大阪府で、民間病院が新型コロナの病床確保に協力? 要請先の約半数が前向きの意向!

2021年1月29日 17:57

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 「オオカミ少年」というイソップの寓話とは若干ニュアンスが異なるが、声高に「医療崩壊」と騒ぎ立て、より世間の注目を狙ってか「医療壊滅」と言う”新語”まで生み出した御仁がいる。

【こちらも】「医療壊滅」を叫ぶ日本医師会中川会長に向かう、「民間病院には入院余力がある」というブーメラン!

 分かり易く例えると、火災現場で「火事だ」といくら声を上げても相手にされないので、「全焼だ」と言い直しているようなイメージだ。その火災現場には大勢の消防士が、自らの危険も顧みず必死の消火作業を続けている。「火事だ」と騒ぐその御仁は、消防士のような服装に身を包んでいるものの、自ら消火活動の応援をする気配も周囲の人に消火活動を促す様子もない。消防士のような恰好をした「野次馬」が、大声を出して周囲の人々の不安を掻き立てているように見える。

 「オオカミ少年」という寓話は、暇を持て余した羊飼いの少年が村人の慌てる様を見ようとして再三同じことを繰り返すうちに、見破られて相手にされなくなる。相手にされなくなることを「オオカミ少年効果」と言う。本当にオオカミが出現した時には「オオカミ少年効果」により誰にも信じてもらえず、村の羊が全てオオカミの餌食になって終わる。

 「医療壊滅」は言葉遊びが過ぎるが、コロナ過による「医療崩壊」が局地的に発生していることは事実だ。豊富な医療資源を抱えている筈の日本で、「医療崩壊」が懸念されているのは、コロナ患者が3割程度の医療機関でしか受け入れられず、日本全体で約153万床と言われる総ベッド数の2%程度しか提供されていないからだ。

 国立病院や公立病院がコロナ患者に向き合い、民間病院は我関せずを決め込んでいるところに、日本で局地的に「医療崩壊」が現実化している問題の根本がある。

 国や都道府県に民間の医療機関に命令する権限がないことに安住して、高みの見物を決め込んでいるように見えるのは、日本の医療の不幸を象徴するものだろう。

 もちろん民間病院の抱える施設や設備、医師、スタッフの条件は様々で、一律の指示に馴染まないことは充分想像ができる。

 だが、国立病院や公立病院のスタッフが帰宅すら躊躇する過酷な状況にあり、その家族や子供たちが地域や学校で差別され、いじめられるという究極の理不尽すらが伝えられている中で、民間の医師をまとめる組織として名高い日本医師会の中川会長が、「医療崩壊だ、トリアージ(患者の選別)が起きる」と喧伝するばかりに見えることに、違和感を通り越して怒りを感じている人は多いようだ。

 新型コロナの症状悪化により緊急の入院が必要にも拘わらず、受け入れ先が見つけられずに死亡してしまうという、痛ましい事例が度々報道されるのは明らかに異常な事態だ。

 26日、大阪府の吉村知事は府内16カ所の民間病院に求めていた新型コロナの病床確保要請に対して、約半数の病院が受け入れる意向を示したことを公表した。実現すれば特措法に基づく病床確保指示が初めて実を結ぶケースになる。大阪府が音頭を取っているように見えて、きまりの悪さを感じる向きがあったとしても、前向きの動きが始まることは素直に喜ぶべきだろう。今はまだ要請先の半数にしか同意を得られていないとしても・・・(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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