宇宙のセアカゴケグモと呼ばれるパルサーの正体を解明 独研究所

2021年2月4日 07:53

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連星系パルサーPSRJ2039-5617のイメージ画像 (c) Knispel / Clark / Max Planck Institute for Gravitational Physics / NASA GSFC

連星系パルサーPSRJ2039-5617のイメージ画像 (c) Knispel / Clark / Max Planck Institute for Gravitational Physics / NASA GSFC[写真拡大]

 独マックスプランク重力物理学研究所は、宇宙のセアカゴケグモと呼ばれている連星系パルサーPSRJ2039-5617の挙動を、Einstein@homeと呼ばれる分散コンピューティングプロジェクトの膨大な計算能力を活用して、解明した。その研究論文の全文が、英国王立天文学会月報の最新号で公開されたため、その概要について紹介する。

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 連星系パルサーPSRJ2039-5617がセアカゴケグモの通称を持つゆえんは、中心の中性子星が伴星のガスをセアカゴケグモのごとく吸い取っているからである。これまでに同じような連星系パルサーがいくつも発見されているが、その正体については謎のベールに包まれていた。

 PSRJ2039-5617は二元連星系であり、微弱なガンマー線の脈動が観測されている。この脈動をEinstein@homeによる大規模計算によって解析した結果、中心星パルサーが太陽の質量と比べ約6分の1の伴星を伴い、パルサーが確実にこの伴星を蒸発させていることを突き止めた。また、伴星の軌道が時間の経過とともにわずかに変化することも発見した。

 従来、PSRJ2039-5617の中心にはパルサーが存在していることが予測されてはいたが、実際にその存在を明確にできたのは今回の解析が初めてのケースである。というのもパルサーはほかの恒星と比べて、非常に小さい存在であり、光学望遠鏡による本体の捕捉が困難なためだ。

 今回の成果は、連星系パルサーから発せられるガンマー線の脈動が起きるメカニズムに関して、様々な解析モデルによってパターン化し、膨大な数のシミュレーションを実施。その中で最もガンマー線波形の再現性が高いモデルを追及していくことにより、パルサーの位置や質量を特定していくという地道な作業によって得られた。

 宇宙には、セアカゴケグモのような連星系がほかにも数多く存在すると考えられており、今回の成果は、このような存在のより多くのバリエーションに関して、形成メカニズム解明がさらに進展していくきっかけとなるだろう。

 われわれの太陽は連星をなしていないため、私たちにとっては連星系という存在はあまり身近なものではないが、宇宙においては、恒星は連星系をなしている場合のほうが多く、太陽のように単独で輝いている孤独な恒星はむしろ少数派である。もちろんもしも太陽が連星系パルサーを構成していたならば、地球で生命が誕生するチャンスはなかったわけで、そのことに感謝すべきであろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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