現代の車はフェイルセーフだ

2020年12月20日 17:53

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Photo:パワーウインドウスイッチは、引き上げないとガラスは上昇しない。©sawahajime

Photo:パワーウインドウスイッチは、引き上げないとガラスは上昇しない。©sawahajime[写真拡大]

●“暴走”老人の責任転嫁

 2019年の東池袋暴走事故で母と子を「殺し」、多数に怪我を負わせた旧通商産業省工業技術院の元院長が、「車が暴走した」と主張した。

 車が暴走してブレーキも効かなかったそうだ。既に実況見分等で、車には何らの問題点も発見されていないにも拘わらずの主張である。

●「事故」では無く「事件」だ

 事件を起こした直後は、「パニックになって、ブレーキとアクセルを踏み間違えたかも知れない」と、自己保身に汲汲としながらも、多少まともな供述をしていたと聞くが、今回、裁判では考えられない様な自己弁護をした。

 「暴走事故」と書いたが、あれは「事故」では無い。

 危険運転致死傷罪のような「故意犯」であり、「殺人事件」であるとの印象が強い。大量に飲酒して、酩酊状況でハンドルを握った者と何ら変わりは無いともいえる。

●考えられない言い訳

 「ブレーキが効かず、アクセルを踏んでいないことを目視確認した」とまで主張しているが、かってライセンスを保有していた筆者の経験からは、万一「車が突然暴走した」場合は、足元に目線を落として、アクセルペダルを確認するといった行動には無理がある。

 パニックになって、ブレーキを踏んだつもりで、アクセルを床までベタ踏みした以外は考えられない。

 突発的にエンジンが暴走して、80kmを超える速度になったら、足元を見る余裕なんぞあろうはずも無い。

●正常な人間の対応

 筆者は過去、発進して急加速後に「フルスロットル」の状態になった経験がある。

 乗っていたスポーティモデルの車の、アクセルペダルが原因であった。

 その車のアクセルペダルは、「トーアンドヒール」がやり易い様に、上部から下がったロッドの先端がローラー状になっていて、床にアクセルペダルの下部が固定され、上から下がった先端部のローラーを下部が固定されたペダルが押し下げることでスロットルをコントロールするタイプだった。

 急加速してペダルを大きく踏み込んだ際に、はずみで足マットの端が、この構造のアクセルシステムのペダルとローラーとの間に「噛み込んで」フルスロットルの状態になったのだった。

 きちんと足マットを敷いていなかったのは筆者の重大ミスだった。

 咄嗟の判断で、ニュートラルにシフトし、路肩に寄せて停車したが、エンジン回転計はレッドゾーンを差していた。

 エンジンを切らなかったのは、マスターバックのブレーキや、パワーステアリングがオフになるのを避けたかったからだ。

 万一、エンジンが突然暴走しても、その動力を駆動系に伝えなければ車は止まる。

●フェイルセーフ

 「フィルセーフ」とか「フールプルーフ」という言葉がある。「失敗しても安全な」という意味だ。

 フールプルーフとは、直訳すれば「馬鹿よけ」、馬鹿がやっても大丈夫とする、酷い表現方法ではある。

●無鉛ガソリン仕様車

 昔、アメリカ車で、排気ガス対策に「触媒マフラー」を使用し、ガソリンが一般的に「有鉛ガソリン」だった頃のこと。

 触媒装備車に有鉛ガソリンを使うと、白金等の貴金属で出来た「触媒」を「鉛」でコーティングすることになり、「触媒マフラー」が「鉛マフラー」になってしまい、役に立たなくなる。

 アメリカでは、ガソリンスタンドの従業員のレベルはピンからキリまであって、平気で「無鉛ガソリン」指定の車に、何ら注意を払わずに有鉛ガソリンを給油しようとする。

 そこでガソリンスタンドは、無鉛ガソリンの「給油ガン」の口径を細くし、自動車メーカーは「触媒マフラー」を装備した無鉛ガソリン仕様車の「ガソリン給油口」を小さくして、有鉛ガソリンを給油しようとしても、無鉛ガソリン仕様車の給油口には有鉛ガソリンの「給油ガン」が突っ込めない様にした。

●パワーウインドウスイッチ

 初期のパワーウインドウは、シーソー式スイッチで、多くは扉の肘掛部分にあった。

 そして、子供が窓から顔を出していた際、誤ってパワーウインドウスイッチに触れて窓が上昇し、挟まれる悲惨な事故があった。

 現在のパワーウインドウスイッチは、窓を閉める際は「ボタンを引き上げる」。間違ってスイッチを押せば、必ず窓ガラスは下降する。子供が間違って挟まれる事故は起こらなくなった。

 これがフェイルセーフだ。

●現代の車の仕組み

 現代の車は、「馬鹿でも間違えない」フールプルーフだ。「ぼけ老人」が万一操作ミスしても、安全を保てる様になっている。パニックになって、アクセルをベタ踏みするのは対応していないが・・・。

 そして最近の自動車は、万が一にも、否、億に一にも、「エンジンが突然暴走する」ことと「ブレーキが効かなくなる」ことが同時に発生する可能性は無い。

 何らかの原因が車にあった場合でも、母子を殺しておきながら、自身に一切過失が無いとは 鬼舞辻無惨であってもいわないレベルの妄言であると、断言しておきたい。最後に松永真菜さん、莉子ちゃんのご冥福をお祈りしたい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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