相場の未来を予測する信用取引残高とコロナバブルの天井 前編

2020年12月15日 08:17

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 全世界における新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途をたどるなか、株式相場は各国の財政政策とワクチン期待で上昇を続けているが、このリスクオン相場はどこまで続くのであろうか。

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 「Buy the rumor, sell the fact(噂で買って事実で売れ)」の格言になぞらえれば、12月15日(日本時間)のアメリカ大統領選挙の選挙人投票を終えてか、いよいよ期限が差し迫ってきたイギリスのEU離脱交渉の期限か、年明け1月5日のジョージア州上院議員決選投票日かと、推測することは可能だ。

 しかし、これらのイベントの影響やアノマリー、ファンダメンタルズだけではなく、より客観的なデータで相場の未来を予測することも重要だ。「信用取引残高」は、そのようなデータの代表といえるだろう。

 そもそも信用取引とは一般的に行われる現物取引とは異なり、担保として現金や株式を証券会社に預けることで、資産以上の取引を可能とするものである。日本国内においては、現金や株式の評価額に対して、約3.3倍の信用取引が可能だ。

 つまり、100万円を証券口座に入金すれば、約330万円分の株式を売買できるようになるため、世間一般的には「自身の資力以上の取引ができる信用取引は怖い」というイメージがつきまとっているのであろう。

 実際には、一定の割合(委託保証金維持率)を下回った段階で「追加保証金(追証、おいしょうとも呼ばれる)」が発生するため、ここで損切り決済をしてしまえば口座に預けた金額以上に損をすることは無い。

 さて、そんな信用取引には現物取引には無い、いくつかの特徴がある。代表的な特徴としては、配当や株主優待を受けることができないことだが、それ以外にも、信用取引の種類によって「空売り(現物を所持していない状態で、株式を借りて売ること。つまり、株価が下がったときに利益となる仕組み)」が可能であること、決済期限が6カ月と決められていることなどが挙げられる。

 ここで注目したいのが信用取引の取引残高である。取引残高については各株式銘柄に対して公開されているが、例えば12月4日おける「トヨタ自動車」の信用売り残高は967,800株、信用買い残高は2,145,900株となっており、買いが優勢だ。

 買いが優勢であれば、単純に株価上昇の勢いが強いといえる一方で、将来の売り圧力になることも忘れてはならない。決済期限が決められている場合には、損をしていても得をしていても決済をしなければならないため、なおさらである。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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