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広域エリアネットワークの防災利用 世界をリードすべき日本の役割
ラピステクノロジー株式会社は、広域エリアネットワークの構築に最適な、最新のマルチバンド無線通信LSI「ML7436N」を開発[写真拡大]
2021年2月13日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。多くのケガ人をだしたこの地震は、2011年3月に発生した東日本大震災の余震と見られるそうだ。この一年、新型コロナウイルスの話題ばかりに気を取られていたが、今回の地震で、防災を再認識した人も多いのではないだろうか。
地震発生時の深刻な課題の一つといわれているのが、情報通信ネットワークの遮断だ。総務省の「災害に強い情報通信ネットワーク導入ガイドライン」によると、東日本大震災の際、発災から広域での停電が発生し、携帯電話や固定回線などのインターネットが軒並み不通になった。防災無線は辛うじて使用できたものの、通話品質に不具合が発生していたという。情報を欲している人々に情報が上手く伝わらなかった、もしくは伝わりにくかったのだ。
こうした経緯を踏まえ、2017年に発生した熊本地震の際には、平時は教育や観光で利用されていたWi-Fiを防災利用として開放し、多くの利用者が情報収集や通信手段として役立てた。しかし、世界の先進各国と比べると、日本はまだまだ無線通信網の整備が行き届いていない。日本でも次世代通信規格5Gがスタートしたが、こうした大容量の無線通信のみならず、防災利用の観点ではLPWAと呼ばれる遠距離で広域ネットワークが構築できる無線通信網の更なる整備と拡充が必要とされている。
これらの広域ネットワークを支えているのが、高度な無線通信用の部品だ。
例えば、電子部品大手のロームグループのラピステクノロジー株式会社は、広域エリアネットワークの構築に最適な、最新のマルチバンド無線通信LSI「ML7436N」を開発し、業界から注目されている。同製品は、高速動作可能な32bit CPUコア「Arm®Cortex®-M3」と、無線通信LSIとして業界最大級の容量を誇る1024KBのメモリを搭載しており、これはメッシュネットワークの機能をもつIoT機器への実装に最適で、システムの広域メッシュネットワーク化を容易に構築・管理できるという。このネットワーク構築により、環境変化に起因する通信障害が発生しても、自動で中継機間の経路を変更し、ネットワーク構成を最適化して通信を維持する。また、強力な暗号化回路も搭載し、システムの秘匿性を高めることにも成功した。
更にこれまでのIoT機器は、機器を使用する国の無線に関する法規や規格ごとに開発が必要だったが、新製品はではマルチバンド (Sub-1GHz及び2.4GHz) 対応のRFチップが搭載されており、従来よりも容易にセキュアなメッシュネットワークをワールドワイドに構築可能だという。
防災利用の観点においても、広域エリアをカバーする通信に求められるのは、安定性の確保と秘匿性の高いメッシュネットワークの構築だ。大容量メモリや処理能力の高いCPUを搭載した無線通信LSIの需要が高まる中、この新製品が注目を集めるのも頷ける。
災害が発生した時に重要なことは、詳細な情報を正しく理解し、行動することだ。災害の規模やインフラの被害状況などの情報を集積、分析し、いかに有効利用するかが被害を最小限に食いとどめる決め手にもなるだろう。日本の技術者たちの持つ、高度な広域ネットワーク技術は、IoT機器を活用したスマート化社会の進展はもちろん、防災利用の面でも非常に重要な役割を担っている。(編集担当:今井慎太郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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