2月に発見されたミニムーンの正体が明らかに ローウェル天文台の研究

2020年11月25日 11:52

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ミニムーン20CD3 (c)  International Gemini Observatory / NOIRLab / NSF / AURA / G. Fedorets

ミニムーン20CD3 (c) International Gemini Observatory / NOIRLab / NSF / AURA / G. Fedorets[写真拡大]

 2020年2月にハワイマウナケア山にあるジェミニ天文台で、観測史上2回目となるミニムーン「2020CD3」が発見された。ミニムーンとは月と同様に地球の周りを周回する衛星だが、月と比べると非常に小さな存在で、地球周回軌道上に滞在できる期間は1年程度と極めて短い。

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 2020CD3は既に4月には地球周回軌道から離脱しているが、過去の常識に反してこれまで2.7年もの長い間にわたり地球を周回し続けていたことが、ローウェル天文台の研究者らによって、11月23日に米国の天文学術雑誌であるアストロノミカルジャーナル誌上で明らかにされた。

 それによれば2020CD3の大きさは直径わずか1.2mしかないが、ローウェル天文台の直径4.3mのディスカバリー望遠鏡で撮影した数々のデータを分析した結果、過去の2020CD3がどの様な軌道をたどったのかを正確に突き止めることができたという。

 観測史上初のミニムーンが発見されたのは2006年で、「2006RH120」と名づけられたが、これは2006年9月から2007年6月の間に地球を1周し、その後、地球周回軌道から離脱して行った。実は2002年にもミニムーンと思しき天体「J002E3」が発見されたが、これは分光観測によって二酸化チタンを含む白色塗料の存在が明らかとなり、のちに「アポロ12号」打ち上げ時のサターンV型ロケットの第3段であったことが判明、ミニムーンの称号が与えられなかった逸話もある。

 2020CD3を発見したジェミニ天文台では、これが岩石なのか、それとも人工物なのかについて、これまで明言をしていなかった。ローウェル天文台による追跡調査により、晴れて人工物でないことが明らかにされ、地球との距離が1万3千km以内であったことも明らかにされた。

 余談ながらローウェル天文台の設立者であるパーシバル・ローウェルは、19世紀後半から20世紀の初めに活躍した天文学者だ。火星には運河があると唱えた人物で、当時火星人の存在を真剣に信じる人たちが急増したことも知られている。

 彼の火星運河説は、イギリスのH・G・ウェルズのSF小説『宇宙戦争』の構想のヒントになったとも考えられており、これがラジオドラマとして米国で1938年10月に放送された際には、全米でパニックが引き起こしたことも有名な事実である。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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