。
全体の倒産件数は減少したものの、新型コロナ関連倒産は年明けから月100件超えで増勢の気配をみせ、特にインバウンド需要が蒸発した宿泊業は倒産件数が急増している。また、負債1000万円以上の倒産が減少した一方で1000万円未満の小規模倒産は増加している。今後さらにコロナ関連の息切れ倒産が増加することが懸念される。
倒産抑止はコロナ関連融資など資金繰り支援によるところが大きいとみられるが、これが過剰債務にも繋がっている。5月からは当初の借入の返済が始まる。返済猶予の体制も整いつつあるものの、リスケの間に業績回復が見込めない企業は資金繰り困難となる。コロナ前と比較すると、調査対象1万4604社中の約半数、47.8%の企業で借入金が増加している。倒産企業の財務内容を分析すると、53.2%が直近決算で最終赤字、営業利益が支払い利息を下回る「ゾンビ企業」の割合が倒産企業では35.2%と生存企業の6倍になっている。業績悪化で利益率が下がると営業利益で利払いできず事業継続が難しくなる企業が増加する。3月の調査では、前年同月比で減収だった中小企業は7割を占めた。
過剰債務の解消のため金融機関は中小企業へのコンサル機能や資本性ローンの活用などが求められる。中小企業では資本性ローンの活用があまり進んでいない。銀行に加え信金、信組でも本気で取り組んでいかなければならない課題とされる。資料では、過剰債務にある企業の再生について「金融機関なども積極的に関与し取り組んでいかなければ、倒産を押し上げる材料になりかねない。過剰債務には、今後も注視が必要だ」と指摘されている。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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