植物肉が、タンパク質危機を救うか

2020年10月9日 12:31

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 「植物肉」を消費者が目にする機会が増えている。大豆などの植物を使い、肉そっくりの味や触感を再現した代替肉の拡大を官民で目指しているためだ。世界人口の増加に伴って精肉需要が拡大し、供給が追い付かなくなる「タンパク質危機」が危惧されており、植物由来の肉をはじめとした代替肉で対処しようとしている。

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 伊藤ハムは3月に、東京駅の商業施設「グランカスタ」で、大豆ミートを使った「カツサンド」や「ハンバーグ弁当」など21品目を販売した。同社は大豆ミート食品を「まるでお肉」のブランド名で展開しており、その認知度拡大を狙った。

 同業の日本ハムも、植物肉を使った総菜やソーセージを「ナチュミート」として全国展開する。同社はスタートアップと連携し、培養肉の技術開発も行う。丸大食品や大塚食品など食品会社大手も、植物肉の開発供給に力を入れる。

 世界人口は増え続けており、国連によると2030年には85憶人に到達すると見込まれている。現在のままでは、2025年ごろから、食料の需給バランスは壊れ始める。

 菜食主義者やビーガンの文化が確立されている欧米では、代替肉の研究が先行して進められてきた。日本は後れをとっているが、コロナに伴う食糧供給の不安が、植物肉への注目をにわかに高めた。

 自然災害や感染症拡大下において、タンパク質を安定供給する方法として国も後押しする。農林水産省は7月末、「フードテック研究会」の中間報告で、「最先端技術を活用したタンパク質の供給源の多様化」をはかることが重要と示した。

 世界的に代替肉への関心は高まっており、EUは「植物」「藻類」「昆虫」などの代替タンパク質の研究に力を入れると新戦略を発表した。ATカーニーのマーケットレポートによると、代替肉市場は年率9%で成長すると予測されている。

 家畜は育成までの期間が長く、餌となる穀物を大量に消費することから環境負荷が高い。吐き出す温室効果ガスも多いことから、需要にあわせて頭数を増やすことができない。植物肉をはじめとした代替肉は、これらの課題をクリアできると見られている。

 欧米と比べ日本では、植物肉の認知度が低く保守的な国民性のため普及が容易ではない。農林水産省の研究会では、拡大のためには消費者が口にしたり、目にする機会を増やす必要があると結論づけられている。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る

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